しをり戸

ささやかな庭の山野草と
散歩・旅で出会った草木。 
季語・拙い俳句、
折々の写真などの記録です。

残花 ( ざんか ) <季> 晩春

2011-04-21 |  春の草木 の 俳句

◉ 残る花 (のこるはな)・名残の花 (なごりのはな)・残る桜 (のこるさくら)・残桜 (ざんおう)

幾山を越えし残んの山桜 ・・・・・ 山口青邨 [寒竹風松]
残桜や見捨てたまひし御用邸 ・・・・・ 松本たかし [松本たかし句集]
いつせいに残花といへどふぶきけり ・・・・・ 黒田杏子 [花下草上]

花期はおそくない花が、
盛りを過ぎた晩春の頃に、まだ散らずに
枝に残っている桜の花を言います。
なにかなつかしい寂しげな風情を感じさせます。

この時期、玉川上水や野火止用水の雑木林は、
若葉へと移り行く瑞々しさを漂わせている木々や
咲き残っている桜の花など、
流れに沿ってどこまでも歩いて行きたくなります。


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片栗の花 ( かたくりのはな ) <季> 初春

2011-04-16 |  春の草木 の 俳句

◉  堅香子の花 (かたかごのはな)・ぶんだいゆり・かたばな・うばゆり・はつゆり

日洽し片栗の葉に花に葉に ・・・・・ 石井露月 [露月句集]
片栗の一つの花の花盛り ・・・・・ 高野素十 [野花集]
かたくりは耳のうしろを見せる花 ・・・・・ 川崎展宏 [観音]

春の代表的な草花の一つで、
落葉樹林などの半日陰の傾斜地などに群生しています。
一対の葉を広げて、長い花茎の先に、
紅紫色の6枚の花弁が反り返った独特の花を1つ下向きに付けます。
うつむいて咲く姿は可憐で印象的な花です。
万葉集に「もののふの八十をとめらが汲みまがふ寺井の上の堅香子の花」と
詠まれている「堅香子(かたかご)の花」は、
「片栗の花」のことと言われています。
葉を一枚しか出さない株も多く、片葉鹿子が転じて、
堅香子の古名が付いたそうです。
鹿子とはと葉の白っぽいまだら模様を指します。
春に芽を出し、花をつけ、結実したあと
夏までに地上から姿を消し、
その後は地下で過ごします。
「春の儚い命」に例えられる草花、
「春植物(スプリング・エフェメラル)」 の1つに数えられます。

  [ ユリ科カタクリ属の多年草 ]

ひと佇てばひとの翳片栗の花 ・・・・・ みなみ

カタクリ (片栗)
日本では、北海道~九州、
山地の落葉樹の林内や縁の草地、北側斜面などに
群生します。
草丈は、10~20cm。
地下深くに円柱形の鱗茎(りんけい)を作ります。。
鱗茎から長い葉柄をだし、1~2枚の葉を広げます。
葉は厚く、淡緑色の長楕円形・無毛で、
通常表面に紫と白の斑紋があります。
花期は、4~5月。
鱗茎より1本の花茎を出し、
茎頂に紅紫色の花を1個、下向きに付けます。
花径4~5cm、花被片6枚で強く反り返り、
基部の近くにW字形をした濃紫色の紋があって、
その下に蜜腺があります。
花後、さく果を結び種子を散布して
地上部は夏までに枯れ、
地下の鱗茎が残ります。
日本に分布するのは1種と言われます。
鱗茎から良質の澱粉がとれ片栗粉を作りますが、
現在市販の多くはジャガイモの澱粉です。
葉・茎・花・鱗茎の全草が食べられ、
若葉を茹でておひたしなどにし、
また鱗茎をそのまま煮て食します。
名は、根の鱗片が栗の片割れに似ていることから付いたそうです。
古名 : カタカゴ(堅香子)
別名 : カタコ




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蒲公英 ( たんぽぽ ) <季> 三春

2011-04-11 |  春の草木 の 俳句

                            シロバナタンポポ ・カントウタンポポ

◉ たんぽ・鼓草 (つづみぐさ)・藤菜 (ふじな)・白花たんぽぽ・桃色たんぽぽ・蒲公英の絮 (たんぽぽのわた)・西洋たんぽぽ

たんぽぽに東近江の日和かな ・・・・・ 白雄 [白雄句集]
たんぽゝと小声にいひて見て一人 ・・・・・ 星野立子 [春雷]
たんぽぽの上に強風の村黄なり ・・・・・ 飯田龍太 [童眸]

