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ミセスローゼンの上人坂日記

肩組んで写真とられし雁渡し


弓子が微熱、鼻水、喉の痛み、で新学期早々休む。昼ごろ、息がしづらいというので、新型インフルエンザの兆候かとびびる。あるいはフルショットの副作用か。
(セロレッスンに来られた朗善先生はお見舞いを言いに部屋をのぞかれたが、弓子は眠っていた。途中、弓子のエチュードを先生は弓子の部屋の方向に向けて弾き、この曲を練習したおかげで親指を痛めたよ、と言われた。シャープペンシルの頭についている消しゴムだけを文具コーナーで、さりげなく調達する話が面白かった。)
弓子の寝ているそばで、しぶとく本棚を組み立てる。残り三台。けっこう分厚い板なので、作るのも、持ち上げるのも、よほど根性がいった。カラテの人たちなら軽いだろう、と思った。途中ハンディマンが来て、オーブンをこじ開け、落としたピザを取ってくれる。ぬるりと滑って鉄板の下に落ち込み、オーブンを使うたび燃えて煙が出てブザーが鳴ってた。一度など消防車が表通りへ走ってきて止まった。我が家の煙を感知して来たのか、別件か、わからずじまいだったがびびった。鉄板の取り外しの過程で、ドアの開閉が悪くなったので、また明日来るという。 夜になって弓子が起きてきて、鮭茶漬けを食べる、と言う。カウンターの中から鮭茶漬けの小鉢を出すと、酒飲みのように箸をそろえて小鉢を持ったまま茶を啜る。お茶ばかり吸ってご飯を食べない。食べたら寝なよ、と言っても、親戚の茶飲み話みたいに、だらだら話し込んで行かぬ。結局一時間以上、パーカッションのクラスがどんだけ面白いかなどと話す。(ライ麦畑の)ホールデンはゴールデンだね、と言うのが弓子の口癖。
弦子は今日遠足で、自由の女神の足の台座へ上りに行った。天辺まで解禁になったという話だったが、結局は上れなかったらしい。行き帰りの船で友達と追いかけっこしたのが楽しかったという。雨には合わなんだ。階段を上がり降りして足が疲れたか、弦子は七時から寝てしまう。本棚ようやく完成する。三つの部屋とも一挙に本が片づく。四季介が帰ったら驚くであろう。
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