我思ふ故に我在り雁渡し
弦子は、自己の自我が二年も前から目覚めていて、しかも自我との深い対話を孤独にしぶとく続...
門開けて人の待ちたる雁渡し
「初オーケストラ」 弓子が、今日初めてオケでチェロを弾いたよ、と話す。 あまり有名でない...
新涼や割れたる皿を片づけて
「退団」 見出しにこう書くと、宝塚を卒業した女優みたいでちょっと嬉しい。今日、コーラスの...
山中に金網のある葡萄かな
「ハイスクール二日目」きのうの朝と比べて緊張は同じだが、弓子はいつになく張り切って学校へ行った。わくわくして見えた。スマイルで見送ったら、スマイルバックして行った!今日はセロの初見...
パン屑の燃えたる秋の浄夜かな
「本棚」 本棚達が遅れて到着した。と書くと続けて、彼らは全員狂っていた、と書きたくなる...
長月の文豪に似し眉毛かな
「ゴリラのDNY」 弓子と二人でかばんを買いに行く。新学期(明日)から高校生。セロを背負っ...
常夜灯消え秋の日の始まりぬ
「朗善先生レッスン」 無伴奏セロ二番アラマンデを、弦子が勇壮に弾き終わったときなさったお...
秋風の町を見下ろす女かな
本の棚はまだ来ない。私の中で本の棚はすでに「ゴドー」と名づけられている。ゴドーを待ちな...
潮騒のごとく風鳴る町の秋
ダンボール箱がさらに七個空く。本の荷をひっくり返して、弓子の夏休みの課題図書を探し当て...
苦しみの坂を越えたし雁渡し
「くるねこ」高校時代の親友、Mっちゃんが、くるねこを教えてくれる。えらいおもろくて、慰められる。くだらないことだったと思うが、事情は忘れたが、昔それなりにシリアスに私が悩んでたとき...