「木下黄太のブログ」 ジャーナリストで著述家、木下黄太のブログ。

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【新潟・ガレキ阻止】本日予定の試験焼却は住民反対で延期→新潟市に焼却を中止するように行動を!

2012-11-27 12:11:34 | 福島第一原発と放射能

 僕もフォローしきれていませんでしたが、新潟でのガレキ焼却に関して、きのうから、大きく動きがありました。試験焼却を行おうとする新潟市に対して、反対している地元の住民や市民グループのメンバーらおよそ50人が集まり、入り口でバリケードを作り、トラックが入れなかったそうです。新潟市江南区にある亀田清掃センターに運び込まれる予定だったということです。

「11/26(月)17:30亀田清掃センター搬入予定のがれき搬入阻止できました。亀田、新田清掃センターともとりあえず搬入と試験焼却と中止です。地元住民はじめ50名がゲート前をふさぎ、副市長らと交渉。若林副市長に
周辺自治会との公害防止協定を遵守することを約束させました(今直面している基準値超過の鉛と水銀を含む焼却灰の問題と震災がれき受け入れについて協議の場をもつこと)。しかしまだ、若林副市長は「広域処理に理解を求めたい」とし、がれきは大槌町に返される訳ではありません。詰めと監視が必要です。
木下さんを新潟に呼ぶ会で動いていた人を中心として、がんばっています。」こういう書込みも頂きました。

 新潟市側は地元住民などの反対側と再度話し合う事になり、いったん搬入は延期しました。これは、新潟県知事が一貫してガレキの焼却に否定的であるにもかかわらず、新潟市などの複数自治体が、強行しようとしていた背景もあると思います。単独の自治体が強行したことが、住民に不安をもたらし、健康被害を招いた場合に、県がその応援をしてくれる状況ではなく、むしろ反対側に立っているのに、強行した場合、その市の責任、特に市長の責任は重いと言わざる負えません。

 こうしたことも配慮して、新潟市が強行しなかったことは評価したいと思います。逮捕者を続出させた、橋下市長の強権的なやり方とは雲泥の差です。新潟市長の方がはるかに見識が高いと思います。

 何度も書いていますが、ガレキの広域拡散は全く必要ありません。ガレキは宮城・岩手のエリアでほとんど処理のめどは立っています。仮設の炉で使われていないものさえあります。経済的且つ税金の効率的な運用の観点から考えても、広域処理はおかしいです。放射性物質の危険を考えたら、議論の余地はありません。

 しかも、これを推進した民主党政権が、単独で維持される可能性は、ほぼありません。どうなるにせよ、日本の政治体制は大きく変化します。ガレキの広域処理と言った、こんな馬鹿な話に丸乗りした結果、梯子を外されるのは、目に見えています。地元に残るのは放射性物質のみです。あり得る話ではありません。

 新潟市民、新潟県民は当然のこととして、全国から、きょうこれから、新潟市に電話して、ガレキの試験焼却をやめるように、告げて下さい。新潟市の試験焼却が中止にしていくことができるなら、大阪市に対しても更なる圧力になります。皆さんの声と力が必要です。よろしくお願いします。実際、この新潟市と電話で対応している女性から、下記のメールもいただきました。参考にしてください。

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はじめまして。木下さんのご活動にはいつも感謝しております。

取り急ぎまとめました。

新潟市のがれき処理に関する窓口は下記の通りです。

新潟市廃棄物施設課 

電話番号:025-226-1423 
FAX: 025-230-0660
電子メールアドレス:
haishi@city.niigata.lg.jp

いつも上記へ電話しています。昨日の試験焼却中止を褒めることで、がれきの受け入れ
自体を中止させることができればと思い、電話しました。

試験焼却中止へのお礼を言うと、明るい声でハイハイと受け答えしていましたが、「今後の
ことですが」と切り出し。とにかく燃やさないでくれということ、がれきを大槌町に返して
くれというと、担当者は慌てて「それは(試験焼却用に運んできた)今回のですね。今回
のだけですね。」と拒絶反応でした。それでもがれきの焼却を中止してと上に伝えて…と
話したら「ご意見として承ります」とのことでしたので、新潟市自体は延期したつもりしか
ないと思います。

とはいえ一旦止まったので、全国から「よくやった」との声がたくさんくれば、事態は変わ
るのではないかという推測もしています。(新潟市長は新潟日報のOBで、自称文筆家
です。)

新潟市廃棄物施設課で、××という担当者は非常に難物で、何が何でもがれきを燃や
したい人です。市民が反対すると、暴言まで吐くことがあります。

ここの責任者は樋口課長です。

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 さらに、この後は狂気の大阪市長との闘いになります。これも全国からの支援が必要です。ガレキをどうしても燃やしたいために、多くの人間を意味なく逮捕させるのが、橋下市長率いる人々のやり口と僕は思います。こうした人々との闘いが続きます。

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★先着150名様★テレビ・新聞が伝えない放射能汚染の現実。そして、日本の運命は…?

 

「あなたの大切な人は首都圏にいませんか?」

 

 

 

【12/8(土)木下黄太 講演 IN 大分】

 

 

 

 3.11から1年8か月が経過しました。大分県でも津久見の災害ガレキ受け入れが消滅したため、放射能問題への意識は薄らいでいるかのようです。そんな中、北九州市は9月より災害ガレキ焼却を開始。隣県ということもあり、大分県各地より、健康被害の声も聞こえてきます。

 

 しかしながら、日本の大手メディアは、この情報を伝えません。よって、気づいた人々や健康被害を実感した人々が西日本へと移住・疎開している現状があるものの、多くの日本人は、3.11以前と変わらない生活を続けています。今回は、このような放射能問題に最も詳しく、いち早く西日本への移住・疎開を呼びかけられている木下黄太さんをお迎えし、放射能汚染の現実とこれからの日本がどうなるかのか?余すところなく、ご講演いただきます。

 

この機会をお聴き逃しなく!

