俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

セレンディピティ

2011-09-23 15:40:55 | Weblog
 セレンディピティをまるで神秘的なことと考える人もいるが、実は極めて当たり前のことだ。
 セレンディピティは広辞苑によれば「思わぬものを偶然に発見する能力」とされており、努力を続けていれば狙っていたもの以外での成果が得られるという意味で使われている。
 鍵を探す場合を想定しよう。人は鍵を置きそうな場所を真っ先に探す。それで見つからないのはとんでもない場所に置いているからだ。鍵を持っている時に電話が掛かったり、酔っ払って鍵を放り投げたりしたからだ。こんな場合、まともな場所では見つからない。見つかるのは他の物、例えば薬とか書類とかを探している時だろう。
 豊臣家や徳川家の埋蔵金を探している人がいる。もし埋蔵金が実在するとしたらとんでもない場所に隠されているだろう。当たり前の場所に隠されていたらとっくの昔に発見された筈だ。
 発見の多くは僥倖だ。見つかりそうな所は既に多くの人が探しておりそのことごとくが失敗している。従って偶然、とんでもない所で発見される。これは神秘的なことではなく当然のことだ。

電車の遅れ

2011-09-23 15:23:25 | Weblog
 日本の電車の発着時刻の正確さは世界中に知られている。2005年のJR福知山線での脱線事故で外国人を驚かせたのはその事故の大きさよりも、僅か1分半の遅れを取り戻そうとして運転士が無謀な運転をしたということだった。アジアは勿論、欧米でも電車の遅れは日常茶飯事だからだ。
 但し関西では私鉄と比べてJR西日本は遅れることが多い。2009年度の30分以上の遅れは、走行距離100万㎞当りで私鉄平均が0.5件に対してJRは4.9件と10倍ほど多い。中でも阪和線が多いようだ。
 日本の電車の発着時刻が余りにも正確なので「日本人は実は宇宙人なのではないか」と危惧した外国人が大阪市大に通うために阪和線を利用して初めて「我々と同じ地球人だった」と安心したという話がある。その阪和線が環状線に乗り入れているから全線が玉突き式に遅れてしまう。
 阪和線が遅れ易いのは南部で水害が多いからだろう。和歌山県は台風12号でも15号でも被災した。
 もう1つは折り返し運転の不備によるものだろう。どこか1箇所で事故が起こると阪和線全線が止まってしまうことが少なくない。臨機応変に折り返し運転をする仕組みを持っていれば南部での事故のせいで大阪市内の電車が止まることは無い。
 事故は起こるものだ。起こるということを前提にして起こった時の対応策を準備していなければ全体が機能不全に陥ってしまう。事故の被害を最小限で食い止めることは事故を起こさないことと同じくらい重要だ。このことは電車であろうと原発であろうと一般ビジネスであろうと違いは無い。絶対に事故を起こすな、という精神論こそ最も危険だ。

あの世

2011-09-23 15:08:01 | Weblog
 この世に不満を持つ人は、それに対する見返りとしてあの世での幸福を要求する。この世とあの世でのトータルで公平であるべきだという勝手な理屈だ。いじめられっ子が「ボクが超能力者だったらあんな奴らをやっつけてやる」と考えて悦に入っているのと同じレベルの感情だ。
 この世を憎悪する人があの世に期待する。普通の人なら、存在するかどうか疑わしいあの世に期待するよりも確実に目の前にあるこの世でベストを尽くそうとする。不満に目が眩んだ人は妄想に溺れる。そうでない人は現実を直視する。
 あの世に対する期待はこの世に対する恨みから生まれた歪んだ感情が反映されている。彼らの期待するあの世とはこの世で充たされなかった彼らの欲望の裏返しに過ぎない。
 彼らはあの世を讃美してこの世を呪詛する。この世を呪うことが彼らの生きがいにさえなっている。困ったものだ。そんなにあの世に憧れるのならいつまでもこの世に執着せずに速やかにあの世へと旅立って貰いたいと思う。正直なところ迷惑な連中だ。
 私はこの世だけが実在すると信じている。従って彼らによるこの世に対する呪詛は許し難い。不平・不満を並べるよりも、改善のために努力すべきだろう。ありもしないあの世と比較してこの世を呪うことはただ単にこの世を否定しているだけだ。この世に対する呪いを正当化するためにあの世という妄想で理論武装しているに過ぎない。美しい妄想に浸るよりも醜い現実に対して能動的に対処すべきだ。