俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

超法規的措置

2010-11-19 15:20:44 | Weblog
 私は決して超法規的措置を否定しない。それどころか必要だとさえ思っている。但しその事情を説明できるということが絶対に必要不可欠の条件だ。
 古い話だが昭和50年にこんな実例がある。
 マレーシアのアメリカ大使館とスエーデン大使館が日本人過激派の赤軍派によって占拠された。彼らは拘留中の赤軍派のメンバーの釈放を要求し、日本政府は超法規的措置で人質交換に応じた。
 今なら「テロに屈するな」という声もあろうが、当時としては国内の問題で外国にまで迷惑を掛けられないという意見が強く、当時の三木首相に対する非難の声は殆ど記憶に無い。
 法律は融通が効かない。杓子定規的な対応しかできない。公平性を優先する余り個別の事情を斟酌できない不完全なシステムだ。
 こんなケースがあり得る。
 踏切以外では線路内に立ち入ることは禁じられている。しかし駅のホームから線路に落ちた人を救うためには一般客が線路に降りざるを得ない。救出のために降りた人が駅員に咎められるということは絶対に無いが、本来は違法行為だ。こんな身近な超法規的措置は無数にある。法律は不完全だからだ。
 事件が公になった時に違法行為を見逃したことを合理的に説明できないのが悪い超法規的措置だ。権力者による揉み消しや仲間内での馴れ合いなどがそれだ。中国人船長の釈放も悪い超法規的措置であることは言うまでも無い。

加工貿易(2)

2010-11-19 14:58:41 | Weblog
 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加したら大変なことになるし参加しなくても大変なことになる。
 参加しなかった場合、日本の産業は国際競争力を失う。自動車も家電も輸出ができなくなって現地生産に切り替えられる。つまり国内での雇用が激減する。
 参加した場合は農業がダメージを受ける。農林水産省が言うように4割減るとは到底考えられないがダメージは少なくない。このことを前原外務大臣のように「第一次産業はGDPの1.5%に過ぎない」と切り捨てるべきではない。農業か工業かの二者択一を迫ることは根本的に間違っている。農業も工業も守るべきでありそれは単なる理想論ではなく現実的に可能なことだ。農業そのものに対する補助も必要だがそれ以上に新しい産業を作ることこそ今の閉塞状況を打開する鍵となる。
 唐突だが、世界一の小麦の輸入国がどこなのか御存知だろうか。山勘では絶対に当たらない意外な国だ。なんとあのパスタの本場のイタリアだ。イタリアでは輸入した小麦をパスタに加工して外貨を稼いでいる。
 資源の乏しい日本は工業製品の加工貿易によって国力を高めた。ところが食料品の場合、農林水産省の悪政のせいで加工貿易ができない状況に追いやられていた。馬鹿高い関税を掛けられているから食料品の加工貿易は不可能だった。
 食料品の輸出入市場の7割を加工品が占めている。つまり小麦や大豆などの穀物や畜産品の市場よりもパスタや酒類や菓子などの加工品の市場のほうが圧倒的に大きい。それにも関わらず日本は国内農業を守るという農水省の大義名分のせいで、技術がありながら食料品の輸入国であり続けるしか無かった。
 世界市場を目指す新たな事業は即席麺などの食品加工業つまり1.5次産業だ。中でも酒類は有望だと思う。日本は世界でも稀な水に恵まれた国だ。国内の清浄な水と輸入麦による加工食品が新たな世界戦略商品となって将来の繁栄へと繋がる可能性は極めて大きい。

