今年の冬、ニックは愛媛交響楽団と四度目の共演をさせて頂く※。
プログラム二曲目の『ラロ・チェロ協奏曲』は、ニックの師ゴレゴリー・ピアティゴルスキーの得意中の得意曲。YouTubeで見れるかどうか知らないが、私はマル秘音源で聴いている。確かに師系を受け継ぐ演奏をニックはしている。ピアティゴルスキー先生の端正な歌心と、ハイフェッツ先生のぶっ飛んだグルーヴ感を受け継いでいる。彼らから直に肌で学び、長年努力を続けて育て、培って来たものだ。
その両方が一番よく表れる楽曲が、ラロのチェロコンチェルトではないだろうか?
ニックはラロの三楽章をアンコールとして弾くことを好む。こういうイメージをお客様に感じて欲しいんだ、とピアニストと話しているのをよく聞く。
薄暗いスペインの酒場。止まり木のスポットライトに一人の女。大きく開いたドレスの背中の汗。腿まで見せるスカートを翻し、女はゆっくりと立ち上がり踊り出す。音楽が高まると、女は口に咥えた赤い薔薇をかなぐり捨てて激しく踊り出す。
三楽章だけでもこんなにエキサイティングなのに、これを一楽章のバチカンの大聖堂みたいな壮大なフリ、二楽章の小馬になって草原を駆けるような夢心地、の後に聞いたら、もう興奮の坩堝!
是非生で聞いて欲しい。私はいつものように最前列にいます。何があってもすぐ駆けつけられるように。
※過去三度の共演曲
ロココヴァリエーション
ドヴォルジャークチェロ協奏曲
シューマンチェロ協奏曲
「余談ですが」
次はニックのブラームスダブル(ヴァイオリンとチェロ)か、ベートーヴェンのトリプル(ヴァイオリン、チェロ、ピアノ)がマジ聞きたいけど、そんなにソリスト雇えるわけないわなあ。宝くじ当たったら、愛響に寄付して実現させたいもんだ。そして最後に、エルガーのチェロ協奏曲を聞きたい。サン=サーンスはもう聞かない。(ニックの一生の内、これまでに2回心筋梗塞の発作が起きた。2回ともサン=サーンスのチェロ協奏曲を弾いている最中だった。)