俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

東電の値上げ

2011-12-27 15:25:06 | Weblog
 東電が値上げを発表した。これは全く不当なものだ。発電コストの上昇を理由としているがそのコストには福島第一原発の廃炉や損害賠償金なども含まれている。これでは原発事故の責任を東電利用者に押し付けるようなものだ。なぜ事故の負担を地域独占企業の利用者が負わねばならないのか全く理解できない。
 そもそも何兆円とも言われる賠償を一企業に負わせる仕組みに無理がある。東電としては将来的には破綻することが分かっているのだから延命策を図った上で適当な処で経営を放棄するという魂胆だろう。
 東電の本音は今の待遇を少しでも長く享受したいということであり、政府の本音は責任を直接背負いたくないということだろう。妙な事情から両者の思惑が、国有化回避という方向で一致している。
 訳の分らぬ賠償支援機構を作って国民を誤魔化し続けるのはさっさと諦めて速やかに国有化をすべきだろう。その場合、株は日航と同様に紙クズとなる。この無意味な延命策は権力者が株を少しでも高く売り抜けるための時間稼ぎではないかとさえ勘繰りたくなる。
 勿論、国有化されても国が負担をするという訳ではない。国はその負担を丸々国民に押し付けるだけだ。それでも東電の利用者だけに過重な負担をさせるよりはずっとマシだろう。関東地方だけで負担するのではなく広く浅く全国民で負担すべきだろう。

真因

2011-12-27 15:11:20 | Weblog
 物事の原因は1つではなく殆んどの場合、複数の原因がある。自動販売機にお金を入れてボタンを押せば商品と釣銭が出るが、こんな単純な因果関係は殆んど無い。東日本大震災で津波の被害が大きかった原因としては、想定外の大きさだったこと、避難が遅れたこと、情報が充分に伝わらなかったことなど幾らでも挙げることができる。しかし真因は何か、と尋ねても答は得られない。
 トヨタでは「なぜを3回繰り返して本当の原因に対処せよ」と言うが何回「なぜ」を繰り返しても真因にはたどり着けまい。主因の幾つかが見つかるだけだ。
 泥棒を防ぐためにはどうすれば良いだろうか。刑罰を重くする、施錠を徹底する、防犯カメラを設置するなど幾らでも挙げることができる。しかし最善の対策は貧困を無くすことだろう。貧困者がいなければ泥棒は激減するだろう。
 但しこれは机上の空論に過ぎない。貧困を無くすことはとてつもなく難しいからだ。一人暮らしの女性の貧困率(この資料では年収114万円未満)は勤労世代でさえ32%もあるそうだ。一人暮らしの女性を貧困から救うことでさえ困難なのだから障害者や老人を救うことは絶望的とさえ思える。仮に泥棒の真因が貧困だとしてもその真因に対する対策ができないのなら、効果の乏しい対症療法に頼らざるを得ない。

夜の蝶

2011-12-27 14:55:49 | Weblog
 「夜の蝶」はフランス語訳できない。英語では蝶はbutterflyであり蛾はmothだがフランス語ではこの2者は区別されずどちらもpapillonだ。日本人がmouseとratを区別せずに「ネズミ」と呼ぶようにフランス人は蝶と蛾を区別せずにpapillonと呼ぶ。つまり同じものという認識だ。従ってpapillonが昼現れようが夜現れようがどうでも良いということになる。
 日本人は蝶と蛾を異常なまでに区別したがる。蝶は可愛く蛾は汚いと信じている。確かに毒蛾もいるが殆んどの蛾は無害だ。一部の蛾の有毒性を根拠にした差別は不当だ。
 蝶を愛する日本人は夜に蝶を見ると驚愕する。昼の可憐な虫がなぜ夜に現れたのか、と。
 それと同じ思いが「夜の蝶」という言葉には込められている。二流の女の職場である筈の盛り場に、知的で上品でしかも少し毒のありそうな美女がいれば心魅かれるのは当然だ。いるべきでない人がいるべきでない場所にいたらその不思議さ・不自然さが心に響く。
 「夜の蝶」はそんな感情を込めた言葉だ。これを単純にpapillon de nuitと翻訳しても「蛾」にしかならない。むしろ意訳して「夜咲く朝顔」とでも表現したほうが適切だろう。