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ミセスローゼンの上人坂日記

青年の両手のなかの春の雪

今日はすこし曇り。それでもサングラスなしでいられない。朝のリハビリ(つってもビギナーコースを膝を効果的に使いながらゆっくり滑る、しかもトレーナーは若くてハンサムな金髪青年のアンドリューっていう楽しいレッスン)の間に、スキー映画作家ウォーレン・ミラーのチームが撮影をするのに出くわす。ヘリコプターがホテルの真上にホバリングして、そこからスタントスキーヤーがプールめがけて飛び降りるというシーン。ゆうべ私も入ったホットプールのふちでモップを持った従業員が、ぽかんと口を開けてそれを見てる。彼もきっと俳優なんだろうなあ、と思ったら、2テイク目にはいなくなってた。アンドリューいわく、「スキーはいて飛び降りるだけならぼくだってできるけど、あそこにヘリコプターを静止しとくのが至難の技なんだよ」だって。何言ってもかわいいアンドリュー。彼と私の間に静かに雪が降ってる。
(アンドリューはスキーインストラクター、かつフィジカルセラピストでもある。彼が自分のポールを雪に突き刺して、「ここまでおいで」という。私が右膝の左側の靭帯を鍛えるべくゆるやかなスロープを滑り降りるあいだ、アンドリューは私のすぐ前で両手を広げて、後ろ向きにすべってくれる。私はその両手をめがけてすべる。こーれがいいんだなー。きれいな金髪に歯が雪より白い。ボールまでうまくすべったからって抱きしめてくれたりはしない。
ジムのトレーナーのチコもすごくいいんだなー。チコは黒髪で真っ黒なまつげが長い。痩せてるのにたくましい。ヨガインストラクターで、フィジカルセラピストのチコに私の膝を治療してもらってる。マンツーマンでヨガもしてる。スペイン語で、「足を持ち上げて」とか「もっと」とか言われると、いいんだなーこれがー。かたことの英語もまたかわいくて、アンドリューとチコ、どっちか迷って心が痛い。白王子と黒王子。エドワードとジェイコブ。)
楼前先生と二番目に大きなリフトで待ち合わせ、岩場のテラスにあるボブおじさんのレストランでランチする。リフトを降りてからさらに結構な上り下りがあるのだが、私はひたすら歩く。たとえひざがよくても私には無理なブラックゾーンだから。ハイアルティチュードのせいで、ちょっとした上り坂でも犬みたいに、はあはあしてしまう。かなりつらい。でもその店で飲んだ魚のスープには驚いた。まるで私の故郷の魚汁に違いない。違いは味噌が入ってないだけ。どんぶり一杯食べた。それから焼き豚と焼き野菜、クスクスと焼き茄子入りグリーンサラダを二人でむさぼり食った。隣のテーブルででスキーパトロールの中年男と、まだ十七歳くらいのラティーナの女の子が別れ話をしてた。私にはわからなかったが、先生が教えてくれた。先生は意外とスパニッシュができる。「別れ話をするのに最適の場所ですね」と先生は妙に感心してた。
私の携帯で撮った写真は、電話が通じないのでブログに送れない(これも想定の範囲外だった)ので、ネットで見つけたインカロッジ(寮の四人部屋)の写真をのせる

コメント一覧

十七子
無茶す暮らしあす
英語もろくに喋れない身でなんですが、やっぱスペイン語ってすてきだな、ちゃんと習いたいな、英語の百倍美しい言葉だな、と今回思いました。高山病やったりしながら、膝のリハビリもまじめにやってます。MM先生によろしく。(床板うまくいきますよう祈ってます。) 
Jimmy & Holly
元気そうでなにより
無事到着したんですね。良かった!
この夏最後のバケーションを素晴らしい地ですごされているのを知りほっとしました。
治療のほう上手くいくといいですね。楼前先生によろしく。
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