 

【開催日時】 2012年12月8日(土)14時30分~17時00分

 

【開催場所】 消費生活・男女共同参画プラザ アイネス(2F大会議室)

 

http://www.pref.oita.jp/soshiki/13040/

 

【参加費】   500円

 

★ご予約はこちら!★oita1208@gmail.com

 

 

 

*以下を入力し、メールにて、ご予約ください。

 

①お名前②予約人数③連絡先(確認のために連絡を行うことがあります)

 

④紹介者のお名前(紹介者がある場合のみ)⑤託児室の希望(ご用意しています)

 

*参加費は、当日、受付でお支払ください。主催:大地と子どもの未来を考える会

 

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小児科医のローゼン博士(IPPNW)「『WHOのフクシマ大災害リポート』の分析」正式な翻訳。後半。

2012-11-27 10:58:17 | 福島第一原発と放射能

後半部分の正式翻訳を掲載します。さらにあす、結論部分なども載せます。

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「WHOのフクシマ大災害リポートの分析」
アレックス・ローゼン(Alex Rosen)医学博士
ドイツ・ジュッセルドルフ大学付属病院・小児科クリニック
2012年9月14日

「ガンを誘発する放射能に『しきい値』はないという事実」を隠匿
WHOのリポートは、推算された実効線量が一定の基準レベル以下にあると主張してい
る。:例を挙げれば、住居でのラドン外部被曝の基準レベルは「年間の実効線量およそ10
ミリシーベルト」であるし、緊急時における計画被曝線量は「急性もしくは年間の実効線
量およそ20-100ミリシーベルト」である。従って(推算された実効線量の範囲では)危険
性をもたらすようなことはない。
WHOは、発ガンや他の放射線誘発の疾病に罹患するリスクが、被曝線量に比例して高まる
と謂う重要なインフォrメーションを隠匿しながら、なんらかの安全性を示唆しようと試
みているようである。
福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーである山下俊一は、年間100ミリシーベルト
の被曝量は、子供にとっても大人にとっても安全であると宣言するまでに至っている。:
そして、「ヒト被曝集団においては、ほんの僅かな線量増加でも或る程度の発ガン増加を
生じる。そのような増加は理論的には測定可能であるが、100ミリシーベルト以下の線量
では、統計的に微々たる重要性のないものであるから、過大なリスクの論議として考慮に
いれることは出来ない。」とも述べた。だが、ある人間にとって統計上、重要でない事が、
他の人間にとっては死活にかかわる重大な問題であるかもしれないのだ。
しかしながら、山下氏のコメントは少なくとも(WHOのリポートとは違って)、上述され
ているように、100ミリシーベルトよりもずっと低い被曝線量における統計的な結果を指
摘しているので、国際的に確立されている「直線しきい値なし仮説(Linear No-threshold
Model)」を承認していることになる。WHOのリポートには、この「直線しきい値なし仮
説」やその結論に関しても何も述べられていない。
米国科学アカデミー諮問委員会は、国際的にも評価されている「BEIR VII リポート」の
中で、電離放射線の生物的影響について-放射線損傷に関してより低い閾値といったもの
は存在せず、最も低い被曝線量でさえも組織損傷や遺伝子変異をもたらすこともある。
それ故に、低線量被曝した多数の住民の間で発生する甲状腺ガンのケース数が、高線量被
曝した少数の住民の間で発生する甲状腺ガンのケース数と同数に達することもあり得る。
-と、明示している。
国際BEIR-VII-被曝リスク・スタンダードモデル(standard international BEIR-VII
dose-risk model)に基づくと:-①平均被曝量10ミリシーベルトを受けた住民の中で、
1000人に1人がガンに罹患することになる。②100ミリシーベルトの被曝量では、100人に
1人がガンに罹患することになる。
基準レベルは、低いにしろ高いにしろ、いつでも決まって「社会的許容リスク」に基づい
て定義づけられることは明らかである。ヘルメットを被らずに通りを自転車で乗り回す事
は、ある場所では、またはある人々にとっては「社会的許容リスク」として見なされるか
もしれない一方、別の人々にとっては見解が異なってくる可能性もある。

あり得ない、偽りの安全性保証よりも、どれぐらいのレベルのリスクを社会で容認できる
のかについて公開討論する事が必要である。
もしWHOのリポートが、1,000人中に1人のガン罹病率を「社会的許容リスク」とみなす事
を選択しているのだとしたら、はっきりとその事を述べるべきである。そして、原発作業
員用の基準レベルと比較して、故意に歪められた安全性を仄めかすべきではない。子供は
原発作業員ではないし、放射性物質と接触することによって、自分の健康を危険に曝すこ
とを選んだわけでもない。
子供達や幼児達の健康を論じる報告書に、原発作業員の基準レベルを述べるような場所な
んて何処にもない。更に、胸部X線検査1回の放射線量は「0.02ミリシーベルト」と微量で
あるが、どんな医者も、患者に対して、もちろん子供や妊婦に対して、必要のない放射線
検査は行わない。放射線影響の確率的性質を知る事は、あらゆる被曝を避けることが悪性
疾病の発生を防ぐのに役立つことができると謂う事を分かることである。
そして、「100ミリシーベルト」とは、1年内に5000回の胸部X線検査を受けることに相当
する。如何なる放射線科医も敢えて、そのような数量を人の健康にとって微々たる無視す
べきものであるとは謂わないだろう。
日本の国会事故調査委員会は「福島原発事故報告書」でこう記述している。:
「長期にわたる低線量被曝による晩発障害には『しきい値』がなく、リスクは線量に比例
して増えることが国際的に合意されている。年齢、個人の放射線感受性、放射線量によっ
てその影響は変わる。また未解明の部分も残る。一方、政府は一方的に線量の数字を基準
として出すのみで、どの程度が長期的な健康という観点からして大丈夫なのか、人によっ
て影響はどう違うのか、今後どのように自己管理をしていかなければならないのかといっ
た判断をするために、住民が必要とする情報を示していない。」
食物の抜き取り検査
総被曝推定量の大部分は、放射能汚染された食物の摂取によってもたらされた内部被曝か
ら成る。 WHOのリポートは、内部被曝のレベルを算定しようと試みているが、その推定値
の不適切さを釈明していない。当然のことながら、内部被曝量の計算は、食物のサンプル
選択やサンプリングの規模範囲を制定する方法によって大いに影響される。
WHOのサンプリングの規模範囲について、唖然とさせられる事がある。-原発事故が発生
した最初の1ヶ月に福島県全域において、たった17個の卵が検査され、2ヶ月目には11個の
卵、3ヶ月目にはゼロ個、そして終に4ヶ月目にはまた11個の卵が検査されただけなのであ
る。4ヶ月中に福島県全域から集められた、たった39個の卵(プラス日本の残りの地域か
らの18個の卵)を測定することによって、卵を摂取して受ける内部被曝量を、人口1億
2000万人のために決定することになるのである!

