放射線が健康を害し死にいたらしめる恐ろしいものだということ以外、我々のような一般人は放射線について何も知らない。
放射線と原発への恐怖はラディオフォビア(放射線恐怖症)と呼ばれている。この恐怖を社会に広めないため、政府は情報を一部隠すことで、住民をなだめる。
例えば、日本政府は、チェルノブイリ原発の事故を引合いに出し、放射線は決定的な破壊を人体にもたらすわけではないという考えを住民に吹き込んでいる。
国際原子力機関もこのような見解を持っており、その目的が原子力発電の発展であることは明白である。
しかし、ただ自分の学問的興味を満たしたいだけではない学者、研究者、医師たちは現在と将来の人類を憂いている。
そのような他者の苦しみに無関心ではいられない学者たちが、今回モスクワに集まり、「放射線が子供の人体にあたえる影響の生物医学的結果」という国際会議を開いた。
学者たちは、「ここ数十年で地球の環境は悪化している。その要因の一つに放射線汚染が含まれる。
環境汚染に決定的な負の貢献をなしたのが、1986年のチェルノブイリ事故だ。日本における福島第一原発の事故の結果がどのようなものになるのかはまだ予想がつかない」とのべた。
原発やその他の原子力機関の事故で発生する放射性同位体に汚染された地域に住む人々は、健康に高いリスクを負うことになる。
特に出産適齢期の女性と子供はその傾向が強い。それは汚染の度合いが低くても同じことだ。
チェルノブイリ事故から25年たった今でも、健康被害に苦しむ人々についての報告は数多くなされている。
放射線の性質については明らかでないことが多い。
なぜほんの少量の放射性同位体が大量の放射線同位体と同じかそれ以上に働くことがあるのか?なぜ放射線に照射された細胞を試験管にいれその隣に照射を受けていない細胞をおくと、その細胞は照射を一度も受けたことはないのに照射を受けた細胞と同様に異常化してしまうのか?今のところこれらの問いには答えを与えることはできない。
この細胞の異常化現象は「傍観者効果」と呼ばれている。
現在、学者たちは放射線により異常を生じた細胞は遺伝するのかどうかを研究中だ。
動物実験では、照射を受けた親の子は一度も放射線を浴びたことがないにもかかわらず、その兆候を見せた。
「傍観者効果」の研究は遺伝学において新しい地平を開くものになるだろう。
アメリカの『サイエンス』誌はこの発見を近年中でもっとも重要な10の発見の一つに数えている。
キエフ放射線医療センターのステパノワ博士は「ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人科学者によるチェルノブイリ原発事故後の数多くの研究は日本で役立てることができる」と述べた。
不幸にも世界で唯一の被爆国となった日本は、チェルノブイリ原発事故後、放射線由来の病気の診察と治療および予防に尽力してくれた。
「児童を放射能から護る会」のラリサ・バレーヴァ代表は、「日本は、我が国の学者と医者たちがチェルノブイリ事故後に通った道を歩まなければならない」と考える。
バレーヴァ代表は、「チェルノブイリと福島の事故後の経過には同じシナリオが待ち受けていると思う。
25年後のパラレル関係に両者はある。
我々がチェルノブイリ後につきあたった問題が日本を待ち受けていることはほぼ間違いないだろう。
その問題とは、甲状腺ガン、子供たちの罹患予防、内部被ばくなどである。
でも、私たちには今日までに蓄えた効果的治療法の臨床例がある」と述べた。
今日では、ガンの80パーセントが環境による原因で罹患することが証明されている。外部被ばくおよび内部被ばくは、ほんの少しの放射線量であっても3世代、4世代にわたって残存することになる。
会議では人類すべてを脅かしている問題がいくつかふれられたが、それについては「学問と技術」の番組で詳しく取り上げるつもりだ。
ソース ロシアの声 サハリンマン