病室が10日目にして変わった。
窓の下を覗くと中庭が見えた。ちょいと日本じゃない雰囲気が漂っている。
日々頭痛が和らいでいる。そんな気分になったりもするけれど・・・・
ちょっと待てよ!
良くなってるなんて嘘っぱちだろ~!
この痛みは、ひょっとして「梗塞」か?
そんな恐怖に襲われる。
決まって真夜中過ぎの2時。
痛みどめの催促のためにナースコールをする。
そんな繰り返しの1週間。
一進一退。いい加減、根を挙げそうになる。
今の医療システムではすべてが「数値化」されていてここ最近では「見える化」も進んでいる。
しかし、スタッフ全員が共通認識できる代わりに、意外性に富んだ事態には誰も対応できなくなってしまっている。
そう、マニュアル通りにしか判断できなくなってしまっている。
EICUで過ごした一週間。そんな実感が心を過った。
繰り返しやってくる痛みに耐えかねて、ナースコールでその看護師はやって来る。
笑顔はない。心配そうな瞳がそこにあるだけ。
そして僕は言う。
「まだ頭痛がやまないんだ・・・・」
精一杯我慢してそう言ったんだ。
そして彼女は言う。
「どんな痛みきりきり?ガンガン?ズキズキ?どこが痛い?後ろ頭?首筋????」
彼女以外の看護師は
「痛みの段階が10あるとしたらどれくらい?」
10の痛みなんて知らない。
痛みの度合いを知りたいのだろう。
であれば、さっきの痛みに比べて数字を聞いてくれれば答え易いんだけれどね・・・・
前での看護師は僕と同じように頭が痛い!そんな顔で僕から情報を得て
薬剤師と痛みどめの調合をする。
時間はかかる。
でも、数分後、ピタリ!と痛みは消える。
そして僕は眠りの谷に落ちていく。
寄り添うことの素敵さは演技力にあるのかもしれない。
すがる思いでナース呼び出しボタンを押す。
1時間前に押したばかりなのに・・・・
そんな後ろめたさが残っている最中なんだ。でも、痛くて我慢できないんだ。
その看護師は僕のちょっぴ控えめな気持ちを見透かしたようにしてやって来て言うんだ。
「我慢しないで、なんでも言ってくださいね。人の痛みはわからんいですからね」
そう言いながら、自分も痛そうな顔して僕に質問をする。
感情移入がうまいのかもしれない。
でも、僕は「愛」を感じてしまったんだ。
身体が弱っているからなんだろう。
そうに、決まっている。
藁をもすがる思いなんだから・・・・
愛されている・・・・そんな勘違い。
きっと、いや、たぶん、いや、おそらく・・・あるよ。
そして、痛みが消え、眠りに入る瞬間に
うれしそうに微笑みかける看護師の顔をかい間見ることになる。
癒しにもストーリーが必要なんだ。