アルマ望遠鏡が、天の川銀河中心付近にある特異な分子雲のこれまでにない詳細な構造を捉え、その運動を解析したところ、太陽の3万倍もの質量を持つブラックホールの存在が明らかになった。
この結果は、天の川銀河の中心付近にこのようなブラックホールが他にも多く潜んでいる可能性があることを示している。
今回、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の竹川俊也特任研究員と慶應義塾大学理工学部物理学科の岡朋治教授らの研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、天の川銀河の中心核「いて座A*(エー・スター)」から約20光年離れた位置に発見された異常な速度を持つ分子ガス雲について、高解像度の電波観測を行った。
そして、この分子ガス雲は複数のガス流から成り、それらが「見えない重力源」に強く引っ張られるように公転運動をしている様子を捉えた。詳細な運動解析により、太陽系よりもずっと小さな領域に太陽の3万倍にも匹敵する莫大な質量が集中していることが明らかになった。このことは、天の川銀河中心核の近くに重い中間質量ブラックホールが漂っていることを強く示唆する。
同研究は、超大質量ブラックホールの起源解明や銀河進化の理解につながるだけでなく、周辺のガスの運動を調べるという、ブラックホール探査の新たな扉を開く可能性があるという点で極めて重要な成果。
アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)は南米チリ共和国北部、標高5000mのアタカマ砂漠に建設された電波干渉計。2011年に科学観測を開始し、日本を含む東アジア、北米、欧州南天天文台の加盟国と建設地のチリを合わせた21の国と地域が協力して運用している。