GHQ焚書図書開封第194回
ー乃木将軍夫妻の自決~眞山靑果より-
無方法
小使が、学習院長乃木大将の居室や寝室へ、用をたしに入っていくと、大将は、
「私のことは私がする。呼ばなければ、来なくともよろしい。」
すべて自分の手で始末してしまう乃木大将だった。ある日、大将が小使室へツカツカと入ってこられると、小使が云った。
「何か御用でございますか。」
「ああ、茶が飲みたくてな。」
「お茶でございますか、それならお呼びくだされば、持ってまいります。院長閣下が小使室などへ、お出向きなるものでございません。」
日頃のシッペイ返しのつもりで、思い切って云うと。
「ウン、そうか、参った。私の室へ茶を一つ持ってきてくれ。」
ニコニコしながら、あわてて帰っていかれた。今まで頑固一方の院長閣下だとばかり思っていた小使は、全く心から服してしまった。
人を心服させるのに、方法はない。
第三幕 最期の日
その一 乃木邸、将軍居間
その二 同じく階下一室
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その四 邸内階下の一室
参考文献:「日本的人間」山中峯太郎、「乃木将軍」眞山靑果
2019/04/10に公開
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