俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

個人金融資産

2010-10-01 17:30:38 | Weblog
 日本の個人金融資産は約1,400兆円あると言われている。高齢者が溜め込んでいる資産が消費に回されたら景気が良くなるという意見があるが本当にそうだろうか。
 もし個人の資産が箪笥預金ばかりなら、仮死状態の金が生きた金へと蘇ることになるだろう。しかし実態は全然違う。多くは郵便局(郵貯、簡保)や銀行に預けられたり、株式市場に投資されたりしている。そして郵便局や銀行に預けられた金は国債の購入や企業への貸し出しに使われている。
 こんな個人金融資産が激減すればどうなるか。銀行は定期預金よりも遥かに高金利で資金を調達せねばならなくなるので企業への貸し出し金利が上昇する。郵便局は国債を買えなくなるので国債が値下がりする(=金利が上昇する)。
 つまり個人金融資産の減少は必然的に金利の上昇を招く。ローンの金利も当然上がるから、若い世代でも貯蓄に回せる金が減る。こうして預貯金減少の連鎖が起こる。
 金利が上がれば株式市場に投資されている金の一部が預貯金に回されるがこれは株価の低下に繋がる。また国の借金も金利が上がった分だけ更に拡大する。
 実際に高齢者の貯蓄は減りつつある。人数が増加しているのでグロスの額は増えているが、個々の世帯では預貯金を取り崩して生活費に充当している。預貯金の減少は決して手放しで喜べる話ではないだろう。

隗より始めよ

2010-10-01 17:16:49 | Weblog
 この言葉の出典は「戦国策」で「身辺のことをまず改善せよ」という意味だ。
 日本の政治家も是非隗より始めて貰いたいものだ。つまり政治家の給料と役人の天下りを何とかしないとこの国に明日は無い。
 国会議員の給料は年間約2,200万円だ。この時点でアメリカのクリントン国務長官よりも高額だ。更に「文書通信交通滞在費」として一律年間1,200万円が支給されている。しかもこれは必要経費として支給されるので非課税だ。
 大阪の橋下知事と名古屋の河村市長は議員報酬と議員定数を削減すべく活動して市民の大きな支持を得ているが、一番高給取りの国会議員の報酬については全く議論されていない。
 知事や市長は常勤でしかも重責を担う。一方、議員は非常勤で、議会にさえ出席すればそれ以外は自由であり、非合法活動でなければ何をしていても構わない。しかも党派の頭数でしかないから責任も軽い。そのため知事や市長は議員報酬が不当に高く人数も多過ぎることに気付く。
 しかし大臣は大半が国会議員だ。国会議員でもある大臣が自らの待遇の改悪など言い出す筈が無い。こんな事情だから、日本が議員内閣制を廃止して大統領制を採らない限り、世界一高い国会議員報酬が見直されることは無いのかも知れない。

不定

2010-10-01 16:58:55 | Weblog
 A氏宅は学校の正門から50m、B氏宅は30m離れている。A氏宅とB氏宅の距離は何mか?(但し正門の大きさは無視する。)
 驚くべきことにこれは中国の小学校1年生の授業で出された問題だそうだ。日本人なら大人でも馬鹿な答えを出したり「不明」と答えたりするのではないだろうか。正解は「20~80m」だ。
 A氏宅とB氏宅と学校の相互の位置関係は不明だ。従ってあらゆる位置関係を想定して初めて答えが導き出される。現代の日本人はこんな考え方が最も苦手で安易に「不明」と答えてしまうのではないだろうか。
 もともと日本人は非常に柔軟な思考力を持っていた。外国の文化や制度を採用するに当たっては常に是々非々の姿勢を守っていた。「AかBか不明か」といった三択ではなく「A~Bの不定」という答えを導くことを最も得意とする民族だったと思う。
 不明と不定は全然違う。不明とは「分からない」ということだ。一方、不定とはある程度は分かっているが特定できないということ、つまりグレーであるということだ。
 なぜ日本人の知力が低下したのだろうか。多分「正解は1つ」とする学校教育に問題があるのだろう。もう1つは物事を単純化して白黒を決め付けたがるマスコミの影響も見逃せない。 
 データが不充分であっても「分からない」と諦めるべきではない。分かる範囲で資料を集めてそこから導き出せる複数の仮説を想定すべきだろう。これが危機管理にも繋がる。完璧にデータが揃うまで待っていたら手遅れになってしまう。