俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

クロール

2010-06-08 15:33:49 | Weblog
 クロールは最も早く泳げる泳法だが、推進力が優れているのではなく水の抵抗が最も小さいから早い。そのため最も早く泳げる泳法でありながら最も疲れない泳法でもある。クロールのコツは手足による推進力を高めることよりもむしろ体を棒状にして無駄な抵抗を作らないことにある。
 実は平泳ぎのほうが推進力は大きい。しかし上下動があって水の抵抗が大きいためにクロールよりも遅い。
 このことを一番痛感したのは宇宙飛行士の若田光一氏だろう。氏が宇宙船の中で、クロールを使って移動しようとしたところ全然進まなかった。平泳ぎに切り替えたらクロールの数倍の速度になった。
 空気は水と比べて抵抗が小さいから、空中遊泳の場合は、推進力も抵抗も小さいクロールよりも、推進力も抵抗も大きい平泳ぎのほうが早く泳げる。若田氏がクロールから平泳ぎに切り替えた時に番組のキャスターは「クロールが下手ですね」と笑ったが、下手なのではない。推進力が乏しいクロールが空中遊泳には向いていないだけのことだ。
 抵抗の多い組織(例えば公務員)では推進力は余り必要無い。いかに抵抗を少なくするかが仕事の成否を決める。一方、抵抗の少ない組織(例えば一部のベンチャー企業)では推進力が必要だ。推進力と抵抗のバランスを見極めることが組織内で成功するための鍵となる。

トップダウン

2010-06-08 15:20:50 | Weblog
 組織の運営においてトップダウン方式とボトムアップ方式がある。トップダウンは優秀なリーダーの指示に全員が従う仕組みであり、対応が素早く統制を取り易い。
 ボトムアップでは所属員の意見を採り入れるのでキメ細かい対応が可能だが統制に欠け対応は遅れ勝ちだ。
 一般に日本式経営はボトムアップで、アメリカ式はトップダウンだと言われている。どちらが優れているかは一概には言えない。例えば、日本式経営で倒産の危機に瀕した日産はカルロス・ゴーン社長によるトップダウン経営で甦った。
 このように非常時にはトップダウン方式は有効だが、そうでなければボトムアップのほうが優れている。何しろ考える人の数が全然違うのだから。
 「下手の考え休むに似たり」と言うが、組織は下手ばかりが集まっている訳ではない。それどころかそれぞれの分野の達人揃いだ。せっかく揃っている達人の知恵を生かさないのは勿体ない。
 共産主義国家が崩壊した主因は共産党独裁制だろう。何もかもトップダウンで進めるから現場との乖離が生じ易い。理念と現実が食い違った場合、見直すべきなのは理念のほうなのに、トップダウンの場合は往々にして現実のほうが否定されてしまう。
 

2010-06-08 15:08:29 | Weblog
 欲は抑圧されるべきものではなく制御されるべきものだ。
 欲こそ人間の原動力だ。少なくとも生きる意欲が無ければ生きることさえできない。
 金銭欲も恥ずかしいことではない。金が無ければ飢え死にするしかない。金の亡者になって、不正な手段を使ってまで金儲けをしようとすることが浅ましい。
 性欲も自然なものだ。性欲の無い動物は絶滅する。痴漢という犯罪は性欲のせいではなく「性欲を制御できない」ということが原因だ。欲そのものが悪いのではなく制御できないということが悪い。
 最近、性欲の乏しい植物系男子が増えているそうだが、性欲を汚いもの・恥ずかしいものと刷り込まれたために性欲そのものを否定してしまった可哀そうな人だろう。
 食べ過ぎる人は食欲を制御できない人だ。健康に良い適量を知っている人ならどれだけご馳走を並べられても食べ過ぎたりしない。
 向上心は今よりも優れた人間になろうという欲求だ。向上欲が乏しい人は現状に満足して鍛錬を怠り徐々に劣化する。
 欲こそ個人を成長させる。欲を肯定的に捉えねばならない。欲を否定して抑圧しようとすれば、欲は健やかな成長をせずに歪んだ欲望へと変形してしまう。