俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

三島返還

2012-03-06 15:07:33 | Weblog
 ロシアのプーチン首相が北方領土について「引き分け」を提案した。その狙いが何なのかはよく分からないが引き分けあるいは痛み分けに応じるべきだろう。
 北方領土は第二次大戦直後のどさくさに不法に占拠されたものだ。従って理屈上は四島返還が正しい。しかし正しい理屈は必ずしも現実的ではない。四島返還はロシアにとって領土を失うだけではなく不法占拠を認めるということにもなる。何らかの妥協をしなければ引き分けにはならない。
 戦後70年近く不法占拠が続いているのは原理主義者の責任だろう。これまでに何度もチャンスがあったのに四島同時返還を譲らなかったために進展は見られなかった。
 4対0でリードを許している試合で満塁のチャンスを迎えた時には満塁ホームランを狙うべきではない。確実に1点ずつ得点するべきだ。
 ロシア側が二島返還を考えているのなら日本側は三島返還をベースにして交渉すべきだろう。つまり歯舞・色丹・国後の返還だ。面積や資源で考えればこれが引き分けだ。択捉まで望むことは欲張り過ぎだろう。次のチャンスを待つべきだ。白か黒かではなくグレーを求めることが大切だ。相手の面子を保たねばならない、やっつけるべきではない。ロシアの交渉担当者に国賊の汚名を着せてはならない。それが政治であり外交だろう。

奴隷以下

2012-03-06 14:53:50 | Weblog
 労働者の境遇は奴隷以下だ。奴隷は所有者の財産だ。従って財産価値を損なわないように大切に処遇される。一方、労働者は使い捨ての道具に過ぎない。人形や玩具のように壊れたら捨てられる。家電も最近では使い捨てだ。修理するよりも買い替えたほうが安上がりだ。労働者は使い捨て文化の犠牲者だ。
 労働者は20歳から60歳までの盛りの時期だけ雇用される。最盛期を過ぎた労働者はゴミのように捨てられる。働き盛りであろうとも役に立たなくなった労働者も捨てられる。私の元勤務先にいた女性管理職は蜘蛛膜下出血で入院した。1年ほどの休職扱いのあと解雇された。企業は情容赦無く労働者を使い捨てる。
 企業にとって労働者は道具に過ぎない。雇用している間はある程度保護をするが退職後は赤の他人だ。能力も意欲もある定年退職者が働き場を求めて中国などに渡り、これが技術の流出を招いている。こんな流出は国益に背くが、ゴミとして切り捨てられた人がどう動いても個人の勝手だ。もし責任が問われるなら個人ではなく企業だろう。ゴミとして捨てられたものを再利用することは何ら倫理に背かない。資源をゴミ扱いする企業こそ国益を損ねている。

解熱剤

2012-03-06 14:39:00 | Weblog
 発熱した動物に解熱剤を与える動物実験があることを最近知った。悲惨な結果だ。どの動物でも解熱剤を与えられた集団のほうが死亡率が有意に高かった。対象は哺乳類(兎、豚、犬)と爬虫類(サバクイグアナ)と魚類とのことだ。
 勿論、薬そのものの毒性も考慮せねばならないだろう。症状を訴えることのできない動物は抗癌剤がもたらすような副作用に苦しんで死んだとも考えることはできる。しかし多分そんな劇薬ではなく獣医が通常の治療で使っている穏やかな薬だろう。
 人間の風邪も感冒薬を飲むと却って長引くことが広く知られるようになった。感冒薬には効能として「風邪の諸症状の緩和」と書かれており対症療法に過ぎないことを自ら認めている。しかもあくまで「緩和」であって「治療」とは書かれていない。
 特に解熱剤は百害あって一利無しと思える。発熱は身体の防御反応だ。体温が上がれば免疫機能が活発化し同時に熱に弱い病原菌の活動を阻害する。せっかく身体の自然治癒力が働いている時にそれを解熱剤によって妨害すれば悪化するのは当然だ。
 但し脳は熱に弱いので、昔ながらの氷枕や氷嚢あるいはアイスノンなどによって頭だけを冷やして安静にすることが最善の治療法と思える。昔ながらの療法は意外と理に適っている。