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ミセスローゼンの上人坂日記

我が宿の氷柱の光かとおもふ

友達ができた。名前はカリーナ。十二歳。すでに素晴らしい美人だけど、歯がちょっと出っ歯。そこがまたかわゆい。スキーブーツをはくベンチで一緒になって、彼女のほうから話しかけてくれた。でも、カリーナの知ってる英単語はハローとサンキューとグッバイくらい。私が英語で話して、彼女がスパニッシュで話す。言葉なんていらないってーのはまあ言ってるだけで、ふつうは言葉がとてもだいじ、コミュニケーションの基本。そこで役に立ったのが、弓子や弦子たちが子供の頃使ったスペイン語学習の教材。彼らといっしょにそ私もそれを楽しんだ。そのとき覚えた、ありったけのスパニッシュをカリーナに言ってみた。
ブエンディーア
コモエスタス
ムイビエン
コモテリャマス?
メリャモ トナコ
デドンデビエネ?
デハポン
ウノ、ドス、トレス、クワトロ、シンコ……って数も一緒に数えた。
一番受けたのが、カリーナのスキー帽についてた小猫をゆびさして私が、「エルガトー」と言ったら、カリーナが「ハローキティ」と答えた。その猫はハローキティじゃなかったけどね、世界中の子供がキティちゃんを知ってるんだなあ。
今日はゲストのためのスキー大会が、ホテルのそばの丘で催される。
カリーナは11時の部に出場する。ゼッケンのナンバーは、トレインタ・シンコ。
「ええと、35だね。きっと見るから、応援するから」とそれは、英語で言った。伝わったと思う。
私のリハビリを終えて、スキーをはいたまま丘の上のカフェへ行くと、ぎりぎりでカリーナのスタートに間に合う。カリーナの名前が呼ばれ、回転競技のスタート地点に彼女の真っ白なスキーウェアと黄緑色のかっこいいチェアースキーが見える。背後に彼女の先生がついてる。車椅子スキーに結んだロープをしっかり握ってる。でも滑るのは彼女自身だ。先生は万が一のために付き添ってるだけだ。カリーナがゆっくりスタートする。加速して、最初の左カーブをかなりのスピードで左に傾きながら突っ込んでく。わあころぶんじゃないの、と思ったらカリーナはすばやく体重を移動、まっすぐ、そしてやや尾根に向かって傾きつつ右カーブに備える。私は手袋をぬいで手が痛くなるまで叩く。叫ぶ。ゴー、カリーナ、ゴー、ゴー。最後のカーブを曲がり終え、カリーナは頭を低く低く下げた。頭をぶんぶん振って、頭で漕ぐようにラストスパートした。すごい。とてもいい記録。スペイン語わかんないけど、たぶん、チェアスキー子供の部の最高記録、とアナウンスされたように思う。
私たちのインカロッジに身障者のスキーヤー達の大軍団がいっしょに泊まってる。一本足スキーヤー、腕無スキーヤー、盲スキーヤー(アメイジング!)、みんな私よりずっとずっとうまいし、ブレイブ。雪(スキー)が猛烈に好きで、なんというか、無礼ぎりぎりで言わしてもらうと、雪の中でいつ死んでもいいと思ってる。末期の雪を楽しんでる。だけど、投げやりではない。また生きて、まだ生きて、町で働いたり、勉強したり、そんなこともちゃんと考えてる。スイッチが祭りモードに入って、また切れる。それが自由自在にできる。
とても自由で、うらやましくなる。卵の側っていうのは、こういう人たちの側。弱いけど強い。闇でも明るい。
楼前先生も老人の部に出場した。今回は同い年の大金持ちの強敵が一緒に出たので、金メダルは逃した。銀メダル。ふふ。

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ディエシーシエテ子
零的確定論
このコメントが私の記事(死生観)に対する共感(示唆)なのか、挑戦(反論)なのか、そんくらいわかりたいけど、高山病のせいか……今わかんないです。わかる人がいたら教えてポルファボール。
今言えることは、つか、いまさら遅いけど、「フェリース・クンプレアーニョス!クワレンタ・シンコ」、って、こんくらいしかないです。それと日本語もやっぱ美しい。

K
‡零的確定原理‡
【哲】0的確定論

『或質的な面が物理的に確定する場合の確定要素は【0】である。』


 【0特性】
◇絶対性
『拡がりが無い,』

◇不可分性
『分けられない,』

◇識物性
『存在の1の認識が可能, 即ち考えるもとの全てが【0】より生ずる, 但し質的な変化に対し絶対に保存ができない,』

◇変化性
『物による逆の確定が不可能な変化 (可能性の確立), 即ち存在の【1】を超越して変化する, 端的に言えば, 思考そのものの形は現象に含まれ, 視覚的現象等と共に常に変化する。』


 【0特性】が真理であるならば, 時間平面的視野は物的ではなく, 質的に変化していることになる。その根拠が,【0∞1】有の無限拡散性をもつ物による質の確定が不可能であること, そもそも確定する質が何なのかを知り得ない以上, 物理的確定論は絶対的ではなく類事的な確定であることである。


 零的確定論では一つの時間平面が, 拡がり無き【時の間(はざま)】に確定していると考える。同様に空間を考え,【空の間】に空間を置き, 絶対的変化を与える【質】を流し込む。つまり時間平面は, この表裏不可分の裏側の【絶対無】により0的に確定されることになる。


△無は有を含む。



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