同様に、福島産の果物に関してもサンプリングの規模範囲は限られている。-最初の1ヶ
月には40個のサンプル、2ヶ月目には16個のサンプル、そして、この同期間に、日本の他
地域からは其々49個と28個だけのサンプルが検査された。
WHOのリポートは、このように、実際の放射線量を明らかに過小評価している要因につい
てコメントすることはなく、「測定された其々の放射能濃度量は、福島県や隣接する県に
おける食物市場全体を代表するものである。」と述べている。と同時に、リポートは別の
過小評価の要因を認めているのである。:「我々の査定では、平均食物消費量を800から
900グラムとしているが、実際には一日の平均消費量は2000グラムである。」
また、WHOのリポートにあるサンプルに関して、- ①何処で収集されたのか、②誰が収
集したのか、③どのような目的で収集されたのか-について何もコメントされていない。
原子力産業にも、それに協力している政府機関にも、福島原発事故がもたらす健康的影響
結果を結論づける上で、重大な利害衝突がある。それ故、東電もしくは日本原子力機関に
よって公表されたサンプル分析結果は、独立した科学者たちによって厳しく質疑されなけ
ればならない。何故ならば、東電も日本原子力機関も、国民に決定的で重要な情報を与え
るのを差し控えるようとする動機があるからである。
一つの好例が福島県産の野菜の汚染レベルである。WHOのリポートには、野菜サンプルの
中で最も高レベルの放射能汚染が、「ヨウ素-131:54,100ベクレル/kg」そして「セシウ
ム-137:41,000ベクレル/kg」となっている。ここで興味深い事は、最も高いレベルのヨ
ウ素-131を含んでいたサンプルは福島県外からのものであったと謂うことである。
ところが、文部科学省(MEXT)は、ヨウ素-131濃度が「2,540,000ベクレル/kg」までに上
る-(WHOリポートに報告されている最高汚染度の野菜サンプルよりも40倍以上の汚染度)-
野菜サンプルを見つけた。また別の野菜サンプルには、セシウム-137濃度量「2,650,000
ベクレル/kg」-(WHOリポートにある最高汚染度の野菜サンプルの60倍以上)-を検出した。
メルトダウンから1ヶ月経った後も未だ、最高濃度量「100,000ベクレル/kg」を超すヨウ
素-131が検出されていた。:(WHOリポートに述べられているものの殆ど2倍の汚染度)
また、「900,000ベクレル/kg」のセシウム-137(WHOリポートにある汚染度の20倍以上)
も検出された。
既に文部科学省のウェブサイトに掲載されてあり、様々な刊行物にも引用されているサン
プル分析データを、なぜ自分達の分析から省いているのか、WHOのリポートは釈明してい
ない。このように、WHOの食物サンプルの選択/分析は、不適切・不十分であり、多数人口
の内部被曝量を算定するために、WHOのリポートに掲げられているような限られた数の食
物サンプルの汚染レベルを基に外挿するようなことは容認し得ないことである。
放射能汚染された水道水の影響を隠匿
更に懸念すべきコメントが、WHOのリポートの後の項に述べられてある。:専門家グルー
プが「水道水の線量は他の被曝経路からの線量に比べて低い」と考えたため、WHOは、汚
染された水道水を通しての被曝量を単に算定に含めなかったと謂う事である。

これは奇妙なことである。何故なら、IAEA(国際原子力機関 -International Atomic
Energy Agency)が、3月17日から23日の間に福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県か
ら採られた飲料水サンプルの中に高レベルの放射性ヨウ素-131を検出したと警告したから
である。東京の北部の地区でさえ、水道水に含まれていたヨウ素-131量は「210ベクレル/
リットル」であった。
ドイツ放射線防護協会(deutsche Gesellschaft für Strahlenschutz e.V.)、フード
ウォッチ(Foodwatch)、そして、IPPNWドイツ支部(核戦争防止国際医師の会-
International Physicians for the Prevention of Nuclear War)の公表によれば、水や
食物に含まれた放射性ヨウ素-131の量に「しきい値」はない。-これに従えば、原発災害
が始まった後の日々に測定された水道水の汚染レベルは、汚染された水を飲んだ人達に、
健康影響を及ぼすだけの甲状腺線量を被曝させた一因となってしまったことになる。
WHOが、推算から水道水汚染を除外していることは、納得のいかない内部被曝量の算定を
試みている彼等のリポートの信用性を更に落とさせていることになる。
魚介類や海産食品に関する放射能汚染のデータ不足
WHOのリポートには、魚介類や海産食品の放射能汚染に関して、原発事故から最初の2ヶ月
間に福島県で捕られた、たった41の魚介サンプルからのデータが、含まれてあるだけであ
る。リポートには、これらのサンプル中、一つのサンプルから最も高い汚染量が検出され、
その測定値は、「ヨウ素-131:12,000ベクレル/kg」及び「セシウム-137:7,100ベクレル
/kg」であったと述べられてある。
リポートの筆者は、「海水中で放射性物質が希釈されるので、放射能が放出されたポイン
ト近くの線量のみに重大性があることになる。」と推測していて、生物濃縮の結果を無視
している。
栄養カスケードに基づき、放射能レベルは食物連鎖を通して上昇していく傾向がある。主
に人間によって食べられるマグロのような大きな魚は、時の経過と共に、筋組織の中に最
も多量の放射性アイソトープを蓄積する。
福島第一原発からの放射性物質放出は、今日に至るまでずっと続いているので、海洋生物
の放射能汚染はこれからも続いていき、経時的に汚染量が増えることが予測できる。
一例を挙げれば、北太平洋で捕れたスズキである。:検出された放射性セシウム量は、
2011年の3月から9月まで上昇し続け、9月15日に測定された最高汚染量は「670ベクレ
ル/kg」であった。
東電の2012年5月のある公表によれば、検査された76の魚介サンプル中、33のサンプル
(43%)から、許容基準量「100ベクレル/kg」を超える放射性セシウム量が測定されたと
ある。2012年5月9日に、小高から3キロの沖合いで捕れたカレイの汚染度は「1,190ベクレ
ル/kg」と測定され、これは基準量の10倍以上に達している。