道端や野原など、どこにでも見られます。
緑色の葉に鮮やかな黄色の花が印象的で、
春の暖かさを感じさせます。
春の野を代表して日本人に親しまれている
明るい花です。
タンポポとは、タンポポ属の総称です。
在来種には、古くから日本に生育している、
エゾタンポポ・シナノタンポポ・カントウタンポポ・
カンサイタンポポ・シロバナタンポポ・などがあり、
地域や生育地によって異なる種が見られます。
古典園芸植物の中の1つでもあります。
外来種には、明治以降に帰化した、
ヨーロッパ原産のセイヨウタンポポ(痩果が褐色)・
アカミタンポポ(痩果が赤褐色)などがあり、
繁殖力が強く、現在ではほぼ日本全国に広がっていて、
一年中見られます。
また、変異の幅が大きいので、
外見からは見分けづらい交雑種もあります。
ロゼット状の葉の間から、花茎をまっすぐに伸ばし、
早春から初夏にかけて、
多くの種では黄色い菊に似た頭花を付け、
朝に花が開き、夕方に花が閉じます。
晩春には、
白い冠毛(綿毛)の付いた種子(蒲公英の絮)が、風に乗って飛びます。
生薬や食用に用いられ、
また中が空の花茎を草笛にして遊びます。

  [ キク科タンポポ属の多年草 ]

しろばなたんぽぽを咲かす老夫婦 ・・・・・ みなみ

友人から戴いた
丈が低く、葉が地面にはりつくような関東蒲公英と、
園芸店で求めた
丈が高く、葉が立つ傾向のある白花蒲公英を、
育てています。
夏は、休眠するので葉が枯れて無くなってしまいますが、
秋には、比較的小さ目なロゼット状の葉が地面を覆い、
冬を越します。
春になると緑色が鮮やかになり、新しい葉が力強く広がります。

カントウタンポポ (関東蒲公英)
日本固有種で、
関東・東海地方の道端や草地などに自生しますが、
数が減りつつあります。
草丈は、10~30cm。
根は、牛蒡状。
根出葉は、倒披針形でやわらかく、羽状に深裂し、
多数ロゼット状に広がります。
花期は、3~5月。
花茎を根出葉の間から伸ばし、
茎頂に頭花を単生します。
頭花は、黄色で径4cm前後、
花弁は黄い舌状花からなり、
中央の花柱部も黄色です。
総包片は、先端に角状の突起があって、
外片は反り返らず内片に着きます。
果実は、褐色の痩果(そうか)で、白色の冠毛(綿毛)が傘状に付き、
果皮が堅く成熟しても裂開せずに、
風によって四散します。
どの種類のタンポポも、
花・葉・根を食用にします。
花をテンプラ・三杯酢など、
若葉をさっと茹で水に晒して和え物など、
やわらかい生の葉をサラダ・油炒めなど、
また、乾燥した根を炒めミキサーかけてタンポポコーヒーに、
と色々利用します。
根を生薬の蒲公英根(ほこうえいこん)として、
健胃・催乳剤に用います。
中が空の花茎を草笛にして遊びます。
名のタンポポは、冠毛が開いて球形となった形が
たんぽ槍の穂に似ていると言う説に、
関東地方を中心に分布することで付いたそうです。
漢字の蒲公英(タンポポ)は漢名からです。

ー在来種と外来種の見分け方 ー
総苞の大きさ、総苞片の形状や長さ、小角突起の状態などで区別します。

・在来種
< カントウタンポポ >
外側の総苞片が反り返らないで内側の総苞片に密着し、
その先にやや発達した小角突起があります。関東に多く、夏に休眠します。


       2013/04/05 撮影

< シロバナタンポポ >
外側の総苞片がやや反り返り、内側の総苞片から少し離れ、
その先に小さな小角突起があります。
花は白色で中心部は淡黄色、関西・四国に多く、夏に休眠します。



       2013/04/05 撮影

・外来種
< セイヨウタンポポ >
外側の総苞片が蕾のときから反り返り、
その先に小角突起はありません。
環境への適応力が強く各地に見られ、夏にも休眠しません。
・ 
 ・
 ・
       2013/04/05 撮影


* 桃色蒲公英
南ヨーロッパ原産のキク科で、
タンポポ属でないクレピス属の耐寒性一年草です。
草丈は30~50cm。
秋にタネをまくと翌年の春に、
株元から多数の茎を長く伸ばし、
茎頂にタンポポに似た淡桃色又は白色の花を付けます。
学名;クレピス・ルブラ、
和名;モモイロタンポポ、
別名;クレピス・センボンタンポポ(千本蒲公英)。



