俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

忠と孝

2013-08-18 09:00:22 | Weblog
 忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならず、と言う。忠と孝はしばしば対立する。若干乱暴だが、ここでは忠・公・義理のグループと、孝・私・人情のグループの対立として考える。
 当初、この問題は日米の意識の違いとして捕えられることが多かった。アメリカ人の野球選手が、妻が出産する、あるいは息子が病気だ、といった理由でシーズン途中で帰国してしまった。その一方で日本人の俳優は「舞台に穴を開ける訳にはいかない」と言って親の死に目にも会わなかった。
 一時期、日本でも残業よりもデートを優先する若者のことが話題になったが、雇用環境の悪化に伴いデート派は激減しているようだ。
 結局、仕事に対する位置付けの違いだろう。人は大切と思うことを優先するからだ。では「大切」とは何か、自分が重要な役割を担っているかどうかだ。
 もし彼が超能力者で病気を治せるハンドパワーでも持っているのなら病気の肉親の元へ駆け付けるべきだろう。そうでなければ病室でウロウロするだけで何の役にも立たない。球場の応援団のようなものであり自己満足に過ぎない。
 家庭であれ職場であれ、その人が重要性を持つ場所が優先される。家庭で居場所の無い夫なら家庭を顧みないだろうし、二軍の補欠なら職場放棄も問題にされない。
 ブルージェイズの川崎宗則選手は16日から最長3日間の「産休」が認められたそうだ。産休の位置付けは難しい。本人が出産するのなら休むのは当り前だが夫の産休をどう評価するかは意見が分かれるだろう。夫の立会いには何の物理的効果も無いからだ。
 危篤の人がいつ亡くなるかは分からないが、出産ならある程度時期を特定できる。立ち会わなかったことで不仲になる恐れがあるのだから、夫婦円満のために企業は大目に見るべきだろう。しかしこれは妻の機嫌を損なわないためであってそれ以上の意味は無い。子供のための授業参観と同じような儀式だ。

捏造

2013-08-18 08:28:34 | Weblog
 捏造が世に蔓延している。似非科学者は実験データを捏造し、中国・韓国は歴史を捏造し、薬品メーカーは効果を捏造し、検察は捜査資料を捏造する。私が書く雑多な記事の多くは捏造に対する怒りに基く。
 なぜ捏造が横行するのだろうか。もしかしたら人は事実よりも虚構を好むのかも知れない。現実は不快で虚構は心地良い。現実では努力の大半が報われず理不尽な不幸は跡を絶たない。その一方で虚構は予定調和する世界だ。期待は裏切られない。
 「不快な事実など見たくない」これが人々の本音だ。だから共同幻想をでっち上げる。不幸な人が夢想家になり易いように、不幸な民族は歴史を改竄する。彼らに怒るべきではない。改竄せざるを得ないほど惨めな歴史しか持たないのだから根拠無きプライドを守るためには虚構に頼らざるを得ないのだ。子供に見栄を張る連中を哀れむべきだ。
 猛暑もゲリラ豪雨も、CO2増加による地球温暖化が原因と決め付ける。分からないままでいるよりは分かったつもりでいるほうが快適だからだ。凶悪犯罪が迷宮入りするよりは無関係の人に罪を着せようとする。これはスケープゴートに過ぎない。嘘に満足する人がいかに多いことか!
 事実を直視するためには勇気と誠実さが必要だ。勇気も誠実さも持ち合わせていない人にとって現実は穢らわしく甘い夢こそ現実以上に価値あるものなのだ。