12歳の時、バンドを組んだ。
フラメンコギターが好きでベロベロ一人で弾いていたら中学の女教師に声をかけられた。文化祭で弾きなさいよ。
とても嫌だった。でもその女の先生は思いの外粘り強く演奏する羽目に陥った。
一人じゃ嫌だと駄々をこねて仲間を、集めた。何人が舞台に上がったのかは覚えていない。結果は惨澹たるもので、誰も聴きになんか来なかったんだ。
酷く落ち込んだのは確かだった。僕はどうでもよかったのだが誘った友達のひとりがかわいそうだった。彼が一番うまかったからなんだ。暫くは口もきいてもらえなかった。そういえば彼もこの世にはいない。天才は若死するのが世の常だ。三十前半ぐらいで死ぬのがちょうどいい。美しく思い出として記憶に残ってしまうからね。60歳も過ぎて死ぬと、醜さしか残らない。周りの人たちの頭の中にはね。
そう、ライブの話しだ。
いまのメンバーとバンドを始めたのは60歳を超えてからだ。
ロック好きの50歳代と40歳の男が寄り集まって、歌や演奏の下手さに飽きることなくバカでかい音で70年代ロックを演奏する。聴いてる人のことなど目もくれずに演奏する。自分が死ぬほど好きな曲を、死ぬまでに一度だけみんなの前で歌いたい。そんな気分が共通項なのだった。
しかし、人間の関係は厄介だ。趣味の世界が故なのだ。好き嫌いが先行する。演奏のヘタウマなど関係なくて、会話の良し悪しが全てに影響するのだ。
鷹揚な気持ちが無くてはならない。にも関わらずストレスが重なってしまう。
簡単な話しなのだ。
そう、つまりはピンになるだけなのだ。