ドイツの小児科医、アレックス・ローゼン博士(IPPNW)が「『WHOのフクシマ大災害リポート』の分析」については、以前からご紹介していますが、IPPNWドイツ支部にも許諾を得た、正式な翻訳版が、届きましたのでご紹介いたします。IPPNWにもリンクされている翻訳です。翻訳者はグローガー理恵さんです。
翻訳者:グローガー理恵
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IPPNWの医師、ローゼン博士が明かすフクシマの真実
「こんな日常をただ過ごしていると、3.11が嘘であってほしいとふと思います。」と、
ある日本の方が仰った言葉が忘れられません。
この方は、保育園に通う小さな女の子のお父さんです。
そして、3.11が、フクシマが、多くの日本人の人生を変えてしまったように、
この方は、子供たちや市民を被曝から守ろうと、日々、真剣に闘われていらっしゃいます。
そして、この方が、大変興味を持っていらした論文が、 IPPNWの医師-小児科医でいらっしゃるローゼン博士著の
「WHOのフクシマ大災害リポートの分析」でした。
子供たちを被曝から必死に守ろうとなさっている一人のお父さんの姿に心を打たれたのかも知れません。
私は、少しでも何らかの形でお役に立てるならと思い、この論文の翻訳に取り組むことにしました。
ローゼン博士は分析文の中で、WHO(国連- 世界保健機関)が作成したフクシマ報告を、
そしてWHOの偏った研究調査法を厳しく批判しています。
批判の対象はそれだけではありません。
政府を政府機関を規制機関を全ての原子力産業、原子力機関を更に非難しています。
ローゼン博士の論文は、信頼性あるデータを基に説かれてありますので納得できる論理性を持っています。
更に、注目すべき事は、ローゼン博士が深い憂慮心を持ってフクシマの真実を浮き彫りにしていることです。
その中で大変印象に残った部分をひとつだけ簡単にご紹介させて戴きます。:
「 『被爆者を研究の対象として利用』(訳文14ページ)という章です。
汚染地から離れたいと願っている人々が、政府からの援助金がないという、それだけの理由で、
汚染地に住むことを強いられてしまっていること。その結果、『汚染環境の中で生活することが、
如何なる健康上の影響結果を人間に及ぼすのかを確かめようと試みている
-科学的研究の対象となることを』を人々は余儀なくさせられてしまっていること。」
こんな事が許されてよいのでしょうか?3.11前までは、チェルノブイリを他人事だと思っていた自分でした。
しかし、今、この時点で、わが国で、チェルノブイリと同様な事が、いやもっと過酷かも知れないことが起こっているのです。
ローゼン博士が明かしているフクシマの真実は、私達に鋭い心痛を覚えさせます。
しかし、私達は真実を知る必要があります。
何故なら、真実から逃げているだけでは真の解決への道は見つからないからです。
最後に、翻訳に関してのコメントです。: IPPNWドイツ支部から「翻訳してもOK!」との言葉があったことを述べさせて戴きます。
論文には、ローゼン博士が国会事故調査委員会の報告書(英語版)から引用した句が出てきます。
訳者としてはできるだけ報告書の日本語の原文を使うように努めましたが、
訳文になっている箇所もあります。
また、ローゼン博士は、論文の最後にある「結論」の部分で国会事故調査委員会の黒川清委員長の言葉を引用していますが、
その英訳文と日本語の原文との間に何の類似点を見い出すことが出来ませんでしたので、
敢えてこの部分は省いて訳さなかったことをお伝えしておきます。
下が訳文へのリンクです。:
「WHOのフクシマ大災害リポートの分析」
アレックス・ローゼン(Alex Rosen)医学博士
ドイツ・ジュッセルドルフ大学付属病院・小児科クリニック
2012年9月14日
2012 年5 月23 日、国連- 世界保健機関( WHO-World Health Organization) は、
「Preliminary dose estimation from the nuclear accident after the 2011 Great