日本の長所

2010-11-16 16:26:55 | Weblog
 日本の欠点が日本にどっぷりと漬かっていると分からないように、日本の長所も日本人には分かりにくい。むしろ海外に出たり、外国人に指摘されて初めて気付く。
 日本のトイレは世界一快適らしい。空港やホテルなどのトイレでウォシュレット(温水洗浄便座)を知って外国人、特に欧米人と中国人はその快適さに魅せられて持ち帰りたがる人が多いらしい。
 但し温水洗浄トイレは決して日本のオリジナルではない。私が初めてそれを知ったのはタイのビーチだった。トイレにホース付きのシャワーがありそれで尻を洗う仕組みだった。この方式では下半身がビショ濡れになってしまうのでビーチ以外では使えない。それを洋式トイレに組み込んだところが日本によるオリジナリティだ。
 ロシアや中国でトイレを使った人はトイレットペーパーの質の悪さに呆れているそうだ。ゴワゴワの硬い紙なので使用するためには長時間もみ続けることが必要だとのことだ。
 居酒屋という日本人にとっては当たり前の飲食店も外国には無い。英国のバーにはフィッシュ&チップスとソーセージぐらいしか酒の肴が無いそうだ。居酒屋のような飲み且つ食べる飲み食いのための施設は世界中どこにも無い。飲と食を分離させずに飲食をトータルで楽しめる居酒屋というシステムは素晴らしい。
 治安の良さも世界有数だろう。電車の中で眠っていても滅多に犯罪に会わない国は珍しい。
 私は日本および日本人を酷評することが多いが、国際的に見ればかなり住み易い国と言えるだろう。

シャワー

2010-11-16 16:09:45 | Weblog
 シャワー式の風呂は日本ではなかなか定着しなかった。女性の支持が得られなかったと言われている。ところがホース付きのシャワーが開発されると一気に定着した。
 どこが違うのか。ホース付きのシャワーなら下から上へと放水できる。こんな些細な違いだけでホース付きのシャワーが受け入れられた。
 では女性はホース付きのシャワーのどこに価値を認めたのだろうか。性器を洗えるということだ。ホース無しのシャワーでは女性性器を洗えない。だから女性は固定式のシャワーを拒絶してホース付きのシャワーを歓迎した。男にはこんな女性の本音が分からない。しかしそれが女性の本音であるなら、和式の風呂では湯船の中で性器を洗っているということだろうか?
 プールのシャワーは固定式のものであったりホース式のものであったり、施設によって異なる。しかし多分女性はホース付きのシャワーがあるほうのプールを選ぶだろう。そんなことで集客力が左右されるとは殆どの男は気付かない。女性スタッフが気付いてもそのことを口に出すことは憚られる。
 大切なのは本音だ。本音を探るにはアンケートなどではなく実際に売れているもの・人気のあるものを分析する以外に方法は無い。
 昭和62年にアサヒスーパードライと花王のアタックが大ヒットして今でもトップブランドだ。それぞれのCMは「辛口」と「バイオを使った洗剤」だったが、購入者は「アルコール度数の高さ」と「コンパクトで場所を取らないこと」を評価したように思える。
 本音を理解しないままで、対抗して作られた他社の辛口ビールやドライビールはことごとく失敗した。ようやくここ数年、アルコール度数の高いビールやチュウハイが作られて人気商品になっているようだ。

責任

2010-11-16 15:50:14 | Weblog
 企業の責任者は社長だ。クレーマーはすぐに「社長(校長、院長)を出せ」と騒ぎ立てるが、社長が対応をする必要は無い。私が現役時代には「これは現場の問題ですので現場の責任者の私が承ります」と対応したものだ。
 経営上の問題なら経営者の責任が問われるが営業上での問題なら現場の責任者が責任を取れば充分だ。
 ところで今回の映像流出事件の責任者は誰だろうか。菅首相が珍しく自らの責任を認めたが、面白いことに首相の責任を問う声は全く聞かれない。むしろ「政治職と執行職では責任のあり方が違う」と開き直りとも思える発言をした仙石官房長官に非難が集中している。やはり日本人は自分の非を認めた人には優しく、非を認めない人には厳しいようだ。
 政府の方針が曖昧だったとは言え、情報管理が甘かっただけではなく、イントラネット(組織内情報ネットワーク)について誤った報告をし続けた海上保安庁の鈴木長官は責任を免れ得ない。
 鈴木長官の報告を鵜呑みにした馬淵国土交通大臣はどうだろうか。野党との関係改善のためには退いたほうが良いかも知れないが、開き直らずに早めに謝罪をしてから模様見をすれば充分だろう。
 一方、もし検察庁が、国の根幹である法律に背いて中国人船長の釈放を決定したのなら、越権行為も甚だしい。検察の仕事は法律に基づいて粛々と職務を遂行することであって、超法規的措置をする権限など無い。法律の否定は自らの否定に等しい。
 映像流出は執行責任かも知れないが超法規的措置は政治責任だ。政治責任を逃れるために、検察庁による執行責任に矮小化しようとする政府の姿勢はどうしようも無く醜悪だ。「責任逃れ内閣」と呼びたくなるほど無責任だ。

