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ミセスローゼンの上人坂日記

河内晩柑ソルベハッピーハロウィーン


以下、私の友人から聞いた話。

彼女の夫の学生時代の先輩夫婦が遠路遥々訪ねて来てくれた。仮に、引退した大学教授夫妻としておこう。彼女は初対面、年齢も一回り上なので緊張気味にお迎えした。奥様から手渡された名刺大のカードの裏表に細かい字でびっしり食物アレルゲンが印刷されている。たとえば、醤油の製造工程で原材料の小麦はアレルゲン性が無くなると言われているがたまに具合が悪くなる事もあるので、グルテンフリー醤油と明記されない限り摂取できない。大豆と米以外の味噌汁はNG。豆腐はOKだが、揚げ出し豆腐など、調理過程に小麦が使用されるとNG、唐辛子、茄子、じゃがいも、ピーマン、コーン、乳製品はNG、麦茶NG‥‥‥。
明朝九時に我が家で朝食を、と夫がお招きするのを聞いて、友人は焦った。普段は夫がコーヒーを豆から挽いて淹れ、手製のパンにバターやジャム、夫の作るオムレツにベーコンやソーセージというアメリカンブレックファーストで、友人は綺麗にお化粧してニコニコしていればよいのだが、今回はパンもパンケーキもオートミールも不可。友人が和食を出さねばならない。段取りを考えに考え、万が一にも食材にアレルゲンが混入していたらと気が気でなく眠れなかった。翌朝目覚めると、時計は九時十分、居間に既に夫と客人夫妻が座っている。オーマイガーッ!! 

「なんで起こしてくれなかったの?!」

「あまりによく寝てたので起こせなくて」

はあ?! そんな優しさは今いらんのじゃあっーー!!! 

と友人は叫びたかったが、客人がもう目の前にいるので怒る事も出来ず、ネグリジェのボサボサ頭のスッピン眼鏡で鍋に昆布を入れて弱火にかけ、米を洗い始めた。悪夢なら今すぐ覚めて、と友人は思ったそうだ。幸いアレルギー発作は起こらず、塩ジャケ定食風朝食は無事済んだそうだ。世の中の夫達は大なり小なりこのような間違った時に最も間違った優しさを示す事が多々ある。心の底から友人を気の毒に思った次第である。




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