East Japan Earthquake and Tsunami(2011年東日本大地震津波後の原発事故がもたらす
被曝線量の仮算定)」と呼ばれるリポートを公表した。リポートは、原発事故後の最初の
一年間に日本市民が受けると推定される被曝線量の程度/規模に関しての、時宜を得た信
頼すべき情報を提供する事を目指している。即ち、リポートは、フクシマ第一原発事故後
の一年間に被曝した人間が受けるであろう健康的影響結果を包括的なレベルで査定するこ
とを試みている。
このWHOの公表結果に対してのメディアの反響は、WHOリポートの「人を安心させるような
メッセージ」を、そのままオウム返しに繰り返すことであった。:
-「WHO:日本におけるフクシマ原発事故後の放射線レベルは低い。」(2012年5月24日-
BBC 報道)
-「WHO:フクシマ原発付近の被曝量は安全基準内である。」(2012年5月23日ー朝日新
聞)
-「WHO:フクシマ原子力災害による放射線リスクは予想されていたよりも低い。」(2012
年5月24日-Spiegel)
-「フクシマにおける殆どの放射線量は基準範囲内である。」(2012年5月23日-
Reuters)
-「フクシマの放射線量は大部分において容認できるレベルである。」(2012年5月23日
-AFP)
このような楽観的なヘッドラインがフクシマの真の状況を描いているのかどうか、これか
ら分かってくることになるだろう。
* アレックス・ローゼン(Alex Rosen)医学博士: 小児科医であり、IPPNW (核戦争防止国際医師会議)のメ
ンバー。
この論文は、3つの簡単な疑問を呈示して、それらの疑問に答えようと試みることによっ
て、WHOのリポートを分析している。:
1.リポートは何を述べているか?
a) 実際にどのようなインフォメーションがリポートの中に含まれているのか。
b) その主要な結論は何であるのか。
c) 調査結果を他のソースから公表された数値と比べるとどうなのか。
2.リポートは何を述べていないか?
a) どのようなインフォメーションがリポートから抜けているか。
b) 生データからの、どのような疑問の余地がないほど明らかな結論が引き出されなかっ
たか。
c) リポートの何処にバイアスが見られるか。
3. 誰がリポートを書いたか?
a) どのような組織・機関や個人がリポートを作成したのか。
b) 彼等の動機とは何であるのか。
1.リポートは何を述べているのか?
総実効線量
WHOのリポートには、福島県の住民が原発事故発生から最初の一年間内に受けると推定さ
れる実効線量が「1~10 mSv」であると述べられている。また、この(1~10 mSvの)線量
範囲を超えて「10~50 mSv」の放射線推定量に達する幾つかの「地域例」が挙げられてい
る。この「地域例」の中の二つに浪江と飯舘がある。福島に隣接する県における実効線量
は「0.1~10 mSv」と推定された一方、日本国内の他の県における実効線量の推定値は
「0.1~1mSv」と算定されている。この実効線量の算定についての妥当性と信頼性につい
ては、次の章で更にまた検討する事にする。
甲状腺線量
WHOのリポートは更に、(原発事故発生した)最初の一年間に福島県住民が受ける平均甲
状腺線量は「10 mSv から100 mSv」の間であろうと述べている一方、特定の場所(一例
として浪江町が挙げられている)における甲状腺線量の推定値は、「200 mSv」までに至
る可能性があると推測している。そして、日本の残りの地域の甲状腺線量の推定値は「1
~10 mSv」と算定されている。
食品の放射能汚染
WHOのリポートは、放射性降下物によって放射能汚染された数多くの食品種類をリストし
ている。: 野菜、果物、キノコ、ミルク、肉、穀物、卵が検査され、その結果、許容基
準量レベルを超す放射性アイソトープが検出された。これらの食物を食べた人々は有害な
放射性アイソトープを摂取したことになり、その結果として内部被曝したことになる。
大気中への放射能総放出量
