俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

所得税

2010-10-26 15:28:02 | Weblog
 大阪国税局の発表によると、近畿2府4県の個人事業者らの所得税の申告漏れが、調査した77,102件のうち74%の57,061件で見つかり、金額は約1,631億円、追徴課税額は約245億円だったとのことだ。
 申告漏れが1,631億円なら、少なくともまるまる追徴しても良いと思うのだが245億円しか追徴されない。犯罪者を甘やかすから脱税が横行する。
 調査対象の74%から申告漏れが見つかったということをどう評価するかは意見が分かれるだろう。怪しい人だけを調査したから高い数字になったが実際はもっと低いという解釈も成り立つし、申告漏れがバレなかった人もいるからもっと高い筈だという解釈も成り立つ。どちらが正しいか分からないから74%を鵜呑みにしておこう。
 課税は公平であるべきだから個人事業者が誤魔化し得になる所得税には致命的な欠陥があると言わざるを得ない。このような不公平を放置したままで所得税を増税すれば正直者とサラリーマンだけに増税を強いることになる。
 従って増税のための見直しは次のどちらかであるべきだ。①所得税の脱税を厳罰化して脱税が発覚したら大損をするような仕組みに変える②比較的公平な消費税を増税する。
 私は①を推す。刑法ではボールペン1本盗んだだけで懲役刑になることがある。たった100円盗んだだけで懲役刑になる人がいる一方で、何百万円も脱税をしても少額の罰金だけで済むということはどう考えても不合理だ。悪質な脱税者に厳罰を課することには、脱税の当事者以外の総ての国民が賛同するのではないだろうか。

人間の変異

2010-10-26 15:12:02 | Weblog
 この文は前の(画面上では「次の」)「変異と進化」の補遺なのでそちらを先に読んで欲しい。変異の多さを不適応現象としたが、抽象論では分かり辛いかも知れないので人間を例にして具体的に説明する。
 背の高い人や低い人がいることは個体差であって生物学的な意味での変異ではない。極論だが、変異とは親とは違った生物が生まれるということだ。
 変異が多ければどんな子供が生まれるか分からない。福笑いのような顔の子供が生まれる程度のことでは済まない。頭の無い子や猿や両生類のような子が生まれることが変異だ。
 変異が多い状態では遺伝子のコピーが正常には機能せず大量の出来損ないの子孫が生まれる。ミスコピーである子孫はごくごく稀に環境に適応することもあるが大半は死滅する。それぞれが安定してしかも個体差がある「多様性」は生物にとって望ましい状態だが、変異の多さは逆に絶滅に繋がりかねない。
 サリドマイドなどの薬害や放射能による遺伝子損壊などによって奇形児(変異体)が生まれることがあるが、これを多様化や進化と考える人はいない。
 変異の発生の増加を進化の可能性の増加と考えるのは余りにも能天気だ。殆どの変異は不適応を招く。変異が多ければその大多数は死滅する。たまたま環境に適応した変異体の変異が少なくなった時点で初めて進化を遂げたと言える。進化とは変異体が環境に適応してそれが安定することによって初めて達成される。

変異と進化

2010-10-26 14:54:50 | Weblog
 大阪大学の四方教授が大腸菌を使ってこんな実験をした。(情報源は10月22日の朝日新聞朝刊)
 大腸菌の生存限界は41~42℃とされているが、43℃で培養して生き残った菌を45℃で培養したところ、変異の発生率が10倍になったそうだ。
 このことから四方教授は「環境が苛酷なほど進化が加速される」と結論付け、記事の見出しは「大腸菌 高温で進化次々」「厳しい環境が個性派生む?」となっていた。
 この結論は間違っている。四方教授が間違ったのか記者が誤解したのかは定かではないが、進化は促進されていない。促進されたのは変異だ。
 同じ種であろうと個体差はある。変異し易いかどうかも個体差がある。環境が安定している場合は変異が少ない個体のほうが生存の可能性が高い。変異の方向性はランダムなので変異した子孫の大半が不適応者になるからだ。
 ところが環境が変わった場合は変異し易い不安定な個体のほうが有利になる。変異し易い個体のほうがまぐれ当りで環境に適応できるからだ。その結果として変異し易い個体が増殖する。環境の変化が進化を促すのではなく、変異し易い不安定な個体だけが生き残ることによって全体としての変異の発生率が高まる。
 変異は必ずしも進化には繋がらない。変異の多い個体は安定した環境の元では短命な不適応者だ。変異が多い生物は絶滅する可能性が高いとさえ言える。
 変異の多さは進化ではない。言わば不適応現象であり、進化のための過渡期でしかない。