2012年7月、日本の環境省は、「福島県の湖や川で捕れた淡水魚の放射性セシウムの汚染
度が海水魚よりも高く、1つのケースでは『2,600ベクレル/kg』が測定された」との検査
結果を発表した。
WHOのリポートには、これらの検出事項について何も述べられていないので、調査検査の
ために、どのようにしてサンプルが選択され、如何なる理由でより高い放射線量を示すサ
ンプルが除外されたのかという疑問を再び提起している。
フクシマ原子炉で進行中の問題について言及せず
WHOのリポートは、2011年3月12日から4月6日だけの期間をカバーした算定を用いているの
みで、福島第一原発における放射線漏出の問題は存続していて、今日に至るまで、放射能
は環境に拡散し続けている事実を無視している。東電でさえもが認めた事実-「3月26日
から9月30日の間に、『1.1x1京ベクレル』のヨウ素-131と『約 7x1000兆ベクレル』
の放射性セシウムが海洋に放出され続けたこと」-について、WHOのリポートには述べら
れていない。
同様に、第一号機から第三号機までの原子炉を、一日におよそ535,200リットルの水でこ
れからも冷却し続ける必要があることについても言及されていない。-これらの水は気化
されて大気中に拡散されるか、放射能汚水として地中にしみ込んでいく。
リポートには、「ヨウ素の放散があってから4ヶ月後以降には、ヨウ素の放出はなく、総
被曝量への寄与量はゼロであると考えられる。」と述べられてある。WHOは、「ヨウ素が
放出されたのは原発災害が始まった頃だけであるから、ヨウ素-131の濃度は放射性崩壊に
よって減少したため、それ以上の放出は起こらなかった」と仮定しているのである。
しかし、2011年6月、文部科学省の科学者達は福島県の様々な市町村からの土壌サンプル
検査を行った結果、「200ベクレル/kg」以上の濃度のヨウ素-131を検出したのである。-
最高汚染度は、浪江で「1,300ベクレル/kg」、飯舘で「1,100ベクレル/kg」が測定された。
ヨウ素-131の半減期は8日間であるから、3月15日の最初の降下から90日後に、このような
高レベルのヨウ素-131が測定されたことは、後になってからも、さらなるヨウ素-131によ
る区域汚染があったと思われる。
同様に、原子力災害から3ヵ月後に採れた野菜サンプルに、ヨウ素-131の汚染量「2,200ベ
クレル/kg」を検出したことが、WHOのリポートには述べてられてある。-この事は、最初
の爆発があった後も放射性ヨウ素が放出され続けていたという更なる証拠である。これに
は、1基または数基の原子炉において核分裂か再臨界が自然発生したことが原因となって
いる可能性があると推察される。
WHOのリポートに言及されていないもう一つの事実は、東電が認めたこと-「2012年1月に
放射性セシウムの大気中放出量『60メガベクレル/時』または『凡そ1,440メガベクレル/
日』が未だ測定されていたこと」である。東電は、ヨウ素-131放出がさらに続いたのかに
ついては、コメントしていない。

重大な甲状腺調査について隠匿
WHOのリポートには、福島県の1,080人の子供たちを対象にして行った甲状腺研究調査につ
いて言及はされているが、研究調査結果の懸念される内容について、もしくは、その研究
調査結果から推論される最終的な健康上の影響/結果について詳説されていない。
研究調査結果は、安心させるどころか不安を駆り立てるようなものだった。:最初のヨウ
素-131降下があった後一週間以上経ってから行われたモニタリングでは、検査された子供
たちの内、44.6%の子供の甲状腺から、「35 mSv」までに至る放射性放射が測定された。
殆どの子供たちにおいては、放射線量「10 mSv以下」が測定された。
しかし、これを査定する上で、放射性崩壊の原則が鑑みられなかったのである。ヨウ素-
131の有効半減期は7.3日間であり、実際、この崩壊の原則は非常に重要な事である。:モ
ニタリングをしていた時点で(3月24日-30日)、放射量測定が為されたのだが、一番最初
に測定された放射性ヨウ素-131の量の50%以下の量しか検出することが出来なかったので
ある。
残りの検出されなかったヨウ素-131の量は、既に崩壊してしまっていて、周りの組織に損
傷をもたらしてしまっていたということになる。この事は、当然、考察されるべき事実
だったのだが、WHOのリポートには、これに関して何も言及されていない。
更に、「有害な放射線影響には、より低い閾値などいうものは存在しなく、低被曝量で
あっても悪性疾病に罹患するリスクを高める可能性がある。」という事にも、リポートは
言及していない。
こうして再び、専門家でない素人群(そしてメディア)は、「社会的許容リスク」の原則
-(どれぐらいのレベルのリスクを社会で容認できるのかについて公開討論する必要性)-
を否定され、ある一定の限界値以下であればリスクはないと信じさせられたこととなる。
チェルノブイリの場合:
①放射性ヨウ素-131の降下があったホメリ地域(Gomel Oblast)において、チェルノブイ
リ事故以後-1986年から1998年までに、0歳~18歳の子供/青少年の間で発生した甲状腺ガ
ン罹病率が、チェルノブイリ以前-1973年から1985年までの罹病率と比較して、「58倍」
に増えていたことが明らかになっている。
②インターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー(International Journal of
Cancer)に、2006年、発表されたある研究調査によれば、-「チェルノブイリから放出され
たヨウ素-131を被曝したために、ヨーロッパにおいては、甲状腺ガン罹病の追加ケース数
が『16,000件』あったことを算出した。その中の約1/3が子供で、彼等が受けたヨウ素-
131被曝量は『25 mSv以下』だった。」-となっている。