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黒文字の花 ( くろもじのはな ) <季> 初春

2011-04-09 |  春の草木 の 俳句

◉ …

黒文字の花のさかりは目立たざる ・・・・・ 五十嵐播水
くろもじの花虔(つつ)ましき山の風 ・・・・・ 山田みづえ [木語]
七十七忌くろもじの黄の花の壺 ・・・・・ 岡井省二

山地から低地の林内に生えます。
若葉と同時に淡黄色の花が咲きます。
葉や枝をちぎると爽やかな芳香があり、
古くから材は小楊枝や箸に使用されます。
  
  [ クスノキ科クロモジ属の落葉低木 ]

くろもじの花夕影のやすらぎに ・・・・・ みなみ

今年も萌黄色の新芽と一緒に
淡黄色の小さな花をたくさんつけました。
昼間のやわらかな緑と黄色の花もいいものですが、
夕方の花明かりにも趣があります。

クロモジ (黒文字)
本州~九州の山地に自生します。
樹高は、2~4m。
枝が多く、幹は直立し時には斜上します。
樹皮は平滑で若枝は緑色ですが普通暗紫色で黒い斑点が見られます。
葉は、柄を持ち、長さ5~9㎝の狭楕円形で両端がとがり、
質は薄く、全縁で、枝の上に互生します。
裏面は帯白色で、まれに軟毛がまばらに生えています。
雌雄異株。
花期は、3~4月。
葉に先立って、または新葉とともに、
葉腋から散形花序を出し、
淡黄色あるいは淡黄緑色の小花を多数付けます。
被片は6片に深く裂け、各片は楕円形で長さ2~3㎜です。
雄しべは9個です。
果期は、9~10月頃。
果実は小球形の液果で、黒く熟します。
枝葉に香気があり、香料の黒文字油がとれ、
枝は小楊枝や箸に利用されます。
名は、緑色の樹皮に黒い斑点があり、
それを文字に見立てたことから付いたそうです。


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貝母の花 ( ばいものはな ) <季> 仲春

2011-04-03 |  春の草木 の 俳句

◉ 網笠百合 (あみがさゆり)・母栗 (ははくり)・春百合 (はるゆり)・初百合 (はつゆり)

やうやくに咲きし貝母はさびしき花 ・・・・・ 森田峠
白き蝶貝母の花にまぎれくる ・・・・・ 大場白水郎 
貝母咲く地蔵の慈悲にうなづきつ・・・・・ 羽田岳水 [馬酔木] 

3~4月頃、葉のわきに、淡い黄緑色の鐘状の6弁花を
下向きに付けます。
その花の外側に緑色の線が、内側に紫褐色の網目のような模様が入ります。
うつむきに咲く目立たない花ですが、
姿や色の地味な味わいが茶花とても人気が高く利用されます。
鉢植えや庭にも植えて親しまれてきました。
球根は薬用にされます。

  [ ユリ科バイモ属の多年草、中国原産 ]

貝母咲き突然にきし別れかな ・・・・・  みなみ

貝母は一見頼りなさそうですが、
かなりの強い風にも
倒れずに立っています。
細い葉先が、隣の貝母や他のものに
蔓のように巻きつき、
手を繋ぐように
支えあっているからでしょうか。

バイモ (貝母)
日本には、中国から漢方薬として江戸時代に渡来しました。
日当たりのよい落葉樹の下のような環境が適します。
草丈は、40~60cm 。
鱗茎は白色の厚みのある鱗片2個が互いによって球形をしています。
茎は直立し、薄い青みを帯びた緑色です。 
葉は、柄が無く、広線形で長さ10㎝内外、
茎の上部のものは先がかぎ型に曲がって反り返り、
茎上に3~4個ずつやや不規則に輪生します。
上部では、細い葉の先端を巻鬚状に伸ばします。
花期は、3~4月。
茎頂付近の葉腋に、
淡緑黄色で径3~4cmの鐘状の花を1個ずつ下向きに付けます。
外面に緑のすじがあり、内面に紫褐色の網目状斑紋があります。
花被片6枚は楕円形で少し鈍頭です。
雄しべは6個、花柱は細く、柱頭は3つに分かれています。
果実は、蒴果で短く広い6個の縦羽があります。
切花や庭植えにも適し、茶花にも用いられます。
乾燥した鱗茎は、生薬の貝母として
去痰・咳止め・鎮痛・止血などに用いられます。
名は、漢銘貝母の字音によります。古くは鱗茎が栗に似ているので母栗とも言われました。
別名 : アミガサユリ (網笠百合)
古名 : ははくり (母栗)