WHOのリポートには、2011年3月12日から4月6日にかけて大気中に放出された放射性アイソ
トープの量についてのデータが含まれている。リポートによれば、フクシマ災害が起こっ
た最初の6日間に、およそ「113x10京ベクレル」の放射性ガス、キセノン-133が放出され
た。キセノン-133の物理的半減期は5.25日間で、ベータ線とガンマ線を放出し、それを吸
入すると肺組織を害する可能性もある。
ノルウェー大気リサーチ研究所(Norwegian Institute of Air Research-NILU)が行った
控え目な算定によれば、2011年3月12日から4月20日の間に放出されたキセノン-133の量は
「167x10京ベクレルで」あった。一方、東電が原子力安全保安院に宛てたあるリポート
には、更にそれよりも高い「223x10京ベクレル」のキセノン-133が、2011年3月12日から
15日の間に放出されたことが算定されたと公表されてある。NILU(ノルウェー大気リサー
チ研究所)は、「フクシマ事故が放出したキセノン-133の量は歴史上、(核爆発実験を除
いて)最高の放出量であった。」と述べている。-これは、チェルノブイリ原発メルトダ
ウン事故間に放出されたキセノン-133の放射量の2倍を超える量であった。
WHOのリポートは、放射性ヨウ素‐131の放出推定量に関して、2011年3月12日から4月6日
までの間に放出されたヨウ素-131の推定量は「1.24~1.59x10京ベクレル」であると主張
している。ヨウ素-131の物理的半減期は比較的短く、8日間であるが、そのベータ線およ
びガンマ線を吸入した場合、甲状腺癌になる可能性がある。
オーストリア気象学・地球力学中央研究所(ZAMG-Zentralanstalt für Meteorologie und
Geodynamik)は、 包括的核実験禁止条約(CTBT)のもとに設置された(複数の)放射能測
定場所からのデータに基づいて、2011年3月12日から14日までの間に、フクシマ・メルト
ダウンによって放散されたヨウ素-131の量を「3.6~3.9x10京ベクレル」と算定した。こ
れはチェルノブイリから放出されたヨー素-131の総量の凡そ20%に値する。東電が算定し
たヨウ素‐131の放出推定量は同程度である。:2011年3月12日から3月15日までの間に
「3.19x10京ベクレル」。
WHOのリポートには、なぜWHOが推定したヨウ素-131の放出量が、東電やZAMGの推定値より
も2/3ほど低いのか、その理由が述べられていない。
最後に、WHOのリポートは、 2011年3月12日から4月6日までのセシウム-137の総放出推定
量が「0.97~1.53x1京ベクレル」であると述べている。-これもまた、ZAMG(5x1京ベ
クレル:2011年3月12日~3月14日)、NILU(3.58x1京ベクレル: 2011年3月12日~4月20
日)、そして東電(3.03x1京ベクレル :2011年3月12日~3月15日)らが算定した全ての
推定値よりもずっと低い。
NILU(ノルウェー大気リサーチ研究所)によれば、フクシマにおけるセシウム-137の放出
量は、チェルノブイリ災害中に放出されたセシウム-137総量の約40~60%を占める。これ
も、WHOのリポートの推定値が、なぜ他の機関の推定値よりも50~80%低いのか説明が為
されていない。セシウム-137の物理的半減期は30年であり、主にベータ放出体であるが、
その崩壊生成物であるバリウム-137mは、ガンマ線も放射し、両方とも悪性腫瘍の発生へ
と結びつく。
安定ヨウ素剤による予防
WHOのリポートには、何度か、「①安定ヨウ素剤の予防摂取が公式に勧告されなかった
こと、②市民達が日本国内や他の場所でも安定ヨウ素剤を摂取しなかったため、甲状腺等
価線量の推定値が、放射性ヨウ素の吸収を低減させる目的で、安定ヨウ素剤を服用し甲状
腺ブロックをした人々における推定値よりも高くなると推測されること」が明らかに述べ
られてある。
2.リポートは何を述べていないか?
