ベルのきもち

日常のささやかな幸福感を書いていきたいと思います。

『私のなかの彼女』

2013-12-29 19:56:32 | 本の紹介

by角田光代。新潮社。

和歌が作家として成功するきっかけとなったのは、大学時代からつきあってきた恋人、仙太郎の存在だった。
仙太郎は在学中にイラストの仕事からブレイクして、一躍著名人に。時はバブル絶頂期。
風呂なしアパートから一転して、彼は高級マンションに引っ越し、仕事はどんどん舞いこみ、多忙を極めた。
和歌とは住む世界が違うように思われ、彼に追いつきたいがために和歌は努力して、いつしか売れっ子作家になった。
ところがバブルははじけ、そのあたりから仙太郎の仕事はなくなっていった。
今まで和歌を下に見ていた仙太郎は和歌に嫉妬するように・・・
やがて彼は和歌を傷つけ、去っていく・・・満身創痍の和歌は書けなくなった。
一方、和歌の亡くなった祖母もその昔、小説を書いていて、志半ばで職業作家にならずに筆を折って、平凡な男と結婚して家庭に入った。
祖母はなぜ、書かなくなったのか、書けなくなったのか。
祖母の遺した言葉・・・『男と張り合おうとするな。みごとに潰されるから』の意味するものは?
和歌は自分を潰そうとして去った仙太郎を激しく憎む。
しかし・・・祖母に自身を重ねあわしたとき、見えてくるものがあった。