真夏の軍楽隊。
そんな暑さだ。
おまけに、相方の体調は悪い方向へと限りなく近づいていて、
最悪のケースが真近い。
だから、と言う訳ではないが、車を北に向けた。
行先は、5年前に行ったことのある宿。
真夏にも関わらず、食堂には暖炉があって夕食時には薪をくべる。
あの時もそうだった。明々と暖炉で燃え盛る炎は行動するには歳を摂り過ぎていて
周りの人間の邪魔をするだけだ。
“大切なことは・・・やれるけれど、敢えてやらないこと”そんな言葉が宙に舞っていた。
もはや、誰かに勝とうなどと思わないが、負けるのは悔しい。
男らしさとか女らしさとか、この「らしさ」に惑わされてはならない。
現実は老いている。ただただそんな惨めな姿を認めたくないだけなのだ。
諦めではなく、認めるのだ。
自分の弱さに立ち向かうのではなく、弱い自分も自分自身なのだ・・・
そんな簡単な理屈を、身体に浸み込ませる。
苦しいだとか、悲しいだとか、寂しいだとか、
感情は豊富であった方がよいのだ。ただ、その感情の入れ物を大きくするだけなのだ。
誰もかれもが幸せになれる訳ではないが、
眠りに落ちる前に、
「眠りは、なんて心地がよいのだろう・・・」と。
そう、思えばいいだけなんだ。