WHOのリポートには、福島の子供たちにおける甲状腺影響に関した、もう一つの大きな研
究調査について、何も述べられていない。
4月26日、福島県庁は最初の「住民健康管理調査」を公表した。: 0歳から18歳までの
38,114人の子供を対象に、エコー機器(超音波機器)による甲状腺検査が行われた。その
内、184人の子供(0.5%)に5mm以上のサイズの甲状腺結節が、202人(0.5%)の子供に
直径5mm以下の甲状腺結節が発見された。そして、13,398人(35.1%)の子供に、甲状腺嚢
胞が見つかった。小児科学の研究調査にとって、このような検査結果はかなり珍しいこと
である。
これと比較し得るエコー機器による甲状腺検査が、2000年長崎県で行われた。:その検査
結果は、検査された250人の子供の内、2人(0.8%)だけに甲状腺嚢胞が検出され、その
ほかの子供たちには、どのような形の結節も見つからなかった。-福島の検査結果が示し
た数は、この検査結果と著しく異なっている。
更にもう一つの研究調査が、放射性ヨウ素‐131降下の影響を受けた白ロシアのホメリ
(Gomel)地域で行われた。そして、この研究調査も福島と同じように似通った甲状腺結節
の増加率を示した。: 検査を受けた19,660人の子供の内、342人(1.74%)に異なった
サイズの結節が見つかった。
興味深いことは、既述した上記の全ての3つの研究調査を責任担当した科学者が同一人物
であったという事だ。:その人は山下俊一、現在、福島県の放射線健康リスク・アドバイ
ザーをしている。彼は、「年間被曝量『100ミリシーベルト以下』での深刻な健康影響は
予想できない」と主張した人物である。
ここで、嚢胞や結節は必ずしもガンの前兆とは限らないという事を書き留めておかねばな
らない。しかし、汚染地域の子供たちにおけるこのような異常の蓄積は、少なくとも言及
に値する事であり、更に進んだ調査が必要である。
ホメリや福島で観察された異常が被曝の結果なのか、それとも何らかの別の原因にあるの
か、調査されなければならない。一方、福島県健康調査の担当者たちは、これとは全く反
対の結論に達している。彼等は、検査された個人の99.5%は、翌年以降、再検査を受けな
くてよいと勧告している。
被爆者を研究の対象として利用
WHOのリポートは、「原子力大災害の影響を受けた人々の中で誰一人として-放射能放出
の-または包括的/集中的な科学研究の-試験対象になりたいのかどうなのか-を尋ねら
れなかったことがなかった事実」を記述していない。しかし、WHOは、これらの人々を対
象に医学的および疫学的な調査研究に取り組んできた日本当局の努力を賞賛している。
①政府は、原発事故によって影響を受けた汚染地域から進んで離れたいと願っている人々
のために、適切な財政的援助を提供していない。
②その為に、多くの市民は汚染環境の中で生活することを強いられてしまっている。

③その結果、市民たちは、「汚染環境の中で生活することが、如何なる健康上の影響・結
果を人間に及ぼすのかを確かめようと試みている-科学的研究の対象となること」を余儀
なくさせられてしまっているのである。
福島県と福島県立医学大学は放射線医学総合研究所(NIRS)と協力連携して、福島の200万
人ほどの住民を取り入れた健康管理の調査を始めた。この調査内容には、2011年の3月11
日から7月11日までの住民の行動に関する質問があり、それには-①個人個人の行動の仕
方/振る舞い、②移動/移転、③生活習慣、④地元産の食物とミルクの消費-についての質
問が含まれている。
また、福島大学は360,000人の子供を対象に甲状腺検査を始めた。その中で何らかの異常
が検出された子供達は、‐①20歳に達するまで年に2回の検査を受けること、②20歳以後
からは5年ごとに一回の検査を死ぬまで受けることが‐義務付けられている。
これらの検査が、放射能の影響をできるだけ早期に発見し治療する目的を果たしている事
になるのだとしても、「原発大災害が-何百万人という人々を-その人達の意志に反する
ことでありながらも-研究の対象にさせてしまっているのだ。」と謂う事を、はっきりと
述べなければならない。また、WHOの研究調査には、この原発大災害が人々に及ぼした心
理的および社会的影響について何も言及されていない。

 

 


小児科医のローゼン博士(IPPNW)「『WHOのフクシマ大災害リポート』の分析」正式な翻訳。前半。

2012-11-27 10:34:51 | 福島第一原発と放射能
 
 ドイツの小児科医、アレックス・ローゼン博士(IPPNW)が「『WHOのフクシマ大災害リポート』の分析」については、以前からご紹介していますが、IPPNWドイツ支部にも許諾を得た、正式な翻訳版が、届きましたのでご紹介いたします。IPPNWにもリンクされている翻訳です。翻訳者はグローガー理恵さんです。
 
 
翻訳者:グローガー理恵
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IPPNWの医師、ローゼン博士が明かすフクシマの真実

「こんな日常をただ過ごしていると、3.11が嘘であってほしいとふと思います。」と、
ある日本の方が仰った言葉が忘れられません。
この方は、保育園に通う小さな女の子のお父さんです。
そして、3.11が、フクシマが、多くの日本人の人生を変えてしまったように、
この方は、子供たちや市民を被曝から守ろうと、日々、真剣に闘われていらっしゃいます。
そして、この方が、大変興味を持っていらした論文が、 IPPNWの医師-小児科医でいらっしゃるローゼン博士著の
「WHOのフクシマ大災害リポートの分析」でした。
子供たちを被曝から必死に守ろうとなさっている一人のお父さんの姿に心を打たれたのかも知れません。
私は、少しでも何らかの形でお役に立てるならと思い、この論文の翻訳に取り組むことにしました。

ローゼン博士は分析文の中で、WHO(国連- 世界保健機関)が作成したフクシマ報告を、
そしてWHOの偏った研究調査法を厳しく批判しています。
批判の対象はそれだけではありません。
政府を政府機関を規制機関を全ての原子力産業、原子力機関を更に非難しています。
ローゼン博士の論文は、信頼性あるデータを基に説かれてありますので納得できる論理性を持っています。
更に、注目すべき事は、ローゼン博士が深い憂慮心を持ってフクシマの真実を浮き彫りにしていることです。

