中島京子の『小さいおうち』を読んだ。直木賞受賞作。
昭和五年に尋常小学校を卒業後東京へ出て、老いるまで女中として過ごしたタキが、老後に回顧録の体裁で語るお話し。そのほとんどが平井家での出来事で、奥方の時子や子の恭一、平井家に出入り板倉さんなどと過ごした時のことを綴っている。戦前から終戦直後までのお話しがメインで、どれほど時代考証が正しいのかはわからないが、戦時下の雰囲気が感じられる。
タキの死後、彼女の回顧録のノートをみた甥の子が、漫画家イタクラショージ(板倉さん)の記念館を訪れ、平井恭一を訪ねて、当時起こったことを確認する最終章が秀逸。
|
構成が巧く、楽しく読める。幸せな読後感に浸れる作品だ。