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彼岸桜 ( ひがんざくら ) <季> 仲春

2011-03-31 |  春の草木 の 俳句

◉ 姥彼岸 (うばひがん)・東彼岸 (あずまひがん)・立彼岸 (たちひがん)・江戸彼岸 (えどひが )・枝垂彼岸 (しだれひがん)

尼寺や彼岸桜は散りやすき ・・・・・ 夏目漱石 [漱石全集]
仔山羊啼く彼岸桜に繋がれて ・・・・・ 青柳志解樹 [楢山]
明るさの彼岸桜やひと恃まず ・・・・・ 山口草堂 

他の花に先がけて、お彼岸の頃に咲く桜です。
彼岸桜と言えば、一般に「小彼岸桜」を指します。
本州の中部より西日本に多い小彼岸桜は、
花は小さく、一重咲きの淡紅色、
桜の中で最も優美で一番早く開花します。
江戸彼岸は、コヒガンザクラとは別種で大木になり、
俗に彼岸桜と同名で呼ばれています。
姥彼岸、東彼岸、立彼岸とも言われ、
この方が開花が遅く3月下旬になります。
根尾の薄墨桜など有名な古木があり、長命な桜です。

  [ バラ科サクラ属の落葉小形高木 ]

満開のときの白い色の薄墨桜が目に浮かびます 。

コヒガンザクラ (小彼岸桜)
エドヒガンとマメザクラの交雑種と考えられています。
小型で枝が細かく分かれ花の付きもいいので、
庭木、公園樹として植えられています。
樹高は、4~5m。
幹は直立して多く分枝します。小枝は無毛でなめらかです。
葉は、柄をもち、長さ5~10㎝の倒披針形または楕円形で先は鋭尖頭、基部は鋭形形、
縁には重鋸歯があり有毛、互生します。
花期は、3月下旬~4月上旬。
葉に先立って径約3㎝の一重淡紅色の花を2~3個散形状に付けます。
花弁は5枚で凹頭です。
雄しべは多数、子房と花柱には毛がありません。
果実は、小さい球形の、で、紫黒色に熟します。
コヒガンの亜種に十月桜が知られています。
名は、彼岸頃に咲き始めるために付いたそうです。
別名 : ヒガンザクラ(彼岸桜)・センボンヒガン(千本彼岸)

エドヒガン (江戸彼岸)
コヒガンザクラとは別種です。
本州~九州にかけて、
山地の谷沿いや斜面にやや稀に自生し、時には観賞用に栽培されます。
樹高は、10~20m。
樹皮は老木ほど縦にさけ、小枝は細長く表面は滑らかです。
葉は、長楕円形で長さ5~9㎝、先は細長く尖り、基部は鋭形、
縁には鋭く尖った鋸歯があり、互生します。
葉には軟毛があります。
花期は、3月下旬。
葉より早く、淡紅色の花を数個散形状に付けます。
花弁は5枚で凹頭で水平に開出します。
雄しべは多数、雌しべは1本、萼や花柱とともに毛でおおわれます。
萼は筒状で下部がややふくらみ、上端で5裂します。
果実は、小さい球形で、紫黒色に熟します。
枝が垂れない品種はエドヒガン。
だの垂れる品種をシダレザクラ(イトザクラ)といい、
花色が濃い栽培品種に八重咲きのヤエベニシダレや一重咲きのベニシダレがあります。
ソメイヨシノの一方の親としても有名です。
名は、エドヒガンは江戸で多く見られ、春の彼岸(春分の日を中日に前後7日間)頃に花が咲くことから、
アズマヒガンは東国の彼岸桜の意。
ウバヒガンは姥(老婆)は普通歯が抜けてしまって無い場合が多いが、
本種も3月末に葉の無いうちに花が開くので、歯無しと葉無しをかけて,ウバの名が付けられた。
シダレザクラは枝が細く長く伸び、枝垂れるところからその名が付いたそうです。
別名 : ウバヒガン(姥彼岸)・アズマヒガン(東彼岸)・タチヒガン(立彼岸) 


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座禅草 ( ざぜんそう ) <春> 晩春

2011-02-27 |  春の草木 の 俳句

◉ 達磨草 (だるまそう)

源流のきらめきを抱く座禅草 ・・・・・ 福田甲子雄 [師の掌] 
座禅草己がくらがり顧みる ・・・・・ 藤木俱子 [火を蔵す]
うしろより水のささやき座禅草 ・・・・・ 堤高嶺 [裸子]


山地の湧水の湿地帯などに自生します。
葉に先がけて、
紫褐色の仏焔苞(ぶつえんほう)を地表に現します。
花の形や静かな佇まいが、
座禅をする達磨大師や修行僧の姿のようと言われています。
面白い形に魅せられる人も多い花でが、
残念なことに悪臭を伴います。

