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【今回は5作品をイッキ読み!】
今回は評論第二十五弾として最近読んだ5作品を勝手に評価したい。
内容は小泉喜美子作品1つ、中山七里作品3つ、アガサ・クリスティー作品1つについて読書感想文として紹介しよう。
「逃亡刑事 (2020年6月 PHP文芸文庫) 中山七里 78」
映画作品に使えそうな強い展開が持ち味の作品。
中山七里作品にしては珍しく、ベタな流れとド派手な展開が逆に飽きずに読める。
この書のポイントは、前中盤で生じた伏線をどう回収するかであろうか。
自分の予想は99%の想定と1%の想定外だったが、この1%が大トリとなるのだから、さすが中山七里作品と唸ったなぁ。
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「TAS 特別師弟捜査員 (2021年4月 集英社文庫) 中山七里 79」
同氏の作品としては珍しい学園もの。
中盤までは、まるで似鳥鶏氏の作品に岬洋介シリーズがミックスしたようなポップな展開に、ちょっと意外感。
この作品において殺人事件は起こるが、犯人はどうかというより、展開がミソであるもの。
幾重にも折り重なった結末こそ中山七里ワールド。
しかし、実は中盤と終盤に普通の読者でも明らかになることがある。
でも最後にそれを上回る最後の結末があるのだから、やっぱりさすがの作品なのである。
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「弁護側の証人 (2009年4月 集英社文庫) 小泉喜美子 86」
昭和の時代のど真ん中に発表された傑作ミステリーで、約15年前に文庫化されたもの。
終盤に天地返しの展開にぬるっとなり、「えっ?そういう着地?」とあっと驚く結末はさすがの表現かと思う。
たしかにこんな大オチは、想定の範囲も超えているし、これまでもオレは見たことがない。
だけど、古い作品であることで海外作品の翻訳版を読んでいるような読みにくさは、ややマイナス。
そして、登場人物が多くて本編が萎えがちになるのだけど、結末を知れば登場人物の多さは、あまり気にしなくていいことになるところが、ミソであり、最大のトリックでもあるということなのだ。
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「能面検事 (2020年12月 光文社文庫) 中山七里 87」
主人公にいくつものクセがある中山七里らしい王道系痛快ミステリー。
2部構成だが連作であり、それぞれの作品は最初から最後までがつながっている。
この作品には、読めばわかるが大きな隠れ蓑があるのだけど、どの段階でそれを取り除くことが出来るかが読む方のポイントになると思う。
読書中、ストーリーテラーとやり取りするうちに、終盤でワンワードだけ謎が残ってしまったままなのが。やや残念であったので、この評価としたけれど、続編もありそうであることも含め、読み応え十分の作品だった。
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【今回のMVPは?】
「そして誰もいなくなった(2010年11月 ハヤカワ文庫)アガサ・クリスティー<1939年の作品を和訳> 89」
昭和14年に発表されたというこの作品。
多くの作家が、ミステリー作品として傑作であるものと評価する超名作だ。
なお、本編の設定次第では、今の時代でも通用する背景だということを鑑みれば、このミステリー作品がいかに不朽の名作と言われ続けているかがわかるというもの。
特に、中後半あたりで誰もが考えたであろう、この作品の結末を、終盤にしっかりそれを思いっきり裏切ってくるのだから、凄い作品よ。
評価的には、導入部のだるさと登場人物の多さ故の展開がオレには難しかったので、ちょっと減点したけれど・・・
昭和の初期に発表されたものだと振り返れば、やはりトンデモ級の名作よ、コレ。
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