理化学研究所と京都大学の研究チームは、地球上に存在する金やウランなど鉄より重い元素が、中性子星合体によってつくられたものである可能性が高いことを明らかにした。
水素やヘリウムは宇宙の始まりのビッグバンにより生成され、それより重い鉄までの元素は恒星内部の核融合により生成される。レアアース、金やウランなど鉄よりさらに重い元素は、大量の中性子の核融合により生成されると考えられている。
しかし、その大量の中性子の核融合がどのような天体現象によるものなのかについては、長い間明らかにされていなかった。それは中性子星合体によるものであるとする説があるが、これまでの研究によると、放出される物質のほとんど(90%以上)が中性子であるために非常に重い元素だけがつくられると考えられ、太陽系や他の恒星で観測される重元素組成を説明できないことが問題となっていた。
共同研究チームは、東京大学などのスーパーコンピューターを用いて、一般相対性理論とニュートリノの影響を考慮した場合の中性子星合体の数値シミュレーションを行った。
その結果、中性子の一部がニュートリノを吸収して陽子に変わるため、中性子の割合が60~90%程度にまで減少することが分かった。
この数値シミュレーション結果をもとに元素合成の数値計算をしたところ、観測による太陽系の重元素分布とほぼ一致していた。
これにより、今まで明らかにされていなかった金やウランなどの鉄より重い元素の起源が、中性子星の合体である可能性が高いことが示された。