俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

百貨店

2010-08-24 15:28:24 | Weblog
 私は百貨店共通券の愛好者だが、百貨店のヘビーユーザーという訳ではない。私が百貨店で買うのは書籍と第3のビールと煙草だけだ。
 百貨店は時代に取り残された業態だ。駅に近いという至便性以外に何の魅力も無い。
 スーパーマーケットが現れるまで、百貨店は定価で、一般の小売店は定価+αの価格で販売していた。つまり百貨店は相対的に周囲よりも安く販売していた。当時の三越のスローガンは何と「良い品を安く」だった。その後ダイエーが「良い品をどんどん安く」をスローガンにしたから三越のスローガンは消えた。
 セルフサービスを導入して低価格での販売を可能にしたスーパーも当初は怪しげな業態だった。「スーと現れてパーと消える」と陰口を叩かれた。つまり所詮は「安かろう悪かろう」の業態に過ぎなかった。
 今のスーパーの商品は決して粗悪品ではない。イトーヨーカ堂のウナギのような失敗も時にはあるが、百貨店と同じまたは同等の商品を百貨店より安く売っている。
 そのスーパーでさえ苦戦しているのだから百貨店は絶望的だ。わざわざ割高な百貨店で買おうとする物好きな人が減るのは当たり前のことだ。
 書籍なら日本中同じ価格だ。株主優待券に商品券を組み合わせれば、書店で図書カードを使って買うよりも安く買える。
 ターミナルで喉が渇いたら百貨店の酒売り場へ行く。商品券を使えば駅構内の売店やコンビニよりも割安になるからだ。
 煙草も定価販売品だ。安く買った商品券を使えば実質的に値引き販売になる。
 私にとって百貨店とは定価でしか売られていない商品を安く買う場所でしかない。

消毒

2010-08-24 15:13:20 | Weblog
 2008年2月20日付けの「薬のリスク」で「薬は毒だ」と書いたがその時点では消毒薬まで毒だとまでは考えていなかった。傷口を消毒しなければ化膿したり、酷ければ破傷風にもなりかねないと思っていたからだ。
 昨年「傷はぜったい消毒するな」(夏井睦氏、光文社新書)という興味深い本に巡り会ったが、余りにも現在の医療常識とは懸け離れた内容だったので到底鵜呑みにはできなかった。その後、様々な医療関係の本を読み、再度この本を読み直して納得した。消毒薬も毒だ。
 消毒薬は蛋白質を破壊する。つまり悪い菌と同時に、皮膚そのものと皮膚常在菌を破壊してしまう。浸みると感じるのは皮膚が破壊される痛みだ。
 皮膚常在菌とは言わば善玉菌だ。皮膚上で増殖するが宿主には全く害を与えずに悪玉菌を排除する、人間と共生関係にある菌だ。消毒は敵味方を区別せずに無差別に破壊する行為に当たる。メリットとデメリットを比べれば圧倒的にデメリットのほうが多い。まるで東京に現れたたった1匹の虎を退治するために核兵器を使うようなものだ。
 最近ようやく「エヴィデンス(証拠)に基づく医療」が注目されるようになった。これまでは権威に基づく医療だった。自然科学と違って医療では実験は許されない。実験の代わりに厳密な統計に基づいて見直されれば医療はオカルトから科学へと進歩するだろう。

デフレ(2)

2010-08-24 14:54:49 | Weblog
 多分、現時点で日本は世界一物価の高い国だろう。円安が続いていたためにしばらく騒がれていなかったが、円高の今、日本は世界一物価の高い国の座に返り咲いたと思われる。
 これは奇妙なことだ。デフレが続いている国の物価が世界一高いなどということなどあり得ない筈だ。結局、元々の価格が高かったということ(6月15日付け「デフレ」参照)に加えて、高い品と安い品が混在していることが原因だろう。
 安い品の代表格は家電、自動車、時計、カメラなどの工業製品だ。これらは技術力を生かして、高品質の品を安価で量産しているから国際競争力も持っている。
 タイのデパートで家電売り場を見てその高さに驚いた。バーツではなく円で表示しているのかと思うほど高かったからだ。1バーツは大体3円だから日本での価格の3倍だった。
 高い品の代表は一部の農産物だろう。中でも米は国際価格の約10倍で流通している。
 小麦も国際価格の約3倍らしい。そのためにパンやうどんなどの小麦加工品も高くならざるを得ない。折角、世界に誇れる大発明のインスタントラーメンがありながら、国産を輸出することは困難で、現地生産をせざるを得ない。これは国内での雇用機会を損なっている。
 他に豚肉やバターなどにもボッタクリに近い関税や天下り団体による独占輸入の弊害が出ている。米価の高値維持は農業の保護という目的があるだろうが、その他については農水省の利権確保としか思えない酷い仕組みだ。
 ただのパフォーマンスに堕しつつある事業仕分けよりも、農水省の事業見直しをやったほうがずっと国民のためになるだろう。
 なぜマスコミは個々の物価の国際比較をしないのだろうか。