ルーツな日記

ルーツっぽい音楽をルーズに語るブログ。
現在、 フジロック ブログ と化しています。

コンゴの音楽

2010-10-29 17:55:29 | ワールド・ミュージック
今年日本でも公開された2つの映画。「ソウルパワー」と「ベンダ・ビリリ~もう一つのキンシャサの奇跡」。この2つの映画の舞台になったのが、ザイール/コンゴ民主共和国の首都キンシャサ。前者は74年にキンシャサで開催された音楽フェス「ザイール’74」を記録したドキュメンタリー。ジェイムス・ブラウン、B.B.キング、ビル・ウィザース、ザ・スピナーズなど、米黒人音楽の旗手達と、コンゴの大スター、フランコを始めとするアフリカ勢が同じステージに立ち、繰り広げられた白熱の3日間。このコンサートは、モハメド・アリ対ジョージ・フォアマンという歴史的なボクシング・ヘヴィー級タイトルマッチの前夜祭のような形で開催されたもので、試合前の下馬評を覆したモハメド・アリの勝利は「キンシャサの奇跡」と語り継がれることになりました。そしてもう一方の映画は、その「キンシャサの奇跡」からおよそ30年を経たキンシャサが生んだもう一つの奇跡。ストリート・チルドレンが段ボールの上で寝泊まりする街キンシャサで、ポリオという感染症のため車椅子生活を余儀なくされながらもバンドを組んで、ポジティヴに逞しく生きる人達。彼等スタッフ・ベンダ・ビリリが逆境を乗り越え世界に羽ばたく姿を追ったドキュメンタリー。

実はこの2つの映画は、時代やテーマが違えど同じキンシャサが舞台の音楽映画というだけでなく、もう一つ接点があるんです。実は「ザイール’74」には身障者用の席が設けられていて、スタッフ・ベンダ・ビリリのメンバーもこのコンサートを観に行っていたらしいのです。スタッフ・ベンダ・ビリリの音楽にファンクの影響が感じられる所以はその辺りにあるのでは?なんて言われたりもします。そんな歴史に残る音楽フェスと、新たなヒーローを生んだキンシャサは、実はアフリカ屈指の音楽都市でもあります。という訳で、キンシャサを中心にザイール/コンゴを彩ったアーティスト達をちょこっとご紹介。



VA / ROOTS OF RUMBA ROCK CONGO CLASSICS 1953-1955
コンゴと言えばルンバ。ルンバと言えばキューバ。そんなキューバからの影響を色濃く感じさせるコンゴ産ルンバ誕生前夜の記録。監修はヴィンセント・ケニス(コノノNo.1を再発見&プロデュースした人)。アフロ・キューバンなリズムと、トロピカルなメロディー、華やかな楽器の音色。その明るくダンサブルな演奏の数々からは、ベルギーの植民地下におかれながら音楽に喜びを見いだしていたかの地の人々の姿をおぼろげながら想像させられます。そしてこの当時既にこれだけ多彩な音楽がコンゴに存在していた事実に驚かされます。



VA / LES MERVEILLES DU PASSE
グラン・カレ~フランコ~ロシュロー~パパ・ウェンバと繋がるルンバ・コンゴレーズ/リンガラ・ポップの歴史を紐解くコンピ盤。グラン・カレ(ジョゼフ・カバスル)率いるアフリカン・ジャズの60年代初頭の録音を聴けば、そのギターとホーンのアンサンブルや、洗練されたコーラス・ワークから、まだまだ土っぽかった「ROOTS OF RUMBA ROCK」の時代から確実に飛躍していることが実感できます。そして新たな時代を切り開いた、フランコ&OK ジャズとロシュロー&アフリカン・フィエスタ。ドクチュール・ニコのハワイアンなギターも素晴らしい! ちなみにフランコとロシュローは「ザイール’74」にも出てたりするんですよね~。コンピの最後を締めるのはパパ・ウェンバを擁するザイコ・ランガ・ランガ。ルンバ・ロックの帝王パパ・ウェンバの登場で終わるという構成も秀逸。ラテン、カリブ、ハワイアン、ジャズ、様々なサウンドを吸収しながら、アフリカ土着の音楽として発展、隆盛したコンゴ産ルンバの貴重な初期音源の数々。


FRANCO / FRANCOPHONIC Vol. 2
コンゴ音楽の最重要アーティストは誰か?と問われれば、やはりフランコですよね。映画「ソウル・パワー」でのまるでコンゴ代表的なオーラを纏った貫禄のステージも印象的でした。そのフランコと彼が率いるT.P.OK ジャズ。彼等の80年代の録音を収めたのがこの「FRANCOPHONIC Vol. 2」。フランコにとっては晩年に当たるこの時代ですが、脂の乗った成熟された歌と演奏が楽しめます。1938年、キンシャサに近いソナ・バタで生まれ、56年にOK ジャズを結成。70年代中頃にバンド名をT.P.OK ジャズと改名したそうです。歌だけ聴いてると洗練されたアフリカ流3分間ポップスのようにも聴こえますが、ほとんどが1曲10分を超える長尺曲。歌を聴かせると同時にあくまでもダンス音楽として存在していた、かの地ならではの土壌を感じずには居られません。ポップなメロディーが徐々にトランス感を帯びてくる17分越えの「Bina Na Ngai Na Respect」が圧巻。また大ヒット曲「Mario」の鄙びたメロディとラップが交差する様などは、スタッフ・ベンダ・ビリリへの直接的な影響も感じさせます。フランコは89年に腎不全により亡くなられました。