その中で大変印象に残った部分をひとつだけ簡単にご紹介させて戴きます。:
「 『被爆者を研究の対象として利用』(訳文14ページ)という章です。
汚染地から離れたいと願っている人々が、政府からの援助金がないという、それだけの理由で、
汚染地に住むことを強いられてしまっていること。その結果、『汚染環境の中で生活することが、
如何なる健康上の影響結果を人間に及ぼすのかを確かめようと試みている
-科学的研究の対象となることを』を人々は余儀なくさせられてしまっていること。」

こんな事が許されてよいのでしょうか?3.11前までは、チェルノブイリを他人事だと思っていた自分でした。
しかし、今、この時点で、わが国で、チェルノブイリと同様な事が、いやもっと過酷かも知れないことが起こっているのです。
ローゼン博士が明かしているフクシマの真実は、私達に鋭い心痛を覚えさせます。
しかし、私達は真実を知る必要があります。
何故なら、真実から逃げているだけでは真の解決への道は見つからないからです。

最後に、翻訳に関してのコメントです。: IPPNWドイツ支部から「翻訳してもOK!」との言葉があったことを述べさせて戴きます。
論文には、ローゼン博士が国会事故調査委員会の報告書(英語版)から引用した句が出てきます。
訳者としてはできるだけ報告書の日本語の原文を使うように努めましたが、
訳文になっている箇所もあります。
また、ローゼン博士は、論文の最後にある「結論」の部分で国会事故調査委員会の黒川清委員長の言葉を引用していますが、
その英訳文と日本語の原文との間に何の類似点を見い出すことが出来ませんでしたので、
敢えてこの部分は省いて訳さなかったことをお伝えしておきます。

下が訳文へのリンクです。:

 

「WHOのフクシマ大災害リポートの分析」
アレックス・ローゼン(Alex Rosen)医学博士
ドイツ・ジュッセルドルフ大学付属病院・小児科クリニック
2012年9月14日


2012 年5 月23 日、国連- 世界保健機関( WHO-World Health Organization) は、
「Preliminary dose estimation from the nuclear accident after the 2011 Great
East Japan Earthquake and Tsunami(2011年東日本大地震津波後の原発事故がもたらす
被曝線量の仮算定)」と呼ばれるリポートを公表した。リポートは、原発事故後の最初の
一年間に日本市民が受けると推定される被曝線量の程度/規模に関しての、時宜を得た信
頼すべき情報を提供する事を目指している。即ち、リポートは、フクシマ第一原発事故後
の一年間に被曝した人間が受けるであろう健康的影響結果を包括的なレベルで査定するこ
とを試みている。

このWHOの公表結果に対してのメディアの反響は、WHOリポートの「人を安心させるような
メッセージ」を、そのままオウム返しに繰り返すことであった。:

-「WHO:日本におけるフクシマ原発事故後の放射線レベルは低い。」(2012年5月24日-
BBC 報道) 
-「WHO:フクシマ原発付近の被曝量は安全基準内である。」(2012年5月23日ー朝日新
聞)
-「WHO:フクシマ原子力災害による放射線リスクは予想されていたよりも低い。」(2012
年5月24日-Spiegel)
-「フクシマにおける殆どの放射線量は基準範囲内である。」(2012年5月23日-
Reuters)
-「フクシマの放射線量は大部分において容認できるレベルである。」(2012年5月23日
-AFP)
このような楽観的なヘッドラインがフクシマの真の状況を描いているのかどうか、これか
ら分かってくることになるだろう。
* アレックス・ローゼン(Alex Rosen)医学博士: 小児科医であり、IPPNW (核戦争防止国際医師会議)のメ
ンバー。

この論文は、3つの簡単な疑問を呈示して、それらの疑問に答えようと試みることによっ
て、WHOのリポートを分析している。:
1.リポートは何を述べているか?
a) 実際にどのようなインフォメーションがリポートの中に含まれているのか。
b) その主要な結論は何であるのか。
c) 調査結果を他のソースから公表された数値と比べるとどうなのか。
2.リポートは何を述べていないか?
a) どのようなインフォメーションがリポートから抜けているか。
b) 生データからの、どのような疑問の余地がないほど明らかな結論が引き出されなかっ
たか。
c) リポートの何処にバイアスが見られるか。
3. 誰がリポートを書いたか?
 
a) どのような組織・機関や個人がリポートを作成したのか。
b) 彼等の動機とは何であるのか。

1.リポートは何を述べているのか?
総実効線量
WHOのリポートには、福島県の住民が原発事故発生から最初の一年間内に受けると推定さ
れる実効線量が「1~10 mSv」であると述べられている。また、この(1~10 mSvの)線量
範囲を超えて「10~50 mSv」の放射線推定量に達する幾つかの「地域例」が挙げられてい
る。この「地域例」の中の二つに浪江と飯舘がある。福島に隣接する県における実効線量
は「0.1~10 mSv」と推定された一方、日本国内の他の県における実効線量の推定値は
「0.1~1mSv」と算定されている。この実効線量の算定についての妥当性と信頼性につい
ては、次の章で更にまた検討する事にする。
甲状腺線量
WHOのリポートは更に、(原発事故発生した)最初の一年間に福島県住民が受ける平均甲
状腺線量は「10 mSv から100 mSv」の間であろうと述べている一方、特定の場所(一例
として浪江町が挙げられている)における甲状腺線量の推定値は、「200 mSv」までに至
る可能性があると推測している。そして、日本の残りの地域の甲状腺線量の推定値は「1
~10 mSv」と算定されている。
食品の放射能汚染
WHOのリポートは、放射性降下物によって放射能汚染された数多くの食品種類をリストし
ている。: 野菜、果物、キノコ、ミルク、肉、穀物、卵が検査され、その結果、許容基
準量レベルを超す放射性アイソトープが検出された。これらの食物を食べた人々は有害な
放射性アイソトープを摂取したことになり、その結果として内部被曝したことになる。
大気中への放射能総放出量
WHOのリポートには、2011年3月12日から4月6日にかけて大気中に放出された放射性アイソ
トープの量についてのデータが含まれている。リポートによれば、フクシマ災害が起こっ
た最初の6日間に、およそ「113x10京ベクレル」の放射性ガス、キセノン-133が放出され
た。キセノン-133の物理的半減期は5.25日間で、ベータ線とガンマ線を放出し、それを吸
入すると肺組織を害する可能性もある。
ノルウェー大気リサーチ研究所(Norwegian Institute of Air Research-NILU)が行った
控え目な算定によれば、2011年3月12日から4月20日の間に放出されたキセノン-133の量は
「167x10京ベクレルで」あった。一方、東電が原子力安全保安院に宛てたあるリポート
には、更にそれよりも高い「223x10京ベクレル」のキセノン-133が、2011年3月12日から
15日の間に放出されたことが算定されたと公表されてある。NILU(ノルウェー大気リサー
チ研究所)は、「フクシマ事故が放出したキセノン-133の量は歴史上、(核爆発実験を除
いて)最高の放出量であった。」と述べている。-これは、チェルノブイリ原発メルトダ
ウン事故間に放出されたキセノン-133の放射量の2倍を超える量であった。

