近頃の習近平さんですが、何故彼はここに来て過酷かつ徹底した文字通りの都市封鎖政策を進めたのか、当初その意図を謎に感じていましたが、最近ある事に気が着きました。
短い間にアメリカすら凌駕しそうなくらいの経済成長を成し遂げた中国ですが、その裏で生まれた貧富格差はアメリカ以上のものがあると容易に想像できます。それは単なる貧富格差ではなく、中国の特徴的な戸籍制度という実質的な身分制度によって固定化された貧富格差だという事を忘れてはいけません。
翳りはあってもアメリカンドリームは未だ健在と言えそうですが、チャイニーズドリームは断じて存在しません。言うまでもなく中国の富裕層はほとんどが中国共産党の地方幹部などを親に持つ特権世代が全てだからです。貧困な農民出身の成り上がり者はほとんど居ないでしょう。そのような社会にあって経済成長率に陰りが見えてくるとどうなるか?、想像してみましょう。
爆発的な経済成長がある間はそのお零れに与っていた貧困な農民層も、成長が鈍ってお零れが少なくなると一気に不満が爆発します。これはもう都市と農村の対立そのものです。
「都市と農村の対立」なんてとっくに死語になったと思ってましたが、そうじゃなかったようです。これを中国事情に即して翻訳すると富裕な一部特権階級と「農民」に代表される貧困な一般人民との対立構図となる訳です。元々貧困な「農民」層は被害者意識しか持っていないので、都市部のロックアウトによる惨状はいい気味だという具合になる訳で、習近平の支持率は鰻上りなのかもしれません。
これを中国共産党内部の権力抗争として見ると毛沢東を師と仰ぐ習近平は農民派、長年の粛清に恨みを持つ反習近平派は都市部特権派というのが習近平から見た構図となる訳です。
上海、北京の都市ロックアウト政策は案外単純な習近平の権力強化政策だというのが良くわかりました。
もちろん今のロックアウト政策が続くと陰りの見え始めた経済成長が更にストップしますが、そこは毛沢東同様に「農民」の支持を得るため、即ち「農民」を恨みの対象に誘導だけしておけば経済なんてどうでも良くてむしろ貧困こそ歓迎すべき状況と言っても良い訳です。
頭脳にあまり栄養が回っていない貧困な「農民」層には「コロナから君達を守っているのだ」と言っておけば充分なのでしょう。政治がこんなに簡単だなんて日本の政治家達には羨ましい事でしょうね、但し殺るか殺られるかの権力抗争と陰謀合戦に勝ち残る気概と覚悟があればですけどね。
それはさておき、貧困が権力基盤を固めるというのは習近平やプーチンどころかスターリン以来の独裁者の鉄板法則なんですね、独裁者は等しく金正恩を目指すとか・・・(はた迷惑過ぎるので笑うに笑えない)。
独裁者というとヒトラーを思い浮かべる人が多いと思いますが、ファシズムと専制独裁は似て非なるものです。
現代の独裁者の正当な血統はスターリンと毛沢東だというのを忘れちゃあかんです。
その意味でプーチンがナチズムを目の敵にするのは当然でしょうね、ヒトラーは似非独裁者ですから。些末な違いだとしても正統独裁者は亜流独裁者を認める訳に行きませんからね(ただの宗派対立)。
また話が逸れました、18世紀以降の世界史に於いて、本来は近代国家の成立基盤として市民社会の成熟が不可欠な必須条件となります。が、世界の中にはまだそこが未成熟なまま無理やり世界史の渦中に投げ込まれざるを得なかった国々が多数あります、中東、東南アジアやアフリカ諸国など、もしかしたら我が日本も。当然中国やロシアはその代表格です。
このふたつの国は国土が半端なく大きいせいもあり、治めるのに強大な権力の集中が必要だった訳で、その分本来あるべき市民社会の成熟を阻害し続けて来たという事です。
それにしても習近平は自分の権力基盤のためにはなりふり構わない奴ですね、そんだけ習近平さんを取り巻く党内権力抗争がここに来て一気に激化しているのでしょうか?。
とにかく、そんなこんなで今も昔も「生かさず殺さず」がアジア某国農民の宿命でもあるようです。
ここまで言ってしまえばプーチンの場合についても敢えて言うまでもなくなってしまいました。
