台風がやって来た。
雨と風が吹き荒れて駄々っ子のような泣き声が聞こえた。僕は約束を違えないのように東京の東の町へと向かった。子供の頃、台風がやって来る直前が好きだった。大人たちは、何処から手に入れたのか分からないが長い板を家の窓という窓に打ち付けていた。ロウソクを用意し停電に備えて今か今かと台風を待ち受けていた。恐怖はなかった。無事に通り過ぎること信じて疑う事がないかのようだった。ラジオから流れる音楽と臨時ニュースは静かな闇に溶け込んでいて大人たちの心配性を盛り上げていたけれど僕はワクワクした気持ちを抑えきれずにいた。そんな気持ちから60年。過ぎ去ったことなど思い出しもしなかった。
人は忘れてしまう。
過ぎ去ったことに執着し過ぎることもある。
でも、忘れてしまうのだ。
結局は楽しかったことも、辛かったことも、
全ては通り過ぎてしまったことなのだ。
始まりもなければ終わりもない。
なのに、忘れてしまいたくないことも忘れてしまうことが哀しいのだ。
あの日に帰りたいなどと言うのは余りにも都合が良すぎて身勝手過ぎる。
そんな人たちに囲まれて、僕は今日も生きている。そしてそんな人たちを暑苦しく眺めながらも程よく愛おしく思おう。
雨と風が吹き荒れて駄々っ子のような泣き声が聞こえた。僕は約束を違えないのように東京の東の町へと向かった。子供の頃、台風がやって来る直前が好きだった。大人たちは、何処から手に入れたのか分からないが長い板を家の窓という窓に打ち付けていた。ロウソクを用意し停電に備えて今か今かと台風を待ち受けていた。恐怖はなかった。無事に通り過ぎること信じて疑う事がないかのようだった。ラジオから流れる音楽と臨時ニュースは静かな闇に溶け込んでいて大人たちの心配性を盛り上げていたけれど僕はワクワクした気持ちを抑えきれずにいた。そんな気持ちから60年。過ぎ去ったことなど思い出しもしなかった。
人は忘れてしまう。
過ぎ去ったことに執着し過ぎることもある。
でも、忘れてしまうのだ。
結局は楽しかったことも、辛かったことも、
全ては通り過ぎてしまったことなのだ。
始まりもなければ終わりもない。
なのに、忘れてしまいたくないことも忘れてしまうことが哀しいのだ。
あの日に帰りたいなどと言うのは余りにも都合が良すぎて身勝手過ぎる。
そんな人たちに囲まれて、僕は今日も生きている。そしてそんな人たちを暑苦しく眺めながらも程よく愛おしく思おう。