俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

土地の私有

2011-04-26 15:22:05 | Weblog
 土地は私有すべきものではないと私は思っている。
 元々土地は私有されていなかった。日本では公地公民が原則であり藤原氏が荘園制でなし崩しにするまでは土地は国のものだった。
 世界史上最大の領土を持ったモンゴル帝国は土地の私有という考えを全く持っていなかった。土地とは共同で使用する場所でしかなかった。
 海は誰にも私有されていない。漁民は漁業権を持つが海の所有権は持っていない。農地も農耕権のみが認められて然るべきだ。
 私は共産主義者ではないが土地は私有すべきではないと考えている。土地は国から借り受けたほうがずっと合理的だ。
 現在私有されている土地を国有化することは非現実的な話だ。しかし今回の震災後の東北地方の沿岸地域を国有化すれば双方にメリットがあると思われる。危険な土地や沈降によって水没して使い物にならない土地を国が買い上げて、代わりに安全な国有地を貸し与えれば全く新しい土地制度が生まれるだろう。
 土地の国有化は国民にとっても意外なメリットがある。遺産相続において相続税が激減することだ。相続のために住み慣れた住居を売り払わねばならないということが殆んど無くなるだろう。また土地という馬鹿高い買い物が無くなれば消費もずっと活発になるだろう。

復興

2011-04-26 15:06:26 | Weblog
 震災・津波で被災した東北地方について「復旧ではなく復興すべきだ」という声がある。元に戻すのではなく以前よりも優れたものにすべきだという考えだ。
 戦後の日本は復興を実現した。廃墟と化した日本が奇跡の復興を遂げたことは歴史的事実だ。しかし国レベルではなく民間レベルでも復興は可能だ。
 昭和34年に東海地方は、死者・行方不明者5,098人という史上最大の気象災害となった伊勢湾台風に見舞われた。伊勢湾沿岸の冠水被害は甚大だった。
 この時、近畿地方を地盤とする近畿日本鉄道(以下「近鉄」)は驚くべき復興戦略を採った。ズタズタになった線路を復旧させるのではなく、鉄道周辺の土地を買い集めるという無謀とも思える経営戦略を採った。
 冠水した田畑は地価が下落したので近鉄は広大な土地を安く取得して全線の複線化を実現すると共に地域開発にも乗り出した。複線化した鉄道は利便性を増して利用者が増え、駅の周囲には住宅地が広がることになり、宅地販売と鉄道収入増により近鉄は大儲けをした。
 見方によっては火事場泥棒のようにも思えなくもないが凄い戦略だ。価格が暴落した土地を買い漁った上で鉄道を軸として地域開発をした訳だから決して咎められるべきことではない。むしろ褒め称えられるべきことだろう。近鉄と住民はウィンーウィンの関係だった。
 政府が頼りにならないし動きも鈍いだけに東北地方にもこんな企業が現れることを期待したい。

是々非々

2011-04-26 14:50:40 | Weblog
 23日の朝日新聞の朝刊には少なからず驚いた。第4面に「バラバラ会見 今後は一緒に 東電と保安院」と「保安院と安全委 統合に向け議論」という記事が並んでいたからだ。
 前者は15日付けの「政官民」で、後者は8日付けの「天災と人災」で指摘したことだ。私が批判したことに対する見直しの記事が仲良く並んだのは勿論偶然でしか無い。私には世論を形成する能力も権限も無い。自分が正しいと思うことを書いているだけだ。
 しかし私のような門外漢のド素人でも疑問に思うような制度があって実際に見直されているということをどう考えれば良いのだろうか。考えない当事者が余りにも多いということだろう。ちょっと考えればおかしいことに気付くような制度が日本には無数に存在しているということだ。
 日本人は従順な国民だ。お上から命じられればそれに従う。その特性を利用して権力者は好き勝手なことをやっている。
 この従順さは民族としての大きな欠陥だ。権力者が有能であれば長所ともなり得るが、無能な権力者の元では国民全体が誤った方向に進んでしまう。前者としては明治維新が、後者としては太平洋戦争が、その典型例として挙げられるだろう。
 個人であれ政府・政党であれ、無条件に肯定したり否定したりするような子供っぽい対応をすべきではない。是々非々という大人の対応をすることが日本人の課題だ。この点では日本人の多くはまだ成熟していない。残念ながら児童心理学で理解可能なレベルに留まっている。