WHOのリポートは、放射性ヨウ素‐131の放出推定量に関して、2011年3月12日から4月6日
までの間に放出されたヨウ素-131の推定量は「1.24~1.59x10京ベクレル」であると主張
している。ヨウ素-131の物理的半減期は比較的短く、8日間であるが、そのベータ線およ
びガンマ線を吸入した場合、甲状腺癌になる可能性がある。
オーストリア気象学・地球力学中央研究所(ZAMG-Zentralanstalt für Meteorologie und
Geodynamik)は、 包括的核実験禁止条約(CTBT)のもとに設置された(複数の)放射能測
定場所からのデータに基づいて、2011年3月12日から14日までの間に、フクシマ・メルト
ダウンによって放散されたヨウ素-131の量を「3.6~3.9x10京ベクレル」と算定した。こ
れはチェルノブイリから放出されたヨー素-131の総量の凡そ20%に値する。東電が算定し
たヨウ素‐131の放出推定量は同程度である。:2011年3月12日から3月15日までの間に
「3.19x10京ベクレル」。
WHOのリポートには、なぜWHOが推定したヨウ素-131の放出量が、東電やZAMGの推定値より
も2/3ほど低いのか、その理由が述べられていない。
最後に、WHOのリポートは、 2011年3月12日から4月6日までのセシウム-137の総放出推定
量が「0.97~1.53x1京ベクレル」であると述べている。-これもまた、ZAMG(5x1京ベ
クレル:2011年3月12日~3月14日)、NILU(3.58x1京ベクレル: 2011年3月12日~4月20
日)、そして東電(3.03x1京ベクレル :2011年3月12日~3月15日)らが算定した全ての
推定値よりもずっと低い。
NILU(ノルウェー大気リサーチ研究所)によれば、フクシマにおけるセシウム-137の放出
量は、チェルノブイリ災害中に放出されたセシウム-137総量の約40~60%を占める。これ
も、WHOのリポートの推定値が、なぜ他の機関の推定値よりも50~80%低いのか説明が為
されていない。セシウム-137の物理的半減期は30年であり、主にベータ放出体であるが、
その崩壊生成物であるバリウム-137mは、ガンマ線も放射し、両方とも悪性腫瘍の発生へ
と結びつく。
安定ヨウ素剤による予防
WHOのリポートには、何度か、「①安定ヨウ素剤の予防摂取が公式に勧告されなかった
こと、②市民達が日本国内や他の場所でも安定ヨウ素剤を摂取しなかったため、甲状腺等
価線量の推定値が、放射性ヨウ素の吸収を低減させる目的で、安定ヨウ素剤を服用し甲状
腺ブロックをした人々における推定値よりも高くなると推測されること」が明らかに述べ
られてある。

2.リポートは何を述べていないか?
原子力災害の原因について誤解を生むインフォメーション
WHOのリポートは、フクシマ原発現場の浸水がもたらしたダメージのため、3基の原子炉が
冷却不能となったと述べてあり、原子力災害の原因は津波であり地震ではないことを強調
している。
地震は比較的頻繁に起こり、世界中(特に日本)にある多くの原子力発電所は地震断層線
近くに建設されてあるため、原子力産業は、地震が核メルトダウンの原因であるという可
能性から注意をそらさせて、地震ほどは頻繁に起きないもっとエキゾチックな「大津波」
に罪を着せることに、大いに関心を抱いている。
しかし、あるドイツの包括的な研究調査が、フクシマ第一原発での原子力災害をもたらし
た構造上の損壊は地震に起因するものであり、あとに続いて起こった津波に起因するもの
ではない事を明らかにしている。NILUによって測定された大気データは、放射能放出が一
番最初に測定されたのは地震発生直後であり、第一原発が津波で襲われる前に、原子炉が
かなり損壊していた事を証明している。
日本の国会事故調査委員会はこう結論している。:
「東電は余りにも速く、原発事故の原因として津波を挙げ、地震が事故原因であったこと
を否定している。安全上重要な機器への地震による損傷がないとは確定的に言えない。」
日本の専門家グループによって、なおざりにされた被曝リスク
フクシマ第一原発敷地周辺の20キロ圏内に住んでいた人々は核メルトダウンがあった最初
の数日のうちに避難したため、専門家グループはこれらの住民の被曝リスクを顧慮しな
かった。これらの住民が、避難する前に、あるいは避難中に被曝したかもしれないという
可能性は、簡単に無視されたのだった。
国会事故調査委員会の調査は次の事柄を明らかにした。:
① 日本政府は原発事故に関して地方自治体政府に知らせることが遅かったばかりでなく、
事故の重大度を伝えることができなかった。(...)
② 具体的に謂うと、2011年3月11日の夜21時23分に、3キロ圏内からの避難が指示された
とき、福島原発の立地町の住民の内、ほんの20%だけが原発事故発生を認知していた。
③ 原発から10キロ圏内に住む住民の殆どが、15条報告から12時間以上も経っていた3月
12日の5時44分に避難指示が発令されたとき、初めて原発事故発生を認知した。しかし、
事故に関してそれ以上の説明はなく、避難先が何処になるのかの指示もなかった。
④ 多くの住民はほんのぎりぎりの必需品だけを持って(着の身着のままで)避難しなけ
ればならず、複数回、移動したり、あるいは高線量の区域に移ることを余儀なくさせられ
た。(...)
⑤ ある人達は高線量の区域に避難し、それから何の避難指令も受けず、4月まで見捨て
られたままの状態であった。

