俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

生兵法

2010-08-27 15:13:20 | Weblog
 鳩山前首相がアメリカからloopyと馬鹿にされ始めたのはtrust meと言ったからではないかとふと思った。
 trustは英和辞典では「信用する、信頼する」とされている。信頼とは「信じて頼ること」だ。つまり上位者が下位者に対して使う言葉ではないのだろうか。英文学者が全く指摘していないので、もしかしたら間違っているかも知れないが、アメリカ人のオバマ大統領が鳩山前首相の思いとは全然違ったニュアンスで捕らえた可能性は充分にある。
 翻訳はプロの通訳でもしばしば失敗する。「不沈空母」や「ウサギ小屋」などは明らかに誤訳だったが気付かれないままに定着してしまった。
 日本人が下手な英語で恥をかくのは当たり前のことだが、英米間でさえ誤解が起こることがある。
 「転石は苔むさず」と訳されている`A rollong stone gathers no moss'はイギリスでは「フラフラするな」という意味だがアメリカでは「絶えず変革せよ」の意味で使われている。
 「君が代は(中略)苔のむすまで」という歌詞の国歌を持つ日本人はイギリス人と同様、苔を肯定的に捕らえる。しかし歴史と伝統を欠くアメリカ人にとって苔とは黴や垢のような汚れでしかない。そのため同じ英語文化圏にありながら諺が全く逆の意味になってしまった。
 英語力を誇りたい人は通訳に頼ろうとしないがこれは実は危険なことだ。言葉は生き物であってニュアンスは常に変化する。日本語でも「ヤバイ」とか「フツー」などのニュアンスは5年前とは大きく変わっている。現地にいない限りこの変化には気付かない。



適応者

2010-08-27 15:00:59 | Weblog
 社会適応者とは実は歪んだ人間でしかないのかも知れない。
 例えば北朝鮮に住んでいて飢えと寒さに苦しみ、家族が続々病死していても「将軍様のお陰で幸福な人生だ」と感じる人は北朝鮮社会への過剰適応者であり気の毒な人としか言いようが無い。
 もし家畜に意識があれば「我々は幸せだ。重労働から解放され、肉食獣や伝染病に脅えることも無く、毎日旨い物をたらふく食べている」と思っているかも知れない。しかし彼らを待っているのは場だ。
 「社畜」であることに生きがいを感じる人は少なくない。しかし社畜は奴隷以下だ。
 イソップが生きた時代のアテネには3万人の市民と40万人の奴隷がいたと言われている。この圧倒的多数を占める奴隷の仕事とは、単に肉体労働だけではなく、公務員や教師や事業経営者までいたそうだ。
 要するに有償の仕事とは総て奴隷の仕事だった。当時の市民は、現代の欧米の資本家の如く、奴隷から搾取し奴隷を売買し、本人はソクラテスのように毎日ぶらぶらと遊んでいた。
 社会適応者とは奴隷の身分に安住する者に過ぎない。

加工貿易

2010-08-27 14:44:48 | Weblog
 資源の乏しい日本の得意技は加工貿易だ。原料を輸入してそれを加工した製品を輸出して外貨を稼いでいる。
 日本では鉄鉱石もレアメタルも殆ど産出されない。これらを輸入して、技術力を生かして付加価値を付けた自動車や家電などを輸出している。
 日清食品の安東百福氏が発明したインスタントラーメンの場合、日本オリジナルの大発明なのだから、得意の加工貿易によって大いに外貨を稼げる筈なのだが、そうではない。世界で年間900億食の大市場がありながら日本の生産量は僅か50億食でしかない。なぜか?
 小麦を輸入するためには250%の関税を負担するか、農水省の食料貿易課経由で購入するかしか無い。タテマエ上は小麦農家の保護だが、実態は農水省の利権維持だ。
 8月24日付けの「デフレ(2)」でも触れたが、日本の小麦の価格は世界一高いから小麦の加工貿易は不可能だ。日本でインスタントラーメンを作れば高過ぎて現地の食品と競争できない。そのために国外で生産せざるを得ない。
 いっそのこと自給率10%で品質も悪い小麦など生産禁止にすべきだと思う。国産の小麦さえ無ければ農家を保護する必要も無くなり関税を下げられる。関税さえ下がれば加工貿易が可能になり、国内に工場ができて雇用も生まれ外貨も獲得できる。勿論、国内で消費する小麦も小麦加工品も大幅に値下がりする。
 農水省とは省益のために国民を犠牲にする国賊ではないだろうか。