7つの子

2010-11-12 13:17:34 | Weblog
 「カラスなぜ鳴くの」「カラスの勝手でしょ」ではない。「カラスは山に可愛い7つの子があるからよ」だった。小学校の低学年だった私は「7つの子」を「7歳の子」と解釈した。しかし人間ならともかく7歳のカラスが子供である筈が無い。
 他にも気になった。「可愛い7つの子があるからよ」は変だ。「可愛い7羽の子がいるからよ」が正しいのではないだろうかと思った。現代では動物に「ある」は使わない。せいぜい植物までだ。教科書に載っている歌なのだから昔なら正しい用法だったのだろうか。
 もしかしたら文語を口語に変えた時に変な歌詞になったのかも知れないと思った。こんな例がある。「春の小川はさらさら行くよ。」なぜ小川が「行く」のだろうか。「春の小川」の元々の歌詞は「春の小川はさらさら流る。」だったそうだ。
 しかし「7つの子」の場合はそうではなかった。作詞者・野口雨情氏の故郷にはこの歌の石碑がありこのとおりの歌詞が刻まれている。
 結局、日本語が変わったということだ。最近では「微妙」とか「普通」とか「やばい」とかいった言葉が随分違った意味で使われている。更には比較的新しい言葉である「キモい(気持ち悪い)」が「肝い(肝心だ)」という意味でも使われているそうだ。
 言葉は変化するものだが変化し過ぎると訳が分からなくなる。

関税

2010-11-12 13:01:36 | Weblog
 関税という制度は必要だろうか。発展途上国には必要だろう。先進国から国際価格の商品が雪崩れ込んだら途上国の産業は壊滅してしまうからだ。しかし先進国では事情が違う。国際競争力があるから先進国と言えるのであって保護貿易に頼るようでは先進国の名に値しない。
 明治維新の開国以来150年近いし、敗戦による第二の開国からでも65年経った。まだ関税によって国内産業を保護せねばならない途上国状態なのはなぜだろう。
 当たり前の話だが国内流通に関税は無い。宮崎県が県産品を守るために北海道産品に関税を掛けるような馬鹿な仕組みは無い。国内流通では当たり前の無関税がなぜ国際取引ではできないのだろうか。EU圏内では無関税にすることによって産業の住み分けが実現されて高品質の商品が低価格で流通している。
 関税によって利権を得ているのは誰か。実は農林水産省だろう。農水省は農業の保護という隠れ蓑を使って省益および天下り団体の利益を守るために嘘の情報をバラ撒き続けている。
 米、麦、バター、豚肉などにおける奇怪なルールは国民や農民のためではなく、農水省および天下り団体の利権を守るために定められているとしか思えない。明らかに国益(国民益)に反することを農水省はやっている。彼らがこれまでに積み重ねた悪政・失政・愚政を糊塗すると共に省益を維持するために躍起になっているだけのことだ。彼らの主張は眉唾物だ。騙されてはならない。

未流出映像

2010-11-12 12:44:33 | Weblog
 尖閣諸島沖での衝突事件の映像を流出させた海上保安官に対する事情聴取が今日も続いている。
 この流出が犯罪かどうかは意見が分かれる。政府は非公開を命じ、野党や多くの国民が公開を主張する中での流出だからだ。権力者にとって都合の悪い事実を公開することは言論・出版の自由の行使とも考えられる。情報漏洩ではなく内部告発だと考えることも可能だ。権力者が情報管理を強行して国民は管理下に置かれるのでは中国やミャンマーやナチスドイツの独裁体制のようなものだ。国民には権力者にとって不都合な真実を知る権利がある。
 似た事件があった。シーシェパードの高速艇が日本の捕鯨船に体当たりした事件だ。この事件の映像は公開された。山場は2つあった。衝突と逮捕の場面だ。今回の流出事件では逮捕の映像はまだ公開されていないが、政府が隠蔽しようとしているのはむしろこちらだという噂がある。
 船長を拘束しようとした際に海上保安庁の職員が海へ突き落とされ、更に中国船の船員がモリで突き刺そうとしている映像があるという噂だ。
 この噂が本当なら船長釈放の是非が改めて問われることになる。誰が釈放を命じたのかさえ曖昧にしている政府だが、もしこんな犯罪未遂があったのなら曖昧で済ませられなくなる。
 当初、民主党は前原外務大臣が「証拠のビデオがある」と発言するなど公開に前向きだった。船長の釈放後、急に秘密主義になったのは都合が悪い映像があることに気付いたからだろうか。こんな噂が流布することを防ぐためにも公開を前提にして検討すべきだろう。秘密主義は噂の元だ。