PAPA WEMBA & VIVA LA MUSICA / MWANA MOLOKAI : THE FIRST TWENTY YEARS
1949年生まれのパパ・ウェンバことジュング・ウェンバディオ・ペネ・キクンバ。69年にザイコ・ランガ・ランガに参加し、若きロック世代による新しいルンバ・コンゴレーズを持って颯爽とシーンに登場しました。そして独立後に結成したのがヴィヴァ・ラ・ムジカです。今作はその77年の活動開始から97年までの20年間を追ったベスト盤。1曲目「Mère Supérieure」の中盤から、カオスを濃縮したような弾けっぷりにやられます。やはりヴィヴァの結成が「ザイール’74」以降と言うこともあり、そういう意味でもジェイムス・ブラウンからの影響を感じてしまいます。特にそれは初期の録音に顕著。表面的な音楽性がJBに近いと言うのではなく、発散される熱のようなものと言うか、その発散の仕方にJBのような野生を感じるんですよね。「Loni」とか「Analengo」とか、生で聴かされたら踊り狂っちゃいますよ!また、「ザイール’74」にはキューバからサルサの女王セリア・クルースが出演していましたが、ヴィヴァ・ラ・ムジカというバンド名は、サルサの有名なアルバムにちなんだものだそうです。


KONONO NO.1 / ASSUME CRASH POSITION
04年作「CONGOTORONICS」で一躍話題になったコノノNo.1 が今年リリースした最新作。アフリカの素朴な伝統楽器である親指ピアノをアンプに繋ぎ電化するというジャンクな荒技。そして複数の電気親指ピアノが複雑に絡み合い響き合いながら似たようなフレーズを永遠に紡いで行くサイケデリックなトランス感。まるでコンゴが現代に生んだ突然変異のようなこのバンドですが、結成は意外に古く、1969年だそうです。しかも中心人物のマワング・ミンギエディは33年生まれだそうですから、なんとあのフランコより年長ということになります。そして彼等の音楽のルーツは、コンゴとアンゴラの国境地域に住むバゾンバ族の伝統音楽だそう。恐るべしコノノNo.1 です! そんな伝統的な泥臭いスタイルと、それをただ増幅したい!という欲求のみが爆発したようなその音楽は、ある意味、多彩なスタイルを吸収しモダン化したルンバ・コンゴレーズとは対局にある音楽かもしれません。ですがルンバ・コンゴレーズのエレキ・ギターなんかは親指ピアノの延長上にあるようにも感じられますし、やはり根っこでは繋がっているということですね。


STUFF BENDA BILILI / TRES TRES FORT
そして新たなヒーロー、スタッフ・ベンダ・ビリリ。演奏自体は素朴でフォーキーな香りがしますが、複数のシンガーとラップのような煽りが混ざるスタイルは、ルンバ・ロックの流れを汲むと言えるかもしれません。そして何より躍動感溢れるリズムですよ! キンシャサの雑踏や、そこで生きて行く上での苦しみ、悲しみ、怒り、希望、喜び、全てが込められたような音楽。そして彼等を知るには映画「ベンダ・ビリリ~もう一つのキンシャサの奇跡」がまだ公開中なので、この映画を観ることが一番! 彼等の生き様はもちろん、カオティックなキンシャサのストリートや、そこで暮らす人々のパワーに圧倒されます。もちろん先日の来日公演も素晴らしかった!



「ソウル・パワー」からフランコ&OK ジャズのパフォーマンス↓
http://www.youtube.com/watch?v=3CsKhpm7Wvg&feature=related

「ソウル・パワー」からロシュローのパフォーマンス↓ っていうか女性ダンサーが凄い。
http://www.youtube.com/watch?v=-f4NEk0idMY&feature=related

パパ・ウェンバの「Analengo」。Tokyo may.31.1986 と記されていますから、初来日時の映像ですかね。いや~、これはロックですよ!
http://www.youtube.com/watch?v=uiw-xu8gYbA

09年のSONARに出演したコノノNo.1のようです↓
http://www.youtube.com/watch?v=us9Fv7ywLBg&feature=related

スタッフ・ベンダ・ビリリとオランダの管楽団との共演。格好良いっす↓
http://www.youtube.com/watch?v=eqga1CmJKBU&feature=related




~関連過去ブログ~ お時間有ったらぜひ!

 10.10.19 WORLD BEAT 2010 @日比谷野外音楽堂
 10.09.24 スタッフ・ベンダ・ビリリ@ユニセフハウス
 10.09.20 ベンダ・ビリリ@イメージフォーラム