  [ サトイモ科ザゼンソウ属の多年草 ]

座禅草          ・・・みなみ
現在世失意淡然座禅草
水際や色艶のよき座禅草

座禅草に人の跼みて話すごと

熊川や蛇尾川(さびがわ)の伏流水が湧き出る湿地に、
およそ2万株の座禅草が自生しています。
流水の際の花は、色艶がよく、存在感がありました。
那須野ヶ原の田園に囲まれた私有地の、
ハンノキの多い落葉樹林の落ち葉の間に、
ぽつぽつと開花していました。

ゼンソウ (座禅草)
日本では、
北海道~本州にかけて、
湿原や湿地の半日陰に自生しますが、日向にも見られます。
草丈は、20~40cm。
根茎は太く、
葉は数本を根出し、長い柄を持ち、卵状心形で基部は心形、
花後に伸びて大型になります。
花期は、2~5月。
花は、葉に先立って開き、単生します。
卵形をした紫褐色の仏焔苞の中の、
楕円形の肉穂花序(にくすいかじょ)に多数の小花付けます。
花被片4枚、雄しべ4本、雌しべ1本。
先に雌しべが現れ、
後から雄しべが出て黄色い葯から花粉をこぼします。
両性花ですが、自家不和合性であり、
昆虫などによる媒介を必要とします。
熱を発生する植物で、強い臭気があります。
果実は、その年の夏に熟します。
まれに仏焔苞が緑色のものがあり
アオザゼンソウと呼ばれます。
ヒメザゼンソウは、葉とほぼ同じ長さの柄をもち、
6月末頃に、小形の花を1株に2~3花開きます。、
葉が出てから花が咲き、臭気は無く、
果実は翌年の春に熟します。
名は、花の形が座禅を組む修行僧の姿に似ていることから付いたそうです。
別名 : ダルマソウ (達磨草)


2011/02/25 撮影
2011/02/25 撮影…アオザゼンソウ



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梅 ( うめ ) <季> 初春

2011-02-04 |  春の草木 の 俳句

◉ 好文木 (こうぶんぼく)・春告草 (はるつげぐさ)・匂草 (においぐさ)・風待草 (かぜまちぐさ)・初名草(はつなぐさ)・野梅 (やばい)・白梅 (はくばい)・臥竜梅 (がりようばい)・青竜梅 (せいりゆうばい)・残雪梅 (ざんせつばい)・残月梅 (ざんげつばい)・枝垂梅 (しだれうめ)・飛梅 (とびうめ)・鶯宿梅 (おうしゆくばい)・箙の梅 (えびらのうめ)・老梅 (ろうばい)・ 梅が香 (うめがか)・梅暦 (うめごよみ)・梅園 (ばいえん)・梅林 (ばいりん)・梅の里 (うめのさと)・梅屋敷 (うめやしき)・梅の宿 (うめのやど)・梅の主 (うめのあるじ)・梅見 (うめみ)・観梅 (かんばい)・夜の梅 (よるのうめ)・闇の梅 (やみのうめ)・梅月夜 (うめづきよ)

梅一輪一輪ほどの暖かさ ・・・・・ 嵐雪
しら梅に明る夜ばかりとなりにけり ・・・・・ 蕪村
夜の梅寝(い)ねんとすれば匂ふなり ・・・・・ 白雄

早春寒気の中に咲く
気品と香気の高い清楚な花は、
古くから日本人に親しまれ、
万葉の時代に花といえば梅をさし、
詩歌にも広く詠われてきました。
古今集では「梅が香」が珍重され、
闇夜でもその香はまぎれもないというので、
「夜の梅」・「闇の梅」としてもよく詠まれました。
四季の花の中で他に先駆けて咲くことから
「花の兄」・「春告草」などと呼ばれ、
「飛梅」・「鶯宿梅」には名高い伝説があります。
衣装の紋様・襲の色目・家紋などにも使われ、
調度品その他にも描かれています。
庭木・盆栽・切花・観梅など
現代でも広く親しまれています。
白梅・臥竜梅など品種も色々ありますが、
もっとも多いのは白色5弁の野梅で、普通に見られます。

  [ バラ科サクラ属の落葉高木、中国原産 ]

