俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

投票権(2)

2012-06-08 14:50:38 | Weblog
 AKB48の選抜総選挙の結果が6日に発表された。AKBに投票するためにはCDなどを買って金を払わねばならない。このことを金権選挙と皮肉る人もいるが政治の金権選挙とは事情が違う。政治では選ばれる側が金を出すがAKBでは選ぶ側が金銭的負担をして投票権を獲得する。従ってAKBの総選挙では熱心なファンしか投票しない。もしAKBの総選挙が国民全員に開放されたらつまらない結果になるだろう。熱心なファンよりも余り関心の無い人の票のほうが多くなるからだ。投票とは質の違いを無視して量に還元する乱暴な制度だ。
 政治の投票権を納税者だけに絞るべきだなどと言うつもりは毛頭無い。金で投票権を得るのはAKBだけで充分だ。政治については意識や理解を基準にするのが一番良いと思う。つまり簡単な試験をして合格した人にだけ投票権を与えれば良い。「国会に議席を持つ政党名を2つ以上書け」とか「日本の二院制とは何と何か」のような、特定の政党が有利にならない簡単な設問なら何でも良い。投票権を行使できるために最低限必要な知識の有無を調べれば充分だ。何事にも資格が必要だ。自動車を運転するためには免許証が必要であるように、国の命運を左右しかねない国会議員を選ぶためには最低限の知識が必要だ。認知症の人に投票権を与えるべきではない。

生活保護受給者(2)

2012-06-04 15:35:26 | Weblog
 生活保護制度は最後のセーフティネットであり安易に制限すべきではない。しかし不正受給は徹底的に取り締まられるべきだろう。これは年金の不正受給と同様、国に対する詐欺だからだ。より正確には国民の納めた税金を騙し取る行為だ。
 不正受給が少なくないのは決して福祉事務所の怠慢のせいではない。調査権が無いからだ。受給申請者の親族に郵送して「扶養不可」と返答されればそれ以上調査する権限が無い。親族の総てから扶養不可の返答を得ればそれを鵜呑みにせざるを得ないのが現状だ。
 私は43歳から59歳まで親に送金をしていた。決して親が困窮していた訳ではなかったが、少しでも楽に暮して欲しいと思ったからだ。しかもこうすることによって私自身にも扶養家族控除というメリットがあった。送金額と比べれば微々たる額だが、家族全体として捕えれば節税になった。
 核家族化が進む現代で一緒に貧しくなるという発想は受け入れられ難い。しかし一緒に楽をしようということなら賛同を得られるだろう。生活保護という制度で他人様の財布に頼る前に親類縁者が援助すべきなのは当然のことだろう。未就職の子供に対する扶養義務が親にあるように、子供には高齢化した親に対する扶養義務がある。

服役囚

2012-06-04 15:19:09 | Weblog
 名張毒ぶどう酒事件の奥西勝死刑囚の7度目の再審請求が棄却されたというニュースで、別のことが気に掛かった。奥西氏は何と86歳だ。彼だけではない、無期懲役囚も長寿者が少なくない。データが無いので憶測の域を出ないが、長期服役囚はかなり健康長寿なのではないだろうか。栄養のバランスの取れた食事と規則正しい生活と24時間医療体制、刑務所は健康長寿のための条件を殆んど充たしている。囚人一人当たりの経費は年間約250万円とのことだ。
 それと比べて庶民の生活は大変だ。5月25日のNHKの「クローズアップ現代・・・もう病院で死ねない」は恐ろしい内容だった。認知症の寝たきり老人が病院から追い出されて自宅に送り返される。これでは野垂れ死にせよと強制するようなものだ。服役囚の厚遇と比べて何という冷遇だろうか。
 そのせいか冬になると刑務所に帰って来るリピーターが少なくないそうだ。前科のある人が無銭飲食などの微罪を犯した場合、常習犯として懲役刑になることもある。時々「刑務所に戻りたかった」とコメントする犯罪者まで現れる始末だ。
 「懲役囚をシベリアへ送れ」とまでは言わないが、懲罰の筈の懲役刑が必ずしも懲罰になっていないことに制度の矛盾を感じる。生活に困ったら我慢するよりも犯罪を犯して服役したほうが有利だったら、刑罰は犯罪に対する抑止力を持たないどころか却って奨励することにさえなってしまう。

重要性と緊急性

2012-06-04 15:04:36 | Weblog
 サラリーマン時代、私は常に多くの仕事を抱えていた。一番酷い年には4,000時間以上働いた。残念ながら課長だったために時間外手当とは無縁だった。
 ビジネスの世界には「忙しい人に仕事を集めろ」というとんでもない不文律がある。忙しい人は仕事のできる人だ、大事な仕事は仕事のできる人にやらせるべきだ、従って大事な仕事は忙しい人にまかせろ、という怪しげな三段論法だ。
 こんな状況だったので私は2つの基準を設けざるを得なかった。重要性と緊急性だ。この2つのバランスを取ることを心掛けた。重要な仕事は腰を据えて時間を掛けてやる、緊急事態にはたとえ拙速となろうともすぐに対処する、ということだ。
 政治も同じだろう。税と社会保障の問題は100年後をも睨んだ重要な仕事だ。これを軽視すべきではない。しかし緊急性への対処が余りにもお粗末だ。東日本大震災からの復興は全然進まないし景気も雇用も低迷したままだ。議員定数は違憲状態のままで放置されている。私は小沢一郎氏について好意的に書いたことはこれまで一度も無かったが5月30日の発言だけは支持する。「大増税の前にやるべきことがある。」100年後のための仕事を否定する気は無いが、今の問題の解決にこそ政治生命を賭けて欲しいものだ。

