小雨が降り出して桜が咲ききってしまって路上にその花びらがこびり付いてしまったら、
キミは少し哀しい気分になってしまったりするのではないかと心配になったりする。
夜がとても静かだったから、君を上手く誘い出せたりもする。
思い出話なんかは何にも役に立たないことは分かっていながら
会話が弾んで君から目が離せなくなっちまう時。
とんでもなく強烈に腰に来る酒と鶏肉があればとても愉快な夜が過ごせるものなのだ。
いつか二人で飲み明かしてみたいと言い合っていた町。
蒲田駅西口「バーボン・ストリート」。
猥雑かつエロチックな町の佇まい。
でも、呼び込みの女や男はいないから品があったりする。
メニューの品数は限りなく少ないのがいい。
どうしてか?
選択に時間をかけなくていいから・・・
よくいるよ。「このお店のお奨めはなんですか?」
なんて、バカな質問なのだろう・・・・。
客に気を使わせるなんて、最低なんだって思っている僕は
こんな風にして知識のなさをカバーしながら生きてきたんだ。
「鶏の素揚げ」一本勝負の店。
税務署職員のような親父さんとかってはGSのおカッケ専門のようなおかあさん。
夫婦で切り盛りして5年がアッ!と言う間に流れた・・・そんな雰囲気が漂う店。
そんな店へたった一人で行く君の身のこなし方に
僕は、いつも驚かされ続けてきたんだ。
繊細過ぎる心で良く生きてこれたのは、
そんな大胆な行動力のおかげなんだろう。
「あの、窓際のカウンターの端っこ席に座って、首の素揚げを頼むの・・・」
物憂げな眼差しで話す君には悪魔と天使が共存していて
数秒の内に変化を遂げてしまう。
その変化の助長はいつだって僕のつまらぬひとことだったりするんだ。
反省なんかは全くしないけれど・・・・
「今夜は上手く話せていないなぁ~」
そう思うだけだ。
おうむ返し的会話が必要な時もある。
でも、そればかりが続くと、急に家に帰ってブラジル音楽が聴きたくなったりしてしまう。
いままで相手の会話に合わせてばかりいて、
相手が喜べば僕嬉しい!
なんて・・・傲慢な考えをしていた。
まあ、タブン、それで満足していたんだ。
相手の気持ちをくみ取れていたような気がしていた。
正直な気持ちで、素直な気分で、会話が進むなんて思ってもみなかったからね。
そんに気分になれる相手に出会えていなかったんだ。
そんな人間がいるなんて思いもしなかったんだ。
でも、存在しているんだ。目の前にね。
それは、酒の所為なんかじゃなくて・・・・
この鶏の素揚げの所為なんだ。
そんなことが、3日もたって、
しかも、雨が降り始めた今日の朝に気が付くなんて・・・
僕はなんて鈍感なんだろう。