梅の絵に重なる梅の神楽堂 ・・・・・ みなみ

庭の白梅が散って、紅梅が盛りの頃に、
青梅の吉野梅郷が見頃となります。


ウメ (梅)
飛鳥から奈良時代に
遣唐使が梅の苗をもたらしたと言われ、
もっと古くは、薬用としての燻し梅「烏梅(うばい)」が
渡来したとも言われています。
樹高は、5~10m。
葉は互生し、楕円形~卵形で先がとがり、
縁に細かい鋸歯があります。
花期は、2~3月。
初春、葉が出る前に、
白・薄紅・紅色などの
一重の5弁花(基本)や八重咲きの、
香の高い花を付けます。
花は前年の枝の葉腋に付き、
柄がほとんどありません。
雄しべは多数で花弁より短く、子房に毛を密生します。
果実の収穫は、6月中旬頃。
果実はほぼ球形で微毛があり、
片側に浅いみぞがあって、
梅干あるいは梅漬とします。
梅を目的別に分類すれば、
採果用の実梅・観賞用の花梅・
それらの兼用種に大別されます。
花梅は、江戸時代に園芸品種が数多く作られ、
現在でも350種以上あります。
枝が長く垂れるシダレウメ・ 枝がねじれて曲がるコウテンバイ・
幹や枝が地面を這うガリュウバイ・花も葉も実も小形のコウメ(シナノウメ)・
花が淡黄色のキバナウメ・萼が緑色で花は純白のリョクガクバイ(アオジク)・
花弁が萼片より小さく雄しべが外に飛び出しているテッケンバイ・
一花から数個結実するザロンバイ(ヤツブサウメ)・
梅と杏の雑種のブンゴウメなどの品種もあります。
園芸上では、
野梅性・紅梅性・豊後性・杏性の4性に
類別されます。


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八重桜 ( やえざくら ) <季> 晩春

2010-04-16 |  春の草木 の 俳句

◉ 奈良の八重桜 ( ならのやえざくら )・里桜 ( さとざくら )・楊貴妃桜 ( ようきひざくら ) ・牡丹桜 ( ぼたんざくら )・鬱金桜 (うこんざくら)

奈良七重七堂伽藍八重桜 ・・・・・ 芭蕉 [泊船集]
日と空といづれか溶くる八重桜  ・・・・・ 渡辺水巴 
やへざくら田に幾枚も山の水 ・・・・・ 矢島渚男 [木蘭]

サトザクラ の八重咲きの総称で、八重桜」と言いますが、
ヤエザクラという名の品種は存在しません。
奈良の八重桜はヤマザクラから出たとされていますが、
現在の多くは大島桜を主体としてできた園芸品種(サトザクラ)で、
普賢象(ふげんぞう)・関山(かんざん)など数多くの品種があります。
色も変化に富み、花の印象はそれぞれに違います。
桜のうちでは咲くのが最も遅く、
花期は、4月下旬~5月上旬。
花は大きく、色は白・淡紅・紅・淡黄色などを呈し、
濃艶があります。
豊かな花房は重く垂れ下がります。
八重の花弁は雄しべが変化したもので
普通実を付けませんが、
奈良の八重桜は実を結ぶ珍しい品種です。
関山の花の5~7分咲きを花柄ごと塩漬けにし、
桜湯などに使います。
大島桜の若葉の塩漬けは桜餅に使われます。
別名: ボタンザクラ

  [ サクラは、バラ科サクラ属サクラ亜属の樹木の総称 ]
  [ 八重桜は一つのサクラの品種ではなく八重咲きに花を付けるクラの総称 ]

雨すぎてまた青空と八重桜 ・・・・・ みなみ
  
良く知られている
新宿御苑や馬事公苑の八重桜は、
毎年変わることなく
見事な花を咲かせています。
五十年も咲き続けた草庭の八重桜は、
植え替えてからテングス病にかかり、
樹勢が次第に衰えて
とうとう枯れてしまいました。
古木だったからなのか、
それとも移植の時期が悪かったからなのでしょうか、
とても残念でした。

2014/04/13 撮影 …カンザン、神代植物園





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桜蘂ふる ( さくらしべふる ) <季> 晩春

2010-04-13 |  春の草木 の 俳句

◉ …

忌七たび七たび踏みぬ桜蘂 ・・・・・ 鈴木真砂女 [居待月]
流したる水桜しべ押してゆく ・・・・・ 波多野爽波 [一筆]
桜しべ降るにまかせて大社 ・・・・・ 鷹羽狩行 [十二紅]

桜の花びらが散ったあと、
がくに残った蘂が降ることをいいます。
花時を過ぎた
静かな佇まいの樹下に
紅色の蘂が散り敷いている光景が見られます。

桜蘂ふる雨の路地染めにけり ・・・・・ みなみ

雨上がりの朝の散歩道で、
まだ濡れているアスファルトの上に
花びらの混じった桜蘂(がくごと)が
鮮やかな紅色をしていました。


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落花 ( らっか ) <季> 晩春

2010-04-12 |  春の草木 の 俳句

◉ 散る桜(ちるさくら)・花吹雪( はなふぶき )・桜吹雪(さくらふぶき)・飛花( ひか)・花散る(はなちる)・花屑( はなくず)・花の塵(はなのちり)・花筏( はないかだ)

