俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

脳の疲労

2012-05-11 15:31:41 | Weblog
 脳も筋肉も使えば発達するし、使わなければ衰える。しかし大きな違いがある。筋肉は使い過ぎれば破損するが、脳を使い過ぎて障害が発生した人はいないだろう。長時間の勉強による疲れ(英語ではtired ofでありtired withではない)を感じた人は少なくなかろうが、フル稼働させて脳を疲労させた経験のある人は少なかろう。
 私は脳の疲労を感じたことが2度ある。どちらも大学生時代だ。
 1つはニーチェの「ツァラトゥストラ」を読んだ時のことだ。それまでぼんやりと思っていた疑問が次々に解明されることに激しく昂奮した。息使いまで荒くなり読書と言うよりもまるで格闘をしているような気分だった。
 もう1つは英会話だった。90分間、全く英語しか使わない授業は初めてだったので一言も聞き逃すまいと神経を張り詰めてかなりの疲労感を覚えた。但し、2回目からは慣れたせいか疲労を感じるほどには脳を使わなくなった。
 結局、一生でたった2回だけしか脳をフル稼働させなかったということだ。仕事では結構アイデアを出したつもりだが脳の疲労を感じるほどに使ったことは無かった。
 多分、多くの人は一生に1度も自分の脳をフル稼働させることが無いままで生涯を終える。勿体ないことだ。

キリギリシャ

2012-05-11 15:18:06 | Weblog
 ギリシャとイタリアほど観光資源に恵まれた国は少ない。ギリシャ・ローマの遺跡とエーゲ海などの美しい海はヨーロッパ最高の観光資源だろう。放っておいても多くの観光客が集まる。しかし恵まれ過ぎることは逆に不幸なことだ。ギリシャでは海運業以外の産業が育たず公務員ばかりが増えた。
 民主主義発祥の地でありながら長く軍事政権が続いたせいか民意のレベルは余り高くない。先日の選挙で第2党に躍進した急進左翼進歩連合の公約は何と「国の借金の返済拒否」だ。借金を踏み倒すことを公約に掲げてそれが支持されるとは信じ難い話だ。これでは民主主義ではない、衆愚政治だ。
 ギリシャ国民はユーロ圏からの離脱を望んでいる訳ではない。ユーロから離れれば新通貨が暴落して壊滅的なインフレになることは目に見えている。そんな中で借金返済拒否が支持されるようならユーロ圏から追放されかねない。
 イソップ寓話の「アリとキリギリス」のような怠け者なら何とか許されよう。しかし借金の踏み倒しという犯罪的行為は許されまい。返済拒否となれば最早議論の余地は無く、経済戦争状態だ。ユーロ圏諸国はギリシャを容赦せず、滅ぼすことさえ厭わないだろう。

消費税の欠陥(2)

2012-05-11 15:00:01 | Weblog
 私はこれまでに消費税の欠陥として4月6日付けの「消費税率」では食品などに対する軽減税率が無いこと、4月17日付けの「消費税の欠陥」では益税事業者の蔓延を指摘した。第3の欠陥として控除の仕組みの不合理性を指摘したい。
 事業者は経営を通じて受け取った税額から経営活動において支払った税額を差し引いた金額を納税する。この仕組みにおいて2つの問題が生じる。その内、医療などの非課税事業者における不合理性については昨年11月25日付けの「消費税増税(2)」で指摘した。日本には「非課税」はあるが「税率0」は無い。税率0なら輸出と同様に支払った消費税の還付を受けることができるが、非課税では自己負担になるので税率が上がれば負担だけが増える。
 もう1つの問題は課税取引へのシフトだ。派遣労働者が増えた原因の1つはこれだ。業務委託という形態を取れば、人件費とは違って課税取引になる。100万円を支払った場合、約47,619円が消費税額となりこれは全額が控除対象になる。そのために同じ100万円を支払うなら控除対象にならない人件費よりも控除の対象になる業務委託費のほうが有利になる。
 消費税が無い時代でも業務委託にはメリットがあった。試験採用が可能なことや雇用調整をし易いことなどだ。それが消費税という税制によって企業にとっては更に有利になった。消費税という税制が派遣労働者という不安定な雇用形態を拡大させたとさえ言えよう。