最近、向田邦子の『阿修羅のごとく』のリメイク映画を見たので、懐かしくなってこれも見た。市川崑監督作品『細雪』。
谷崎潤一郎は小説『細雪』に色々な要素を盛り込んだ。最も言わんとする事は、いずれ時代の変遷(戦争、復興、グローバリゼイション)という波の内に飲み込まれ、薄れ、雪の様に消えてゆくであろう「日本人特有の美意識」=「もののあはれ」への“哀惜の情”では無かっただろうか。あはれなるものの具現化であり、「細雪」の化身としての「雪子」が嫁ぐとき、義兄貞之助(石坂浩二)がはらはらと涙を溢す。まさに光源氏の涙の如く、美しき儚き生そのものへの愛惜の涙であろう。花の雨に始まり、細雪で終わる、これは日本映画の最高傑作の一つであると確信する。
ただぁ〜ヘンデルのオンブラマイフをなぜシンセサイザーにしたの!? 感動が半減すると言わざるを得ない。(シンセサイザーでしか表現し得ない楽曲も無論あるが、これはオケでしょう、生音でしょう!)
おまけ
興味深いことに、高浜虚子は、はらはらと泣かずに、からからと笑った。いずれ諸外国は、日本に独特の俳句という季節を愛で、生命を重んじる芸術がある事を知って驚くであろう、と予見している。