ただロシアでの生かさず殺さずは「労働者」という貧困にワード的に置き換えられます。
ひとつだけ気にしておく必要があると思うのは、中国もロシアもその中に住む大多数の人達はさほど独裁を意識していないという事です。まさしく市民社会の不在がなせる技です。
従って両国が民主化される道筋を見出す事は未だ全く不可能な事であります。
政権が変わる事があっても民主化とは無縁です。
「農村」の大義名分を「都市」が無視を決め込む事は不可能なので、「農村」を権力基盤としてしまうと貧困に大義が与えられ、それ自体が独り歩きしてしまうという事でしょうか。
「農村」の繁栄は「都市」による大量消費がなければ成り立たたず、それこそが市民社会の成熟に繋がる部分なのですが、それ故独裁権力と否応なく対立する部分でもあるようです。
では、この「都市」と「農村」の対立は過去どのように煽られて来たのか?、少し知っておいても良いかもしれません。
突然ですが「ホロドモール」というのを知ってる人は少ないと思います。
「飢え」と「抹殺」を意味するウクライナ語の造語だそうで、成立間もないロシアソヴィエト政府と対立したウクライナの自治組織にスターリンが仕掛けた謀略によって意図的に引き起こされた大飢饉を指します。
スターリンは大義名分として「貧農」を「富農」から解放するために「富農」=大多数のウクライナ農民から耕作地を接収し、「貧農」=おそらく貧困ロシア人(農民かどうかは関係ない)に分け与えるという政策を行いました。「富農」と判定された大多数のウクライナ農民は強制移住により家畜も農地も奪われ、「富農」と判定されなかった農民もなけなしの食料や作物の種子に至るまで収奪され、結果数百万人の餓死者の「生産」に成功したという政策でありました。
ウクライナというエリアは中学校?で習いましたが一大穀倉地帯で、広大でも貧困なロシア版図の中にあっては最も生産力があり、近年では軍需生産や航空宇宙分野で旧ソ連を支えた先進エリアでもあります。18~19世紀頃は文化の中心はキエフ(キーウ)であり、モスクワはただのド田舎でした。
という事はキエフ(キーウ)とモスクワの対決も都市と農村の対立と言えなくもない。
だからこそ根本から破壊し尽くす、さすがは史上最凶独裁者スターリン、やる事が凄いです。
プーチンも一生懸命真似をしてますが、知恵の足らないプーチンとは残忍さ凶悪さ悪辣さのスケールが格段に違います、そしてなにより歴史に汚点を残さない巧妙さが凄いのです。
(だからと言ってプーチンを許せる訳ではないのは自明です)
ただこのホロドモール自体は徹底したスターリンの情報統制のおかげで当のウクライナの人達の間ですらさほど認知が高くないとか・・・。
因みに、その時スターリンボルシェビキがウクライナに対抗してでっち上げた傀儡政権を設置したのがハリコフだったそうです。ハリコフは何かと歴史の焦点になるようです。
ついでにもうひとつの巨大社会謀略「大躍進政策」、こっちの方はご存じの方も多いと思います。
毛沢東が自らへの権力集中のため意図的に社会混乱を作り出した政策ですが、これまた1500万~5500万人(5500万はさすがに誇張かもしれません)という途方もない餓死者を生み出してます。
この後、毛沢東は自分の失態を隠蔽するため更に「文化大革命」というのもやらかしてますから、本当の史上最凶は毛沢東かもしれませんね。
さて、こんな毛沢東の後継者を自称して憚らない習近平さんはいったいどこへ向かって行くのでしょうか?
おっと、クマのプーさんを実名で出しちゃったけど、後で良からぬ事が起こるとか・・・(オイ、オイ)。
どっちにしても、習近平のゼロコロナロックアウト政策とプーチンのロシア帝国復刻プロジェクトという一見繫がりのないような事象が実は歴史の奥深くで同じ根っこを持っている・・・とか。
両国共々これから大粛清の大嵐が吹き荒れる事でしょう、今まさにやってる最中かな?。
取り留めない記事になってしまいました、お詫び申し上げます。
また、なんの役にも立たないこんな記事に最後までお付き合いいただけたなのなら、厚くお礼申し上げます。
投稿後ほんの少し加筆修正しました(文脈上の変化はありません)。