俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

格安チケット

2010-03-09 16:12:38 | Weblog
 株主優待券が格安チケット店に出回り易いことは誰にも理解できる。配当や株価の上昇を期待してその株を持っている株主にとって株主優待券はオマケのようなものだ。また優待券の市場価格が高ければ自分で使うよりもチケット店に売ったほうが得だ。例えばJR西日本の株主優待券の特典は半額割引だが、運賃が9,000円以上かかる旅行や出張の予定が無ければチケット店に4,500円で売ったほうが得だ。
 チケット店では株主優待券以外に必ず新幹線の回数券が売られている。余程の事情が無ければわざわざ買ったチケットを売る人はいない筈だから、その店が回数券を買ってばら売りしているのだと思っていた。しかしどうやら売っている人が少なくないらしい。
 法人税を納めたくない中小企業は様々な脱税策を行う。その手口の1つとして交通費の水増しという方法がある。企業の利益相当額で新幹線の回数券を買ってそれをチケット店に売れば裏金にできる。つまり回数券の代金を出張旅費として計上すれば経常利益額をゼロにして法人税を免れることができる。回数券の売却代金はまるまるポケットマネーになる。
 こんな手口を使われたら幾ら税務署でも脱税の立証は困難だ。

陽性

2010-03-09 15:56:57 | Weblog
 精度90%の検査で陽性と判定された人は90%の確率で病気なのだと思うだろう。私も最近までそう思っていた。ここに統計のマジックがあった。
 仮に2%の人が実際に感染していて被験者が1,000人だったとする。感染者は20人、非感染者は980人となる。
 感染者20人に対する検査では18人が陽性、2人が陰性と判定される。
 一方、非感染者980人に対する検査では98人が陽性で882人が陰性と判定される。
 その結果はどうなるか。陽性反応の116人(18人+98人)中、本当の感染者は僅か18人(15.5%)でしかない。精度90%の筈の検査なのに陽性反応者の僅か15.5%しか本当の感染者がいないということになる。
 もし1%しか感染者がいない場合はもっと酷いことになる。陽性反応者の108人中9人(8.3%)だけが本当の感染者になってしまう。精度90%ではなく誤度90%だ。(試算してみて下さい。)
 私自身「肺ガンの疑い」と間違って診断され、精神的・時間的・金銭的に損害を蒙ったことがある。もし難病と診断されても、それが珍しい病気であればあるほど誤診の可能性は高いのだから、諦めず積極的にセカンドオピニオンを求める必要がある。

善と悪

2010-03-09 15:45:56 | Weblog
 卵が先か鶏が先かのような不毛な議論をするつもりは無いが、善と悪に関しては悪が先行すると思われる。つまり善の否定が悪であるのではなく、悪の否定として善が成立すると思う。
 悪いことがあり得るからそれを予防あるいは減少させることが「善」とされる。暴力があるから非暴力が善いことであり、飲酒運転事故があるから飲酒運転をしないことが善いこととされる。
 これは決して善悪に限ったことではない。あらゆる「良いこと」は「悪いこと」の否定として最も正確に説明できる。健康とは何か、病気や障害が無いことだ。若さとは何か、老化していないということだ。マナーとは何か、周囲に迷惑をかけないということだ。生とは何か、死んでいないということだ。安全とは何か、危険でないということだ。平和とは何か、戦争中でないということだ。このように「良いこと」は「悪いこと」の否定によってこそ定義が可能になる。「無事」こそ「良いこと」を意味する。
 善がこんな消極的な概念ならばそれを大上段に振りかぶった議論が破綻するのは当然のことだ。