歳を重ねると楽しいとか賢くなるとか・・・・みんな戯言なんだよ。

感じるままに、赴くままに、流れて雲のごとし

ビル・エバンスのピアノが聴こえてたあの頃は…

2019-05-17 | 映画
jazzが若者の特権意識の先頭を走っていた。
暗いジャズ喫茶の片隅で貧乏揺りでリズムをとる振りをしていたけれど、遅いテンポだと合わなくなる。帳尻を合わせる為には困惑した振りで貧乏揺すりをやめなくてならない。でも、リズムが余ってしまったことの戸惑を気付かれないようにしなくてはならなかった。そんな薄いプライドと狭量な感性の中でビル・エバンスのピアノは最も合わせにくく美しい旋律に圧倒されてしまった僕はこれはjazzではない。と、突き放すことで友人たちから優位性を示そうとしていた。
全く呆けた話しだ。
 
「ビル・エヴァス。タイム、リメンバード」
を観た。彼の51年間を親類縁者、バンドメンバーなどが彼についての良き話しをする映画だった。悪口はほとんどない。口を揃えて褒め倒すのだ。しかし、実態は良い事柄だけではないはず。そんな思いを頭の隅から消し去ることができずにこの映画を見続けた。そして、誰だかは忘れたが、「彼はワガママで自己中心的で厄介な奴だった。」とのたまったのだ。そのはずなのだ。あれだけの音楽を残すには人生の大半をピアノに注ぐしかない。大切な人間を、その殆どを自殺で亡くしていれば喪失感は計り知れない哀しみで埋め尽くされていただろう。
美しさの源泉は美しさではなく、哀しみだったんだろ。
自分自身を支えているものは他者ではなく、後悔と懺悔。モチベーションなど糞の役にも立ちはしないのだ。自分自身を支えるのは哀しみだったんだろう。
 
誰かが言ってた。
長い時をかけての自殺なのだ。
彼の死は…
 
しかし、50枚ぐらいか?彼のレコードは。
僕はその内の2枚を持っている。
そのレコードを聴くたびに思うだろう。
 
なんて美しいのだ!と、

愛する女のために危険を冒す男はバカなのだろうか・・・

2019-05-06 | 映画

自己満足の極みと誰もが口をそろえる。

カサブランカのニックの事だ。

単なるお人よしの男にしては骨が在りすぎるし、人の話などハナから聞くつもりもない。頑固者。

愛する女のために、敢えて危険にその身を晒す。

なぜか、

損得で勘定すれば結論は火を見るより明らかだ。

映画の事だから、物語になりやすいのだろう。

愛する女を幸せにするために勝算の低い戦いに臨む男。

この映画が作られた時代では、自己犠牲が町の駄菓子屋で買えた。

ここまでは、映画のネタとしてはよくある話。

しかし、愛する女が他の男を愛していると知りながら敢えて危険を冒す・・・・

更には、他の男を愛していると思っていたが、そうではなく自分を愛している。

そんなことが判ってしまったら、普通ならハッピーエンドで終らなくてはならない。

このカサブランカは、そうではないのだ。

 

誰だって人にバカと呼ばれたくはない。なのにだ・・・・

で、思った。

こんな大馬鹿野郎の話でありながらカッコよく見えるのはボギーしかいないんだ。

よれよれの爺様。ハンフリー。

不精ひげがお似合いのボガード。

 

ラストシーンは明日のことなど全く考えない。行動を起こした後、明日はどうするか考えよう、なんてことは・・

いずれにしても、彼は最初から自分自身を捨ててしまっている。

死に場所を探し求めている老人のようだし精気などという胡乱の気配はないに等しい。

歳をとればこれぐらいの渋さは誰にだって漂うのだろうか?

そう、欲がなくなってしまうのだ。

今更ながらに、ややこしい友人などはいらないわけだし、

女など面倒くさくて付き合ってなんかいられないのだ。

 

孤独死を恐れ、俄かに周りの人々に優しさを振りまくなど、

逆立ちをしてもできやしないのだ。

あきらめる。潔く、何もやらないことだ。

 

この映画を最初、観た時には思ったものだ。

こんな野郎なんてのは、この世に存在するわけがないだろうに・・・と。

リアリティない映画なんて面白くもない。

 

しかし、今は違う。

この映画は何回目だろう、観たのは。

いちいち数えていいないくらいに観てしまっている。

 

迷ったとき、そう、何事か選ばなくてはならない時、

集中して結論を急ぐ時に限って観てきたようだ。

 

バカな選択をすればするほどに、気持ちが安らぐ。

自分自身を愛おしく感じることができたからだ。

自己愛は嫌悪の対象。そう考えていたからだ。

 

そう、自分自身を愛してやらなければいけないのだ。

でないと人生が愉しくならない。

 

そんなことにやっと気が付き始めた。