<まぁ、僕から闘争心を取ったらなにも残らない。闘争心だけが取り柄なんだ、監督になったからって、いきなり変わるものじゃないと自分に言い聞かせてはいるのだが……。ともかくそういう前歴がある。毎日でも献血できるくらい、血の気が多い。だから試合中に青筋立てて怒鳴っているのは、僕の性格そのままではある。>
<僕は日本人は、根本的にインターナショナルなスポーツには不向きだと思う。和を尊重する心とか、勤勉さとか、農耕民族の美徳はある程度はチームスポーツにむいている。しかしそれもある程度までで、超一流になるには、狩猟民族の激しさがなければいけないのだ。(中略)読売クラブには早くから外国人選手が多くいて、僕は子供のころから狩猟民族流の主張の強さに免疫があった。(中略)プレーだけじゃなく、ファッションひとつとっても、なにか自分をアピールしているようなヤツが多い。ヴェルディの強さの一端には、ほかの日本のチームにはない狩猟民族的な部分があると思う。(中略)ガンコなそば屋が、客にブツブツ文句をつけながら、絶妙なそばをうつようなものだ。「タレをそんなにつけるんじゃねえよ!」「静かに食えねえんなら、ヨソへ行ってくんな」客はオヤジのそんなうるささに閉口しながら、それでもそのそば食べたさに店に足を運ぶ。>
<いつだったか現役時代、夏の伊豆キャンプの打ち上げの宴会などはすごかった。だんだんいい気持ちになってきて、服にお酒をこぼしてしまった。どうもぬれたままじゃ居心地悪い。バーッと全部脱いで、スッポンポンになってさらに飲み続けた。そのうちに、ほかのみんなが服を着たままなのがどうも気に入らない。「オレたちは、ハダカの付き合いじゃねえか。みんなもスッポンポンになって飲め!」と、わけのわからないことをいいだした。酔っ払いの論理なんて、こんなものだ。このキャプテン命令(当時僕はキャプテンだった)に、1人、2人と裸になり始め、しまいには全員スッポンポンで宴会を続けた記憶がある。いうまでもないが、スッポンポンというのはフルチンだ。(中略)そういう性分だから、いまだって勝った負けたとみんなで騒ぎたいのはやまやまだ。>
<ブラジルの連中にキャッチボールをやれといっても、考え込んでしまうだろう。なにしろ、野球という文化がないのだから。たとえ野球をブラジルに輸出して、盛んにプレーされるようになっても、日本の野球に追いつくためには、かなりの時間がかかるだろう。極端な話、もし“世界箸使い選手権”をやったら、よその国がどんなに厳しい練習をし、どんな優秀なコーチを招いても、日本の優位は動かない。伝統とか、文化というのは、そういう力がある。>
(松木安太郎『吼えろイレブン』1994年講談社より)
<僕は日本人は、根本的にインターナショナルなスポーツには不向きだと思う。和を尊重する心とか、勤勉さとか、農耕民族の美徳はある程度はチームスポーツにむいている。しかしそれもある程度までで、超一流になるには、狩猟民族の激しさがなければいけないのだ。(中略)読売クラブには早くから外国人選手が多くいて、僕は子供のころから狩猟民族流の主張の強さに免疫があった。(中略)プレーだけじゃなく、ファッションひとつとっても、なにか自分をアピールしているようなヤツが多い。ヴェルディの強さの一端には、ほかの日本のチームにはない狩猟民族的な部分があると思う。(中略)ガンコなそば屋が、客にブツブツ文句をつけながら、絶妙なそばをうつようなものだ。「タレをそんなにつけるんじゃねえよ!」「静かに食えねえんなら、ヨソへ行ってくんな」客はオヤジのそんなうるささに閉口しながら、それでもそのそば食べたさに店に足を運ぶ。>
<いつだったか現役時代、夏の伊豆キャンプの打ち上げの宴会などはすごかった。だんだんいい気持ちになってきて、服にお酒をこぼしてしまった。どうもぬれたままじゃ居心地悪い。バーッと全部脱いで、スッポンポンになってさらに飲み続けた。そのうちに、ほかのみんなが服を着たままなのがどうも気に入らない。「オレたちは、ハダカの付き合いじゃねえか。みんなもスッポンポンになって飲め!」と、わけのわからないことをいいだした。酔っ払いの論理なんて、こんなものだ。このキャプテン命令(当時僕はキャプテンだった)に、1人、2人と裸になり始め、しまいには全員スッポンポンで宴会を続けた記憶がある。いうまでもないが、スッポンポンというのはフルチンだ。(中略)そういう性分だから、いまだって勝った負けたとみんなで騒ぎたいのはやまやまだ。>
<ブラジルの連中にキャッチボールをやれといっても、考え込んでしまうだろう。なにしろ、野球という文化がないのだから。たとえ野球をブラジルに輸出して、盛んにプレーされるようになっても、日本の野球に追いつくためには、かなりの時間がかかるだろう。極端な話、もし“世界箸使い選手権”をやったら、よその国がどんなに厳しい練習をし、どんな優秀なコーチを招いても、日本の優位は動かない。伝統とか、文化というのは、そういう力がある。>
(松木安太郎『吼えろイレブン』1994年講談社より)