喋り続ける人の話を聞き続ける。
殆どは意味はない。
話の内容はどうでもよくて、ただただ私は此処に
いる。
それだけを伝えているだけなんだろう。
とてもとても昔。
この町の路地裏のこの店で
オカマバーのママが僕に言った。
『あんたが、どんだけ努力しても
あんたの悪口を言う奴は必ずいる
それを理解してないといけない。
悪口言われたからって
自分が悪いなんて思ってね
悪口言う人の意見ばかり聞いちゃうよ
それって、
逆だよね』
そんな話がこの路地裏でまだ、
行われてるといい。
今夜はこの町の夜でも傍観者なのだ。
行くあてもないのにふらふらと歩き始めたのにあまりにも夏の陽射しが強くて路上でへたり込んでしまうような気分だ。
ペットボトルの水は生温くて飲む気もしないけれど無理に飲んだ。
こんな日は家にいてクーラーをギンギンに効かせてソファに横たわったままトドのように昼寝していればいいのに
ノコノコと起きだし、まだ若いもんに負けるかよ!と、息巻いて見せる。
おっさん!もう、終わったんだぜ!もう、出番はないよ!
そんな声が聞こえてくる。
ただ、そんな気分じゃないんだ。
若いころから負けてばかりいたし、
あと少しあとちょっとだけひと花咲かしたい。
まさか、そんな気などありはしない。
なんとなく、ただなんとなく
このまま投げ出してしまったらカッコ悪いような気がしただけなんだ。
誰かのために何かするわけでもないしね。
そんな気持ちなどサラサラない。
ましてや、誰も期待してない。
と、思うのだけれどもう少し頑張ってもらわないと。。。。
そんな言葉を吐く奴がいる。
そんなに僕に期待してどうするんだい。
最後の最後まで僕の陰に隠れてラクしてお金を貰おうなんて思っているのかい?
苦しいことは、いつも僕の役割で
愉しいことは、別の誰かと楽しむのかい?
でも、そんなものだよ。
何も言わなければ嘘をついたコトにはならないしね。
質問には沈黙で返せば自分は疵つかなくてすむ。
癒されてばかりいると、癒す力はなくなってしまう。
とても暑い日だった。
今日は・・・・とびきりの蒸し暑さだった。
おまけに頭痛が止まない。
そんな暑い日なのに、なんとなく期待に胸をいっぱいにして出かけた。
60歳になろうかという男たちのバンドライブに誘われていた。
会場は中野音楽リハスタジオで、今まで知らなかったこのスタジオにライブとして使わせるなんてことは・・・
まあ、そんなことはどうでも良い。
キーボードとドラムとギターのスリーサム。
バンドを始めたのは7年前。
きっかけは。
学生時代から演劇青年。
30歳ぐらいまで役者を夢見ていた。
そして20年経過して再開してバンド結成。
これは絶対楽しいわけで、昔が甦るから。
まだまだあの頃みた夢が忘れられない・・・ような気がするから。
しかし、現実は現実。いつだって足元に横たわっている。
さんざん踏みつけて乗り越えてきたのに、さらっと歌って置き去りにしてる。
あのときのあの哀しみはいったいどうするんだい?
本気に哀しかったわけじゃないんだ。
ただの演技だよ。
バンドなんかやらないで芝居やればいいじゃん。
アマチュア演劇っていうのがあってもいいじゃん!
そんなことをライブの2部の後半で玉置浩二の「メロディー」を歌い始めた時から思い始めたんだ。
なんだか、10年前に自分がやっていたことがクロスしてきて居たたまれなくなってきた。
あの独りよがりで傲慢な、
自分の過去の虚偽報告をしていたステージ。
ただ救われたのは、ひたすら真面目にたどたどしく謙虚に演奏していた。
そんなド下手な演奏だったからなんだ。
だから、10年経ったところで止めたんだ。
嘘に疲れたからね。
しかし、彼らは元役者。
実に演技が上手い。
すべてが芝居がかっていて・・・平気で
「あのころは・・・何もなくて・・・それだぁって」
よく通る声で歌い上げていた。
嘘じゃないと思うよ。
何もなくったって楽しかったんだろう・・・・
でも、嘘っぽく見えてしまうし聞こえてしまったんだ。
何が芝居で何が本心なのか?
分からなくなってしまうじゃないか・・・・
「軽く呑ってくか?」
「ちょっと、予定があるんです・・・・」
忘れていた。今日は金曜日だった・・・・しまった。
昨日は事務所に顔を出さなかった。一日間違えていた。
そんなことを思い浮かべては消し去った。
やっぱりな・・・・醜いな僕は。
苦しいときが過ぎれば人は何もかも忘れるのだ。
楽しみだけを追い求める奴の思考回路は決まっている。
トップを走ったりはしない。
誰かの後ろにいて、もろにアゲンストを受けない。
そんなポジショニングを心がけている。
狡いと言えば身もふたもないけれど、いつかはアゲンストに立ち向かわなければならない。
「癒す」ことを知らない。それは「癒される」ことばかり考えているからなのだ。
そんな卑しい気分を変えたくてこの映画を観た。
アメリカ人は凄いと思う。
「君の気持ちなんかわからない。でも、その考え方は分かる」
こんな心根が一部の人間に確かにあると言うことだ。
良心的兵役拒否者。
この映画のテーマだ。
戦争には参加するけれど、人は殺さない。
国を愛するのは殺す奴ばかりではない。
殺さなくてもこの国を愛しているのだ。
今も昔も変わらずに問う人たちがいる。
敵が攻めて来たらどうする?
主人公は言う。
「わからない。」
そして挑発される。殴られる。
殴り返さない。
「臆病者!腰抜け!」と罵られる。
殴り返さない。
時と場合ではないのだ。どんな時でもどんな状況でも
殴り返したりはしないのだ。
それは「心根」なのだ。信念などと大それたコトではないのだ。
やさしさに勝る強さはないのだ。
誰もが認めたくないことには目をつぶりやり過ごす。
恐怖の前では己の身を守ろうとし逃げ出す。か、殺すか・・・・
地獄のような沖縄戦で衛生兵として戦った一人の男。
メル・ギブスン。
少し見直した。
世界で一番下品な大統領はこの映画を観たのだろうか?
やられる前にやっけろ!叫ぶのだろうか?
誰もが拳銃を腰にぶら下げ、侮辱を受ければ一対一の決闘だ!
そんなことしか言えないのだろう。
僕はジーンズの裾をズブ濡れにさせただけだった。彼女は相変わらずのー天気な笑顔を振りまきながら腹黒く1日限りの恨みつらみを少しづつ吐き出してる。その毒気に染まらぬように少しゆっくりと身をカワシ彼女の側で屈託のない笑顔を浮かべてる。見る人によれば僕の微笑みは薄ら寒いのかもしれないな〜と感じつつもこの笑いはやめられない。なぜなら、この微笑みは傷みだからだ。なにかを企んでる訳じゃないかもしれない。そうじゃないかもしれない。否定の否定は正解。
だとすればあざやかに風吹く夕闇にまぎれてこの場所から立ち去るのが最も賢明な判断なのだろう。
