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ミセスローゼンの上人坂日記

老人の待ち焦がれたる春吹雪

高山病にかかった。
着いた日はなんともなかった。翌日も平気やった。それで安心して、ボブおじさんのキャビン(写真)へ登った直後、具合が悪くなった。今思えば酸欠だった。夜になって激しい頭痛、そして吐き気、悪寒。つわりよりひどい。いつか酔っ払って飛行機に乗って味わった地獄と、寸分変わらない地獄をふたたび味わってる。もう二度と飲んだら乗らない、と心に誓うくらい後悔したのに、またすぐ同じ目にあうなんて信じらんねー、飲んでないけど、乗ってもないけど、どういうことー、もしかして今度こそ私死ぬんかーと心の中で日本語で叫び、「死ぬーもうすぐ死ぬー」と英語で叫んだ。すると、楼前先生がアスピリンをくれた。で、それ飲んで寝た。だけど激しい頭痛ですぐ起きた。すると、先生はまたワインテイスティングに出かけてた。「行ってもいいですよ、あなたがもし行きたければ」とは言ったが、病人置いて本当に行くとは。よほど行きたかったのだなあ。
ワインテイスティングは毎晩ただで、チリ中のヴィンニャードから代表がかわりばんこに来て宣伝に励んでる。気に入れば金持ちが箱で買うからである。買わないで、ただワイン飲みに来る貧乏スキーヤーがほとんどだけどね、今の時期。
濡れタオルを窓から垂らして一分も待てば氷タオルができる。それで二枚のタオルを交互に凍らして頭を冷やして、アスピリン飲んでしのぐ。夜から吹雪になる。吹雪を聞きながら、「おしんも、このくらい辛かったのかな、やっぱり」などと思う。
翌朝九時、ドクターが来るなり診てもらう。待合室にいるのは足の捻挫が三人に高山病が二人。高山病らしい男性の話を聞けば、まったく同じ症状(激しい頭痛、悪寒、吐き気、だるさ)で、ちょっと安心する。診察の後、酸素を吸入するとだいぶ楽になる。スペイン語しか喋らないドクターが、さらに薬を二錠、手ずから飲ましてくれる。飲むなり、おーまいがーーっと幸福感が押し寄せる。頭痛も吐き気も消えて、つか、幸福感に飲み込まれて楽になる。手足がじんじんして、(アンドリューと)抱き合ってタンゴを踊りたくなる。医者に行く前に楼前先生が、「二錠でますから、一錠は熱さましで、もう一錠は幸福になる薬ですから、ふふふ」と、こんなときつまらんジョークをいいよるなあと思ったら、まじやった。先生も昔高山病に罹ったのか。まじやばいこれ。
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