俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

ホルモン料理

2010-11-19 15:34:50 | Weblog
 ホルモン料理の語源については二説がある。
 内臓を食べたらホルモンが摂取できると考えて名付けられたという説と「放る物」だったからだという説だ。
 明治時代に肉食が定着しても日本人は余り内臓を食べなかった。しかし栄養価は内臓のほうが高い。肉食動物は獲物の内臓を真っ先に食べる。その価値を知っているからだろう。
 イヌイット(エスキモー)も動物の内臓を大切にする。内臓を食べるから野菜を食べなくてもビタミン欠乏症に罹らないそうだ。
 私個人としては大学生の時に王将でレバー炒めを食べたのが最初だ。安くて旨くて栄養価が高いという貧乏学生にぴったりの食べ物だった。
 その後モツ鍋などが流行ったりして内臓料理は広まったが内臓に抵抗感を持つ人は少なくない。
 生命を残さず食べる洋食と比べて和食は贅沢な料理だと思う。旬の素材の一番美味しい部分だけを使う。他の部位は一部が従業員の賄いに使われるが多くは捨てられると言う。和食のルーツが京の貴族料理だからこんな勿体無い食文化になったのだろう。
 むしろ二級の食材を調理技術によって生かす中華料理のほうが食材を無駄にしない。素材の良さを生かすという和食のコンセプトは素晴らしいが、悪い素材をどうするかということには和食は無頓着と思える。料亭が「放る物」を勿体無いと思って大衆向け料理にしたのが居酒屋ではないだろうか。

超法規的措置

2010-11-19 15:20:44 | Weblog
 私は決して超法規的措置を否定しない。それどころか必要だとさえ思っている。但しその事情を説明できるということが絶対に必要不可欠の条件だ。
 古い話だが昭和50年にこんな実例がある。
 マレーシアのアメリカ大使館とスエーデン大使館が日本人過激派の赤軍派によって占拠された。彼らは拘留中の赤軍派のメンバーの釈放を要求し、日本政府は超法規的措置で人質交換に応じた。
 今なら「テロに屈するな」という声もあろうが、当時としては国内の問題で外国にまで迷惑を掛けられないという意見が強く、当時の三木首相に対する非難の声は殆ど記憶に無い。
 法律は融通が効かない。杓子定規的な対応しかできない。公平性を優先する余り個別の事情を斟酌できない不完全なシステムだ。
 こんなケースがあり得る。
 踏切以外では線路内に立ち入ることは禁じられている。しかし駅のホームから線路に落ちた人を救うためには一般客が線路に降りざるを得ない。救出のために降りた人が駅員に咎められるということは絶対に無いが、本来は違法行為だ。こんな身近な超法規的措置は無数にある。法律は不完全だからだ。
 事件が公になった時に違法行為を見逃したことを合理的に説明できないのが悪い超法規的措置だ。権力者による揉み消しや仲間内での馴れ合いなどがそれだ。中国人船長の釈放も悪い超法規的措置であることは言うまでも無い。

加工貿易(2)

2010-11-19 14:58:41 | Weblog
 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加したら大変なことになるし参加しなくても大変なことになる。
 参加しなかった場合、日本の産業は国際競争力を失う。自動車も家電も輸出ができなくなって現地生産に切り替えられる。つまり国内での雇用が激減する。
 参加した場合は農業がダメージを受ける。農林水産省が言うように4割減るとは到底考えられないがダメージは少なくない。このことを前原外務大臣のように「第一次産業はGDPの1.5%に過ぎない」と切り捨てるべきではない。農業か工業かの二者択一を迫ることは根本的に間違っている。農業も工業も守るべきでありそれは単なる理想論ではなく現実的に可能なことだ。農業そのものに対する補助も必要だがそれ以上に新しい産業を作ることこそ今の閉塞状況を打開する鍵となる。
 唐突だが、世界一の小麦の輸入国がどこなのか御存知だろうか。山勘では絶対に当たらない意外な国だ。なんとあのパスタの本場のイタリアだ。イタリアでは輸入した小麦をパスタに加工して外貨を稼いでいる。
 資源の乏しい日本は工業製品の加工貿易によって国力を高めた。ところが食料品の場合、農林水産省の悪政のせいで加工貿易ができない状況に追いやられていた。馬鹿高い関税を掛けられているから食料品の加工貿易は不可能だった。
 食料品の輸出入市場の7割を加工品が占めている。つまり小麦や大豆などの穀物や畜産品の市場よりもパスタや酒類や菓子などの加工品の市場のほうが圧倒的に大きい。それにも関わらず日本は国内農業を守るという農水省の大義名分のせいで、技術がありながら食料品の輸入国であり続けるしか無かった。
 世界市場を目指す新たな事業は即席麺などの食品加工業つまり1.5次産業だ。中でも酒類は有望だと思う。日本は世界でも稀な水に恵まれた国だ。国内の清浄な水と輸入麦による加工食品が新たな世界戦略商品となって将来の繁栄へと繋がる可能性は極めて大きい。