売電

2012-06-01 15:21:40 | Weblog
 ローソンが1千店で太陽光発電を始めると発表した。節電対策ではなく売るためだ。制度の矛盾が露呈したと思った。
 太陽光エネルギーの買い取り価格は42円/KW時と決められている。発電コストを40円/KW時、電力料金を22円/KW時と仮定しよう。ローソンの場合、自給自足をすれば22円/KW時の電気の代わりに40円/KW時の電気を使うことになり18円/KW時ずつ損をする。
 一方、太陽光エネルギーを売れば、40円/KW時の電力を42円/KW時で売ることになり2円/KW時ずつ儲かる。これでは誰も自給自足をしようとせず売ることだけを考えるようになる。経済原理を無視した逆ザヤでの買い取りをするからこんな矛盾が生じる。買い取るのはあくまで余った電力だけにすべきだった。
 ところでこのことの何が問題なのか。エネルギーロスだ。送電すれば必ずロスが発生する。従って電力は地産地消が最も望ましい。本来の目的である筈の自給自足が否定されて送電によるエネルギーロスが生じる。無駄遣いだ。
 もう1つの問題は逆ザヤ分の負担をするのは消費者だということだ。ローソンが儲けた分以上に消費者は損をする。私は決してローソンを非難したい訳ではない、正当な商業活動だ。悪いのは制度だ。この制度を利用する企業が増えれば増えるほど消費者の負担は重くなる。

国の借金

2012-06-01 15:04:48 | Weblog
 日本の借金は間も無く1,000兆円になるとマスコミは騒ぐ。GDP500兆円の2倍だからギリシャよりも悪く国が滅びかけていると煽り立てる。だから今すぐに増税が必要だという結論が付けられる。
 ここで疑問を感じないだろうか。もし破綻寸前ならなぜ円高になるのだろうか。また5月31日の10年物国債は利回り0.81%と9年振りの水準に下落、つまり債券価格は上昇した。もし本当に破綻しそうならギリシャのように通貨も国債も暴落する筈だ。日本で起こっているのは全く逆の現象だ。なぜか?日本の庶民は政府とマスコミに騙されているからだ。
 日本の置かれている状況を説明するためにしばしば家計が用いられる。年収500万円の人が1,000万円の借金を抱え、しかもその借金は毎年増え続けている、と。しかしこれはフローだけを見ており正しくない。経済状況を見るにはフローだけではなくストックにも注目する必要がある。豪邸に住み、子も孫も大金持ちだったら借金が1,000万円あろうとも全然困らない。身寄りの無いホームレスが1,000万円の借金を抱えているのとは事情が違う。
 日本も似た状況だ。国の資産は650兆円もある。しかもその内450兆円が金融資産だ。外郭団体も合わせればどれだけあるのか誰にも分らない。
 日本が破綻寸前だと思い込んでいるのは政府とマスコミに騙されている庶民だけだ。外国人はそんな間違った情報を持っていないから円を買うし、富裕層の日本人は国債を買う。増税のための嘘に騙されてはならない。

原発再稼働(2)

2012-06-01 14:49:08 | Weblog
 5月30日の夜、野田内閣は、安全管理体制が整っていないにも関わらず大飯原発を再稼働する方針を事実上表明した。安全を管理する原子力規制庁の設置法案は5月29日に審議入りしたばかりだ。正に見切り発車だ。なぜ今、再稼働を決断したのか。夏のピークに間に合わせるためだ。大飯原発をフル稼働させるためには6週間掛るので泥縄式に決めざるを得なかった。
 政府の本音は次のとおりだろう。①電力が足りない。②原発を再稼働させたい。③国民の批判が怖い。④電力不足によるパニックはもっと怖い。
 ③と④を秤に掛けて④のほうが致命的な失政になると考えた上での判断だろう。③は何とかなる。多分、10年以内に福島第一原発のような大事故が起こる可能性は99%無かろう。しかし④の電力不足を放置した場合、99%確実に国民の不満が爆発する。
 しかしどうしても解せないのは、なぜ暫定的な安全基準に基づいて恒久的な運行をしようとするのか、ということだ。暫定的な基準に基づくなら運行も暫定的なものにするのが当然ではないだろうか。そう考えると②の「原発を再稼働させたい」が浮上する。実は「初めに再稼働ありき」であり、それを正当化して早期に実現するために夏の電力不足を煽ったのではないかとさえ勘繰りたくなる。