俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

派遣労働者

2010-10-15 16:13:28 | Weblog
 政府は製造業への労働者派遣を禁止しようとしているが、私は労働者派遣を百害あって一利無しだとは思わない。
 仕事上で多くの派遣労働者と知り合ったが、彼らの多くは決して派遣労働に不満を持っていなかった。派遣元と労働者は結構長い付き合いをしている。派遣元は派遣先での勤務ぶりに関する情報を蓄積しているから、勤務態度の良い人ほど優先的に派遣されるから仕事は安定しているそうだ。
 特にIT関係の仕事はシステムの導入時にだけ極端な突貫作業が発生するので、受け入れ側にとっては経験豊富な技術者を派遣して貰えれば一騎当千の非常に貴重な戦力となる。
 派遣労働を禁止した場合、どんな雇用が増えるだろうか。少なくとも正社員ではない。パートやアルバイトなどの臨時労働者が増えるだけだ。
 概して臨時労働者の賃金は派遣労働者よりも低い。正社員の次に高賃金なのは派遣労働者だ。これが無くなれば求職者はもっと劣悪な労働条件を受け入れざるを得なくなる。個人は弱いものだ。
 派遣労働には問題点もある。しかしそれを改善するのではなく禁止するのは悪しき二分法だ。
 もしかしたら労働組合を支持基盤とする民主党は正規雇用者の既得権益を守ろうとしているのではないかとさえ勘繰りたくなる。

ゆ党(2)

2010-10-15 15:56:10 | Weblog
 独裁国かどうかは簡単に識別できる。野党の存在が認められているかどうかだ。野党が認められていない国では言論統制が行われ、権力を批判することは国家に対する反逆罪とされる。
 批判されない権力はどうなるか。権力者のやることは総て正しいということになり暗愚な支配者が統治する馬鹿殿国家になって腐敗する。こんな組織には自浄能力は無いから、敗戦か革命かクーデターでも起こらない限りまともな国となり得ない。
 権力は分散されることが望ましい。立法・行政・司法の三権分立は必要不可欠であり、更に司法は裁判官・検事・弁護士の三竦みになっている。もし司法を検察が牛耳ってしまえばどんな恐ろしいことになるかは、最近の大阪地検の暴挙を見れば火を見るよりも明らかだろう。
 国家を円滑に運営するためには三竦みが一番良いように思える。政治も与野党による対立的構造は、失政の追及に終始する不毛な議論を招き勝ちだ。その中間の「ゆ党」が存在すればそれがキャスティングボートを握って健全な政策が推進され易い。
 世界的にも「ゆ党」制が広がっている。今や二大政党制は先進国ではアメリカだけだ。イギリスでは自由党が「ゆ党」から連立与党になった。ヨーロッパ各国は昔から複数の政党による連立政権だ。
 日本もかつてのような自民党による一党支配や自民・民主による二大政党という前近代的なシステムから脱却して、「ゆ党」を含む複数の政党による議会運営が望ましい。そのためには安易に白黒を決めて対立関係を煽る小選挙区制は早急に廃止するべきだろう。

薬のリスク(2)

2010-10-15 15:34:41 | Weblog
 薬の本質は「毒をもって毒を制す」だと思う。毒物は人体に異常な反応を起こさせる有害物質だ。この毒物を少量摂取することによって薬として使っている。
 血圧を下げる毒物があるとする。健康な人が飲めば毒でしかない。しかし高血圧の人がこの毒物を適量飲めばそれは薬になる。そしてその人は延々とその毒物を服用せざるを得なくなる。なぜなら薬によって血圧を下げられた人の体は、自力で血圧を下げる機能を低下させているからだ。それは重力の無い生活を続けた宇宙飛行士の筋肉が急激に衰えるようなものだ。人間の筋肉や内臓は使わなければ凄まじい勢いで劣化する。同じ薬を長期間服用することは内臓の機能をアウトソーシングすることと同じであり自律することは著しく困難になる。
 近年、鬱病が激増しているそうだが、これも同じメカニズムが働いているように思われる。日本では1999年にSSRIという抗欝剤が承認され、投与時における副作用が比較的少ないこともあり大量に処方されているそうだ。この薬はセロトニンという脳内の神経伝達物質が神経細胞に吸収されることを妨げることによって欝状態を改善するらしい。欧米では簡単に幸福感を得られることからハッピードラッグとも呼ばれているそうだ。
 こんな薬を長期間服用していたら手放せなくなる。薬をやめたら脳がセロトニン不足の状態になってたちまち鬱病が再発する。これはまるで麻薬や覚醒剤で鬱病を治療しようとするのと同じぐらい危険な医療行為ではないだろうか。最悪の対症療法だ。
 急激に悪化する感染症の場合は細菌やウィルスと戦うためにたとえ危険な薬であろうと投与する必要があるが、鬱病は決して激しく進行する急性疾患ではない。抗欝剤の投与はできるだけ少量かつ短期間を原則とすべきだろう。