四方より花吹き入れて鳰の海 ・・・・・ 芭蕉 
人恋し灯ともしごろをさくらちる ・・・・・ 白雄 [白雄句集]
仁和寺や落花さかんと大書して ・・・・・ 黒田杏子 [一木一草]

桜の花の散ることです。
花時には季節風が吹くことが多く、
爛漫と咲く万朶の花が
一陣の風に惜しげもなく散って行くさまの
はかなさ・美しさ・潔さをよしとして、
賞美されました。
散る花のさまを表現した傍題の数も多く、
「花吹雪」は風に飛び散る花びらのさまを
吹雪にたとえ、
「花筏」は水面に連なって流れる花びらを
筏に見立てたものです。

輪を描きつゝ舞ひ上がる落花かな ・・・・・ みなみ

ひとしきりの風に舞いながら
惜しみなく散る花びらに、
つい立ち尽くしてしまいます。


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夜桜 ( よざくら ) <季> 晩春

2010-04-12 |  春の草木 の 俳句

◉ …

夜桜や美人天から下るとも ・・・・ 一茶
夜桜や大雪洞の空うつり ・・・・・ 正岡子規
夜桜の一枝長き水の上 ・・・・・ 高野素十


夜桜見物を略して夜桜と言います。
各地の公園や桜並木道などで、観光客のために、
篝火を焚いたり、電気照明により風情を添えています。
*  「季語」の扱いは、歳時記( 編者 )により異る場合があります
 「夜桜」はその一例と言えるでしょう。
 或る歳時記は
 「夜桜」を「生活」または「人事」の項目に入れて「夜の花見」のこととし、
 「夜の桜の花」のことを「夜の桜」と言う、と述べています。
 他の歳時記には、
 「夜の花見」と「夜の桜」とを分けずに「夜桜」として扱っているものもあります。
 またほかに、
 「植物」の項目に入れ桜の傍題として取り扱っている例も見られます。

夜桜のまだ人込みのすみにをり ・・・・・ みなみ

夜空に浮かび上がる染井吉野にも
格別の趣がありますが、
とくにライトアップされた枝垂桜は、
昼間と違った神秘的な美しい表情を見せています。
平安神宮の
空から枝垂れて溢れる八重紅枝垂桜に感動し、
また円山公園の
主のような威厳を見せている枝垂桜や
醍醐寺三宝院の枝垂桜なども、
それぞれに深い味わいをもっていると思いました。

2013/03/30 撮影…掛川城



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山桜 ( やまざくら ) <季> 晩春

2010-04-07 |  春の草木 の 俳句

◉ 吉野桜 ( よしのざくら )

見返れば寒し日暮れの山桜 ・・・・・ 来山 [平包]
うかれける人や初瀬の山桜 ・・・・・ 芭蕉 [続山井]
山桜花の白さに散りやすき ・・・・・ 高浜虚子 [虚子句集]
枕元まで散りこんで山櫻 ・・・・・ 黒田杏子 [一木一草]


古来より、
詩歌に多く取り上げられています。
一重の白い花と共に開く
赤みの強い新葉の佇まいは、
清々しい気品に満ちています。
俳句で山桜と言えば、
特定の品種を指すのではなく、
訪れた山中に咲く桜が山桜として
詠まれていることが多いようです。
奈良の吉野山・京都の嵐山など、
山桜の名所として知られています。
桜は農耕文化と深く結びついており、
信仰の対象として大切にされてきました。
国花とされる桜は山桜をさします。

  [ バラ科サクラ属サクラ亜属の落葉高木 ]

齢深まり山桜好きになり ・・・・・ みなみ

吉野の桜を見て
山桜のすばらしさを実感しました。
今では桜と言えば山桜です。

ヤマザクラ (山桜)
日本では、
本州の宮城・秋田以南~九州の
温暖な気候をこのみ、低山や丘陵に自生します。
西日本では最も一般的な野生の桜です。
樹高は、15~25m。
樹皮は光沢のある暗褐色で横に薄く剥げます。
葉は、長楕円形で先が急に細くとがります。
赤褐色~黄緑色まで変異があり、
裏面は白みがかって、互生します。
花期は、4月上・中旬頃。
若葉と共に花が咲きます。
1花序に2~3個の径2.5~3cm
白色または淡紅色の5弁花を
散房状に付けます。
八重咲きもあります。
果実は、球形で5~6月に赤から黒く熟します。
現在でも庭園などに広く植えられ、
材は、建築・家具・楽器材・版木・樹皮の細工物など
に使用します。
別名 : シロヤマザクラ



