ニックが外人向けのホテルウェブサイトで見つけた最安の宿に泊まっている。しかも貯まったポイントを使ったら支払いは¥0。宿の人に儲けがあるのだろうか。ウェブサイトには、「共同トイレが臭い」というコメントが上から下まで並んでる。到着してみると、小さい婆さんが一人で切り盛りしている宿だ。半年に一度しか掃除機かけなくても、シーツ洗わなくても、トイレが年中臭くても仕方ない、と妙に納得。持参したタオルで枕を巻き、顔が当たる布団の部分を覆えば寝れる。宿に風呂は無く、駐車場を突っ切って、公共の温泉に入りに行く。その辺のスキー客はアフタースキーをそこで暖まるようだ。婆さんの宿から来たといえば百円安くなる。マッサージチェアーも足揉みも百円。露天風呂は温くて入って居られないが、湯口に降る雪で一句詠むまで今日は粘った。ニックには中の湯は熱過ぎ、露天風呂がちょうどいい。お菜は朝晩とも冷え切ってるが、白菜の味噌汁とご飯は暖かい。高校時代の下宿を思い出す。下宿生の弁当箱には白飯ぎっしりと小梅が一ヶ、横にちょろっと糸コンニャクが付いてた。ニックにそんな懐かしさは無いだろうに、漱石の「坑夫」の宿に比べたらこれでも贅沢なくらいだよな? などと言いつつ楽しんでる。今宵の夕飯には冷酒のお猪口もサービスについた。もしかしたらクリスマスだから? これが今年のクリスマスディナー?と思ったら侘しくて叶わんが、この酒はやたらと旨い。一人で来てたら、升で受けるグラスか何かでもう一杯か二杯、貰ってるとこだ。ニックは美味しいものを食べる時だけ美味しいお酒を飲む。日本的な飲み方はしない、睨み豆腐とか金輪際あり得ん。