俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

初期対応

2012-03-02 15:18:43 | Weblog
 福島原発事故独立検証委員会による報告書が先月27日に発表された。政府の事故調査委員会による中間報告と概ね齟齬は無いようだが、3月12日の菅首相(当時)の原発視察の経緯はこれまでに報道されたものとは異なっていた。
 菅前首相は枝野官房長官(当時)などの大反対を押し切って視察を決行したそうだ。このことが原発事故拡大の大きな原因となった。
 原子炉内の圧力を逃がすベントが遅れた原因として、首相を被曝させないためという噂が当時からあった。実際のところ首相による視察は迷惑以外の何物でもなかった。対応させられた吉田所長(当時)はさぞかしイライラしたことだろう。刻一刻情勢が変わる非常時に、貴重な情報や陣頭指揮に使うべき時間が奪われてしまったからだ。これで対応は後手に回った。
 これは火事の初期消火の現場を視察するような愚行だ。現場は忙しい。災害時の初期対応は特に重要だ。初期段階での10の努力はその後の100の努力に匹敵する。最も重要な段階で妨害をしたのだから前首相によるパフォーマンスが事故を拡大させたことは間違い無い。

大盤振舞

2012-03-02 15:04:04 | Weblog
 人気稼ぎのために大盤振舞をすれば受益者は感謝せずにそれを権利として主張する。先月28日に老齢加算の廃止についての判決があった。老齢加算とは70歳以上の生活保護費受給者を優遇する制度で1960年に始まり2006年に廃止された。生活保護費が老齢加算されるのだから手厚過ぎてまるで屋上屋を架するような福祉制度だった。
 生活保護を受ければ医療費は無料だし、70代は60代よりも活動量も食事の量も少ないのだから増額する理由は無い。むしろ減額しても良いぐらいだ。
 この制度が導入された1960年は「人生60年」の時代だったから70歳を超える人は少なかった。今の感覚で言えば100歳祝いのようなものだ。そんな制度が平均寿命80歳の現代にまで残っていたことこそ奇妙だ。
 この制度が廃止できなかったのは一旦特権を手にした人や特権を享受しようとする人が権利として主張したからだろう。
 民主党が主張する最低保障年金も危険な制度だ。一旦保障されたらそれは権利となる。そしてそれは無限に拡大解釈され続ける。そのツケを払わされるのは次の世代であり、次の世代のツケはその次の世代へと回される。これでは幾ら増税を繰り返しても財源不足は解消されない。今のことしか考えない人気稼ぎのための大盤振舞はこの上無く危険な政策だ。

企業の負担

2012-03-02 14:49:54 | Weblog
 年金保険料や健康保険料などは決してマスコミが報じているように被雇用者と雇用者が折半している訳ではない。民間企業では被雇用者が全額を負担させられている。形式上では労働者と企業が折半する形になっているが実際には企業負担相当額の賃金が削られている。
 サラリーマン時代にあちこちの部署で収支計画書を作ったがこの時に使う人件費は総て付帯経費込の人件費だ。つまり保険料などの付帯経費は人件費として計算される。企業にとっての人件費とは給与明細上での金額ではなく付帯経費を含む経費のことだ。
 パートタイマーを雇用保険の対象にすることに大半の企業が反対するのは総人件費が増えるからだ。雇用保険を負担させられる企業は給与の削減か雇用者数を抑制することによって総人件費を抑えようとする。最低賃金法があるので名目上の賃金をそれ以下にはできないから、その結果として雇用者数が減るということになる。
 パートタイマーを雇用保険の対象にすることが雇用の減少に繋がるとは何とも皮肉な話だが、増税さえすれば収入が増える殿様商売をやっている官僚はこんな実態を知らないのだろう。企業負担とされている保険料は企業が負担する訳ではない、最終的には労働者が負担させられている。