原子力災害の原因について誤解を生むインフォメーション
WHOのリポートは、フクシマ原発現場の浸水がもたらしたダメージのため、3基の原子炉が
冷却不能となったと述べてあり、原子力災害の原因は津波であり地震ではないことを強調
している。
地震は比較的頻繁に起こり、世界中(特に日本)にある多くの原子力発電所は地震断層線
近くに建設されてあるため、原子力産業は、地震が核メルトダウンの原因であるという可
能性から注意をそらさせて、地震ほどは頻繁に起きないもっとエキゾチックな「大津波」
に罪を着せることに、大いに関心を抱いている。
しかし、あるドイツの包括的な研究調査が、フクシマ第一原発での原子力災害をもたらし
た構造上の損壊は地震に起因するものであり、あとに続いて起こった津波に起因するもの
ではない事を明らかにしている。NILUによって測定された大気データは、放射能放出が一
番最初に測定されたのは地震発生直後であり、第一原発が津波で襲われる前に、原子炉が
かなり損壊していた事を証明している。
日本の国会事故調査委員会はこう結論している。:
「東電は余りにも速く、原発事故の原因として津波を挙げ、地震が事故原因であったこと
を否定している。安全上重要な機器への地震による損傷がないとは確定的に言えない。」
日本の専門家グループによって、なおざりにされた被曝リスク
フクシマ第一原発敷地周辺の20キロ圏内に住んでいた人々は核メルトダウンがあった最初
の数日のうちに避難したため、専門家グループはこれらの住民の被曝リスクを顧慮しな
かった。これらの住民が、避難する前に、あるいは避難中に被曝したかもしれないという
可能性は、簡単に無視されたのだった。
国会事故調査委員会の調査は次の事柄を明らかにした。:
① 日本政府は原発事故に関して地方自治体政府に知らせることが遅かったばかりでなく、
事故の重大度を伝えることができなかった。(...)
② 具体的に謂うと、2011年3月11日の夜21時23分に、3キロ圏内からの避難が指示された
とき、福島原発の立地町の住民の内、ほんの20%だけが原発事故発生を認知していた。
③ 原発から10キロ圏内に住む住民の殆どが、15条報告から12時間以上も経っていた3月
12日の5時44分に避難指示が発令されたとき、初めて原発事故発生を認知した。しかし、
事故に関してそれ以上の説明はなく、避難先が何処になるのかの指示もなかった。
④ 多くの住民はほんのぎりぎりの必需品だけを持って(着の身着のままで)避難しなけ
ればならず、複数回、移動したり、あるいは高線量の区域に移ることを余儀なくさせられ
た。(...)
⑤ ある人達は高線量の区域に避難し、それから何の避難指令も受けず、4月まで見捨て
られたままの状態であった。
上記に既述したように、避難者たちに予防の為の安定ヨウ素剤が分け与えられなかったと
謂う不作為は特に重大な懸念すべきことである。
また、WHOのリポートには、フクシマ災害のため疑いもなく、最も高度の外部被曝を受
けたであろう作業員達の被曝量が含まれてない。‐その理由として、作業員の被曝線量測
定には異なった方法・アプローチが必要であるためと述べられてある。
大人、子供、1歳未満の幼児間の区別がない。
WHOのリポートは、3つの異なった年齢グループを設定している。そして、フクシマ原子
力災害が発生した最初の一年間に、其々の年齢グループが受けた実効線量のレベルを算定
しようと試みている。しかし、リポートには、年齢別による実効線量係数を使っているに
も拘らず、福島県に住む全ての住民の実効線量が-それぞれの年齢に関わりなく「1~10
ミリシーベルト」になるであろうと述べられてある。
この事は、リポートが、測定値を年齢によって区別しないことにより、大人、子供、幼児
の間に実存する相違点を、大雑把な平均的推定値の裏に隠しているのか、もしくは小児科
放射線医学や児童期社会学の最も基本的な観点を無視していることになる。:
一般的に子供達は大人達よりももっと長い時間、(外で遊ぶため)戸外で時間を過ごす。
子供達は地面の上や砂場、浜辺や庭で遊ぶため、吸入病原体に曝される度合いがもっと遥
かに高くなる。幼児は何でも口の中に入れる癖があって、時には土を口の中に入れたりも
