久しぶりに、唸ってしまった。
「その女アレックス」
A新聞の日曜版で紹介されていたんだ。
日曜日の朝食をとりながら、気になった本はメモしたりしている。
けれど、そのメモを読んで買った本は一冊もなかった。
でも、この本だけは違った。
なぜか、自分でも忘れてるはずだったのに買ってしまった。
お決まりの誘拐事件で、救出されるまでの、担当刑事と、そして犯人の駆け引きと知恵の絞りあい・・・・
とにかく、黒沢明の「天国と地獄」を超えるものなどないと思っていたし、それ以上の小説など存在できないと思っていたわけだ。
しかし、第1部を読み終えた段階で完璧にはぐらかされてしまった。
誘拐と言うより監禁事件としての展開だったのだ。
しかも、読んでいて気持ちの悪くなる描写が溢れていて
それなりの忍耐が必要と思わせた瞬間。次のステップへと移るんだ。
第1部の終焉は読んでいる者を次なる不安へと駆り立てて、
この物語が早く終わってしまえばと願うほどなんだ。
そして、もう一つの面白さは担当の刑事のキャラだった。
背丈が異常に低い、妻を事件でなくして3ヶ月。
復活の話が組み込まれている。
第2部はその担当刑事の心象と絡ませながら、この物語はジョジョに盛り上がっていく。
深い、とても深い傷を負ったものはもはや立ち直る事などできないんだろうか・・・・。
そんな不安が読んでいる僕には感じられたし、まんまと書き手の策略にはめられてしまった。
そしてラストの第3部。
全く期待を裏切られ、このままこの本、終わってしまうのかよ!叫びだしてしまうくらいだった。
しかし、残り3ページですべての謎がとかれる。
決して気持ちの良い終焉ではないが、希望はある。
いまのヨーロッパ社会の混沌さ、人間の浅はかな残虐はなくなりはしない。
哀しいが、それが現実なんだ。
この刑事が主人公だったんだ。
彼の疵の疼きはいつか消える、
哀しみにも終わりがあるのだ。
アレックスという女の魂の叫びをシッカリ受け止めたのだから・・・・。