証拠

2010-11-09 17:13:45 | Weblog
 昨年6月に米原市で起こった殺人事件の裁判員裁判が今月4日から始まった。
 事件の概要については書かないが、こんないい加減な状況証拠で被告にされては堪らないという思いで一杯だ。痴漢の冤罪並みに酷い裁判だ。
 検察側は次のことを証拠としている。①被害者が消息を絶った6月10日の夜に会ったことを被告が認めている。②被告の車から被害者の血痕が見つかった。③遺体発見現場の近くで被告の車に似た乗用車が10日の夜に目撃されている。
 一方、被告は一貫して犯行を否認し「10日の夜に被害者は私の車に乗って立ち去った。その後車は乗り捨てられていた。」と主張している。証拠や証言が総て正しいとすればこんなストーリーが考えられる。
 被害者は被告と別れた後に誰かと会ってその誰かによって車内で暴行を受け、真犯人は遺体を隠したあと車を乗り捨てた。
 こんな簡単なストーリーで総ての辻褄が合ってしまう。
 要するに確かな証拠は被告の車の中で犯罪が行われたということだけだ。誰が犯人なのかを特定する証拠は何1つ無い。犯行がその車の中で行われたという証拠だけで車の所有者を犯人と断定するのは無理があり過ぎる。
 もし私が裁判員だったら迷わずに無罪を主張する。

ジャポニカ米

2010-11-09 16:50:31 | Weblog
 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に日本が参加すれば農家は壊滅的な打撃を受けると農林水産省は警告する。国内農業生産額9兆円が5兆4千億円まで激減すると言う。米は殆どが外国産に置き換わるとまで言う。
 あり得ないことだ。そもそもジャポニカ米は国際市場には殆ど出回っていない。2,000年以上掛けて品種改良をしたジャポニカ米を日本人が見捨ててインディカ米に切り替えるとは到底考えられない。幾ら安くてもインディカ米の寿司など想像し難い。
 日本の米が778%という異常に高い関税で保護されていることは事実だ。しかしこの関税が撤廃されればジャポニカ米が駆逐されると考えることは日本の農家や消費者に対する侮辱だろう。それはインドや中国から安い車が輸入されたら日本の自動車産業が滅ぶという主張と同じくらい自虐的で非現実的な話だ。農水省は狼少年だ。かつてオレンジやグレープフルーツの輸入が自由化される時には「ミカン農家が壊滅する」と大騒ぎしたが、結果は御存知のとおりだ。
 ところで778%という高い関税が掛けられている輸入米とはどういう素性のものだろうか。例外無き関税化を定めた1993年のGATTウルグアイラウンド合意を拒否したペナルティであり、毎年約80万トンの米がミニマムアクセス米として輸入されている。
 農水省はこの米を「国内の自給や生産に影響を与えない」ということを大義名分にして非常時用の備蓄米として保管し続けている。この馬鹿高い米は一部がピラフ用に使われたり、海外での災害に対する救援物資として寄贈されたりしているが、残りの大半が事故米として工業用に、あるいは劣化米として家畜の餌に使われているのが実状だ。カビや汚染によって事故米とされた工業用の米を食用として不正転売したのが平成20年の三笠フーズ事件だった。
 民主党による事業仕分けでは俎上にさえ載せられていないが輸入米に対する扱いはとてつもない無駄遣いだ。