上記に既述したように、避難者たちに予防の為の安定ヨウ素剤が分け与えられなかったと
謂う不作為は特に重大な懸念すべきことである。
また、WHOのリポートには、フクシマ災害のため疑いもなく、最も高度の外部被曝を受
けたであろう作業員達の被曝量が含まれてない。‐その理由として、作業員の被曝線量測
定には異なった方法・アプローチが必要であるためと述べられてある。
大人、子供、1歳未満の幼児間の区別がない。
WHOのリポートは、3つの異なった年齢グループを設定している。そして、フクシマ原子
力災害が発生した最初の一年間に、其々の年齢グループが受けた実効線量のレベルを算定
しようと試みている。しかし、リポートには、年齢別による実効線量係数を使っているに
も拘らず、福島県に住む全ての住民の実効線量が-それぞれの年齢に関わりなく「1~10
ミリシーベルト」になるであろうと述べられてある。
この事は、リポートが、測定値を年齢によって区別しないことにより、大人、子供、幼児
の間に実存する相違点を、大雑把な平均的推定値の裏に隠しているのか、もしくは小児科
放射線医学や児童期社会学の最も基本的な観点を無視していることになる。: 
一般的に子供達は大人達よりももっと長い時間、(外で遊ぶため)戸外で時間を過ごす。
子供達は地面の上や砂場、浜辺や庭で遊ぶため、吸入病原体に曝される度合いがもっと遥
かに高くなる。幼児は何でも口の中に入れる癖があって、時には土を口の中に入れたりも
する。
2011年5月、日本の文部科学省(MEXT)は、幼稚園、学校、保育園で測定された土の汚染度
を示すリストを公表した。測定された全ての場所で、放射性ヨウ素-131の量が、「1,200
ベクレル/kg」を下らなかった。最も高い測定値が見られたのは、伊達市(福島県)の小
学校で、「6,800ベクレル/kg」であった。セシウム‐137の土中汚染濃度は、「620ベクレ
ル/kgから9,900ベクレル/kg」までに至った。
生物学的に、子供は大人よりも放射線感受性が高く被曝に影響されやすい。:
①子供の皮膚の比表面積(体の寸法に比べた皮膚の表面積)は広く、透過性があるため、
より多量の放射線を吸収する。
②子供の多い呼吸分時量が、子供を空気中のより多くの病原体に曝させることになる。
③子供のより活発な組織代謝と高い有糸分裂度は、自動調節メカニズムが疾病発生を防ご
うとする前に、変異によって引き起こされる悪性罹病のリスクを高めてしまう。
④子供の免疫システムや細胞修復メカニズムは充分に発達していないので、これらのメカ
ニズムが癌の発生を適切に防ぐことが出来ない。
⑤胎内で胎児が、臍帯静脈を通して放射性アイソトープを被曝する可能性、および母体の
膀胱に集まったアイソトープから被曝する可能性もある。
⑥さらに、ヨウ素-131のような放射性アイソトープは母乳を経て運ばれる。

WHOのリポートには、このような様々な社会的、生物学的な要素について何も述べられて
いない。事実は、チェルノブイリの研究調査結果が物語っているように、最も放射線誘起
の疾病に罹患するのは子供なのだということである。しかし、WHOのリポートには、この
事が省かれていて、大人、子供、幼児でさえもが単一の被曝範囲の推定量に押し込められ
てしまっているのである。
原子力災害への不適切な対応に対して批判的でない見解
WHOのリポートは、日本当局が、住民の被曝リスクを少なくするために一定の防護措置を
とった事を認めている。しかし、リポートには、政府によって実際に為された多くの処置
が、住民の被曝量をより高くする結果に導いていったことについては何も言及されていな
い。担当当局にとってはアクセス可能だったはずのSPEEDIシステム(緊急時環境線量情報
予測システム)のデータは無視され、人々は放射線被曝リスクの低い区域から高レベル汚
染区域へと避難させられた。
「間違っていると分かっていながら、政府は、被曝の影響を受けた市民に安定ヨウ素剤を
分け与えることをしなかった。それ故、政府は住民をヨウ素-131の有害な影響から守るこ
とが出来なかった事実」-この事実に関して、WHOのリポートには何も論じられていない。
また、なぜ担当当局が、被曝を制限するための、この簡単でよく知られた方法を用いな
かったのかと謂う重大な疑問も提示されていないのである。
日本の国会事故調査委員会は公式報告でこう述べている。:
「時宜を得た安定ヨウ素剤投与の確実な効果については充分に知られていたにも拘らず、
政府の原子力災害対策本部と県政は市民に適切な指示を与えることが出来なかった。」
そして、信じがたいことに、2011年4月19日、日本政府は子供に対する被曝許容量を「3.8
マイクロシーベルト/時」に引き上げた(=およそ「20ミリシーベルト/年」)この被曝許
容量に対して親、科学者たち、医師たちから成るグループが抗議したことによって、やっ
と5月27日、政府はこの新しい目安を撤回し、元の「1ミリシーベルト/年」の基準値に戻
したのだった。
国会事故調査委員会は日本政府の危機管理に対して、WHOのリポートよりももっと批判的
である。:
①委員会は、官邸の危機管理体制、規制当局、他の担当機関が正しく機能しなかったため、
状況が悪化したものと結論付ける。
②(...)これまでの規制当局の原子力防災対策への怠慢と、当時の官邸、規制当局の
危機管理意識の低さが、今回の住民避難の混乱の根底にあり、住民の健康と安全に関して
責任を持つべき官邸及び規制当局の危機管理体制は機能しなかった。
③(...)政府、規制当局には住民の健康と安全を守るための意思が欠如している。;
住民の健康を守るため、被害を受けた住民の生活基盤回復するための対策が為されなかっ
た。