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枝垂桜 ( しだれざくら ) <季> 仲春

2010-04-02 |  春の草木 の 俳句

◉ 糸桜 (いとざくら)・しだり桜・枝垂彼岸 (しだれひがん)・紅枝垂 (べにしだれ)

影は滝空は花なり糸桜 ・・・・・ 千代女 [千代尼句集] 
いとざくら枝も散るかと思ひけり ・・・・・ 嘯山 [葎亭句集]
ゆき暮れて雨もる宿やいとざくら ・・・・・ 蕪村 [蕪村句集]
まさをなる空より枝垂桜かな ・・・・・ 富安風生 [松籟]
たそがれてあふれてしだれざくらかな ・・・・・ 黒田杏子 [一木一草]


エドヒガンの枝が下向きに垂れている園芸品種で、
樹齢がながく、種類も多く、
古くから各地で栽培され、
社寺や庭園などに観賞用として植えられています。
太い枝を四方にひろげ、 長く垂れた細い枝に淡紅白色の花を付けた優美な姿が、
古来人々に愛され、すでに「古今集」にも詠まれています。

  [ バラ科クラ属サクラ亜属の落葉高木、エドヒガンの一変種 ]

あだし野の風の出てきし糸桜 ・・・・・ みなみ

醍醐寺の霊宝館・三宝院の枝垂桜は
ちょうど見頃に咲き揃っていて、
聞きしに勝る立派なものでした。
また、
化野( あだしの )の竹林からの風になびく、
一本の糸桜には、
身の引き締まるような思いがしました。   

シダレザクラ (枝垂桜)
本州~九州に分布します。
樹高20~30m。
葉柄や葉には短毛があり、
葉の縁には細かい鋸歯が上向きにあって、互生します。
短枝の葉は楕円形ですが、
長枝の葉は細く披針形です。
花期は3月下旬~4月上旬。
花は葉より前に開き、
5弁の散形花序で白色~淡紅色です。
がく筒は基部がふくれて壺形です。
色や大きさには変化が多く、
紅色の濃いベニシダレや八重咲きなどの種類があります。
名は、細い枝の垂れている様子から 付いたそうです。



2010/04/04 …退蔵院

〃 …平安神宮

2014/04/13 撮影 …神代植物園


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花 ( はな ) <季> 晩春

2010-04-02 |  春の草木 の 俳句

** 花の雲( はなのくも)・花房( はなぶさ)・花弁( はなびら)・花の姿( はなのすがた)・はなの香( はなのか)・花の輪( はなのわ)・花の友( はなのとも)・花の主( はなのあるじ)・花笠( はながさ)・花の庭( はなのにわ)・花の門( はなのもん)・花の都( はなのみやこ)・花盛り( はなざかり)・花明り( はなあかり)・花便り( はなだより)・花の露( はなのつゆ)・花朧( はなおぼろ)・花の陰( はなのかげ)・花の奥( はなのおく)・花の名残( はなのなごり)・花を惜しむ( はなをおしむ)・花の色( はなのいろ)・花の粧( はなのよそおい)・花の錦( はなのにしき)・花埃( はなぼこり)

しばらくは花の上なる月夜かな ・・・・・ 芭蕉 [初蝉]
咲き満ちてこぼるる花もなかりけり ・・・・・ 高浜虚子 [虚子句集]
チチポポと鼓打たうよ花月夜 ・・・・・ 松本たかし [鷹]
花に問へ奥千本の花に問ヘ ・・・・・ 黒田杏子 [一木一草]


俳句では、花と言うと、
ふつう桜の花を指します。
桜は植物をさすのに対して、
花という言葉は、心に映るもので、
より華やかなふくらみがあり、
詩的な印象を与えるとも言えるのでしょうか。
桜を花と表した美しい言葉には、
花吹雪・花筵・花篝・花守・花人・
花衣・花疲・花冷え・花時 などもあります。

  [ バラ科サクラ属のサクラ亜属の樹木の中で一般に花が美しく、鑑賞されるもの ]

まつすぐに来て白満つる花と会ふ ・・・・・ みなみ
ただ臥してゐるほかはなし花明り ・・・・・ みなみ


「根尾谷の薄墨桜」の古木は、
ちょうど見ごろで白い花に満ちていました。
散る時の薄墨色の花も見たいと思いました。


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