俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

欠陥か人災か

2011-04-22 15:37:46 | Weblog
 今回の原発事故は施設の欠陥によるものか初期対応の拙さによるものか明確にする必要がある。これは犯人探しが目的ではない。今後の原子力政策の方向性を定めるためには絶対に避けて通れない問題だ。
 仮に菅首相が主張するように対応が万全だったのなら、原発の構造的欠陥だ。最善の対応をしても防げなかったのだから少なくともマークⅠ型原発は総て早急に廃炉にすべきだろう。
 もし対応に不備があったのならどこが悪かったのかを明確にすべきだ。失敗から学ぶことによって今後の事故を防ぐことができる。失敗から学ばなければ教訓は生かされない。曖昧に済ませるべきではない。
 私個人は福島第一原発には特有の欠陥があったと思っている。すぐ傍を通っている東北電力の電源を使わずに、遥か茨城県から東京電力の電源を引いていたことが最大の問題点だと思っている。しかし私以外には誰もこんな指摘はしていない。従ってこの第三の要因は棚上げしておこう。
 原因究明を好まない日本人の気質からすれば、両方悪かったとか複合的な事故だということにしたがるだろう。しかしそれでは対策を立てられない。
 原発の事故が必然だとすれば廃炉しか選択肢は無い。もし人災なら対応マニュアルの早急な作成が必要だ。
 何が原因なのかについては専門家に結論を出して貰いたいものだ。結論が出なければ原発は危険な代物であり続ける。また同じ事故が繰り返されることになりかねない。

能力と意欲

2011-04-22 15:20:02 | Weblog
 能力が無いのに意欲だけがある指揮官が最悪だ。このことは世界中の軍隊での常識だ。
 能力が無いのに意欲だけがある指揮官は猪突猛進をさせたがる。正面から攻めて華々しく勝とうとする。しかしその実態は無為無策に過ぎない。
 能力が無いのに意欲だけがある指揮官は引き際を知らない。不利な戦況になっても闇雲に戦力を投入して全滅を招く。
 能力が無いのに意欲だけがある指揮官は失敗に懲りない。一度だけの戦勝に浮かれて何度でも同じ失敗を繰り返す。
 能力が無いのに意欲だけがある指揮官は兵士が人間であることを理解しない。人間だから誰しも死にたくないのに将棋の駒のように使い捨てにしようとする。それは必然的に面従腹背を招く。
 旧日本軍が惨敗を繰り返したのはこんな能力が無いのに意欲だけがある指揮官が少なくなかったからだと私は考える。
 イギリスとの戦闘において日本陸軍は背後を衝く奇襲作戦を繰り返したそうだ。奇襲だから最初は成功した。しかし英国軍が奇襲に備えて迎え撃ちを始めると戦力を分散した日本軍は連戦連敗となった。
 日本軍の指揮官は義経流の奇襲作戦を馬鹿の1つ覚えで繰り返した。相手に読まれているという事実を認めずに愚策を繰り返し、負けるのは兵士の根性が足りないからだと考えた。
 「頑張ります」「頑張って下さい」としか言えない首相は阿呆だ。国民は首相に頑張って欲しい訳ではない。昼寝をしていても構わないから知恵を出して欲しいのだ。あれもこれも禁止するだけではなくどうすべきなのかを示すべきだ。
 菅首相の意欲は軍の指揮官よりも質が悪い。軍の指揮官にはこの戦闘に勝とうという意欲があった。しかし菅首相はこの苦境を利用して政権の延命を図るという意欲しかない。犠牲にされる兵士は気の毒だ。

警戒区域

2011-04-22 15:02:46 | Weblog
 政府は原発から20km圏内を警戒区域に指定して今日の午前0時から立入禁止としたが相変わらず不適切な対応を繰り返している。
 住民(避難民)が希望する一時帰宅を後回しにして突然警戒区域に指定したから、それまで我慢していた人々が立入禁止にされる前に帰宅しようとして被災地に殺到した。交通渋滞を招くほど多くの人が急遽帰宅した。
 手順が逆だ。優先されるべきなのは一時帰宅であって立入禁止ではない。警戒区域宣言の前に、防護服や放射線計測器などを準備してなるべく安全な形での一時帰宅を実施して、それから警戒区域に指定すべきだった。先に実施すべき一時帰宅を後回しにしたから危険を顧みない帰宅ラッシュが起こった。
 例えば水の配給スケジュールが明らかにされていたら配給されない日があってもパニックには陥らない。ところがいきなり配給制限と発表すれば皆が小売店に駆け付けて奪い合いが起こる。これと同じ愚策だ。
 政府の今回の愚策は又しても国民を不幸へと導いた。ろくな装備もせずに多くの人が20km圏内へ入って少なからぬ人が被爆してしまったことだろう。この責任は愚策を繰り返す政府にある。
 全くお上の発想だ。農業も漁業も帰宅も禁止するばかりで、その先のことを全く考えていない。「○○すべからず」で政治は収まらない。「禁止によって生じる不都合をどう解消するか」という視点がかけたままだ。こんなやり方をしていれば「禁止される前にやれ」が原発被災地での合言葉になるだろう。