する。
2011年5月、日本の文部科学省(MEXT)は、幼稚園、学校、保育園で測定された土の汚染度
を示すリストを公表した。測定された全ての場所で、放射性ヨウ素-131の量が、「1,200
ベクレル/kg」を下らなかった。最も高い測定値が見られたのは、伊達市(福島県)の小
学校で、「6,800ベクレル/kg」であった。セシウム‐137の土中汚染濃度は、「620ベクレ
ル/kgから9,900ベクレル/kg」までに至った。
生物学的に、子供は大人よりも放射線感受性が高く被曝に影響されやすい。:
①子供の皮膚の比表面積(体の寸法に比べた皮膚の表面積)は広く、透過性があるため、
より多量の放射線を吸収する。
②子供の多い呼吸分時量が、子供を空気中のより多くの病原体に曝させることになる。
③子供のより活発な組織代謝と高い有糸分裂度は、自動調節メカニズムが疾病発生を防ご
うとする前に、変異によって引き起こされる悪性罹病のリスクを高めてしまう。
④子供の免疫システムや細胞修復メカニズムは充分に発達していないので、これらのメカ
ニズムが癌の発生を適切に防ぐことが出来ない。
⑤胎内で胎児が、臍帯静脈を通して放射性アイソトープを被曝する可能性、および母体の
膀胱に集まったアイソトープから被曝する可能性もある。
⑥さらに、ヨウ素-131のような放射性アイソトープは母乳を経て運ばれる。
WHOのリポートには、このような様々な社会的、生物学的な要素について何も述べられて
いない。事実は、チェルノブイリの研究調査結果が物語っているように、最も放射線誘起
の疾病に罹患するのは子供なのだということである。しかし、WHOのリポートには、この
事が省かれていて、大人、子供、幼児でさえもが単一の被曝範囲の推定量に押し込められ
てしまっているのである。
原子力災害への不適切な対応に対して批判的でない見解
WHOのリポートは、日本当局が、住民の被曝リスクを少なくするために一定の防護措置を
とった事を認めている。しかし、リポートには、政府によって実際に為された多くの処置
が、住民の被曝量をより高くする結果に導いていったことについては何も言及されていな
い。担当当局にとってはアクセス可能だったはずのSPEEDIシステム(緊急時環境線量情報
予測システム)のデータは無視され、人々は放射線被曝リスクの低い区域から高レベル汚
染区域へと避難させられた。
「間違っていると分かっていながら、政府は、被曝の影響を受けた市民に安定ヨウ素剤を
分け与えることをしなかった。それ故、政府は住民をヨウ素-131の有害な影響から守るこ
とが出来なかった事実」-この事実に関して、WHOのリポートには何も論じられていない。
また、なぜ担当当局が、被曝を制限するための、この簡単でよく知られた方法を用いな
かったのかと謂う重大な疑問も提示されていないのである。
日本の国会事故調査委員会は公式報告でこう述べている。:
「時宜を得た安定ヨウ素剤投与の確実な効果については充分に知られていたにも拘らず、
政府の原子力災害対策本部と県政は市民に適切な指示を与えることが出来なかった。」
そして、信じがたいことに、2011年4月19日、日本政府は子供に対する被曝許容量を「3.8
マイクロシーベルト/時」に引き上げた(=およそ「20ミリシーベルト/年」)この被曝許
容量に対して親、科学者たち、医師たちから成るグループが抗議したことによって、やっ
と5月27日、政府はこの新しい目安を撤回し、元の「1ミリシーベルト/年」の基準値に戻
したのだった。
国会事故調査委員会は日本政府の危機管理に対して、WHOのリポートよりももっと批判的
である。:
①委員会は、官邸の危機管理体制、規制当局、他の担当機関が正しく機能しなかったため、
状況が悪化したものと結論付ける。
②(...)これまでの規制当局の原子力防災対策への怠慢と、当時の官邸、規制当局の
危機管理意識の低さが、今回の住民避難の混乱の根底にあり、住民の健康と安全に関して
責任を持つべき官邸及び規制当局の危機管理体制は機能しなかった。
③(...)政府、規制当局には住民の健康と安全を守るための意思が欠如している。;
住民の健康を守るため、被害を受けた住民の生活基盤回復するための対策が為されなかっ
た。