華氏度(かしど)は、数種ある温度目盛のうちの1つであるファーレンハイト温度目盛(華氏温度目盛)によって計測した温度の単位である。ファーレンハイト度(ファーレンハイトど)とも言う。「華氏」は、考案者ファーレンハイト(Fahrenheit)の中国語における音訳「華倫海特」(普通話ではHualunhaite)によるものである。
概要
ファーレンハイト温度目盛は、ドイツの物理学者ガブリエル・ファーレンハイトが1724年に提唱したもので、その名前を取って呼ばれる。ファーレンハイト度は、他の温度目盛と同様「度」(記号:°)の単位がつけられ、他の温度目盛による値と区別するためにファーレンハイトの頭文字を取って"°F"と書き表される。「32°F」は、日本語では「華氏32度」、英語では"32 degrees Fahrenheit"、または、"32 deg F"と表現される。
ファーレンハイト温度目盛では、水の氷点を32度(32°F)、沸点を212度(212°F)とする。水の氷点と沸点の間は180度に区切られる。よって、この温度目盛によって計った温度Fは、セルシウス温度目盛による値(セルシウス度、摂氏度)Cと、以下の関係にある。
華氏⇔摂氏早見表 華氏 摂氏
0.0 -17.8
10.0 -12.2
20.0 -6.7
30.0 -1.1
40.0 4.4
50.0 10.0
60.0 15.6
70.0 21.1
80.0 26.7
90.0 32.2
華氏 摂氏
100.0 37.8
110.0 43.3
120.0 48.9
130.0 54.4
140.0 60.0
150.0 65.6
160.0 71.1
170.0 76.7
180.0 82.2
190.0 87.8
200.0 93.3
セルシウス度に対するケルビンに対応するものとして、絶対零度を0としてファーレンハイト度の目盛りを振ったランキン度がある。
歴史
ファーレンハイトがこの温度目盛を作った時の話には、いくつかの説がある。
1つ目の説は次のようなものである。ファーレンハイトは最初、彼が測ることのできた最も低い室外の温度を0度、彼自身の体温を100度としようとしたと述べている。彼は1708年か1709年の冬の大変寒い日に、ダンツィヒ郊外の彼の自宅において「0度」を計測した(これは-17.8℃である)。後に同じ温度を、氷、塩化アンモニウム、水を混ぜることで実験室環境で作り出している。当時使われていたレーマー温度目盛では、日常的に使われる温度にマイナスの値が出てきてしまっていて不便であったので、彼はこれを避けたかった。彼の体温(彼は37.8℃と計測したが、正確には37℃であった)を「100度」と固定した。この元の目盛を12等分し、さらに8等分して、96度の目盛を作った。これにより、水の氷点が32度、沸点が212度になり、その間が正確に180度に区切られることになる。
2つ目の説では、「0度」を同量の氷と塩の混合物(寒剤)によって得られる温度(この温度が人類が作り出せる最も低い温度であるとファーレンハイトが思っていたともいう)としたとしている。そして血液の温度を96度とした(彼が温度目盛を調整するときは馬の血液を使った)。当初は12等分しかしていなかったが、後にそれぞれを8等分して96度とした。彼は、この目盛によって純水が32度で凍り、212度で沸騰することを観測した(それまでは、物質が凍ったり沸騰したりする温度は一定であるとは思われていなかった)。
3つ目の説は、レーマー温度目盛で水が凍る温度が7.5度、沸騰する温度が60度であることから、小数をなくしスケールを大きくするためにそれぞれを4倍して30と240にしたというものである。それから、水の氷点と人の体温(彼はこれを96度とした)の間が64度(64が2の6乗であるので)となるように再調整した。その結果、水の氷点は32度になった。
日本では1番目と2番目の説を合わせたものがよく知られているが、アメリカでは3番目の説が有名であるようである。
彼の計測はまったく正確であるというわけではなかった。彼が作ったオリジナルの目盛によって計った水の氷点、沸点は32度、212度と異なっていた。彼の死後、その値が32度、212度となるように再調整された。その結果、人の体温は96度ではなく98.6度となった。
使用
1960年代まで、多くの英語圏の国でファーレンハイト度は気候、産業、医療における温度の基準となっていた。1960年代後半から1970年代にかけて、メートル法への切り換えの一環としてセルシウス度(摂氏度)の導入が政府によって行われた。しかし、切り換えのための努力にもかかわらず、現在でも多くの英語圏の国では非科学分野での温度計測にファーレンハイト度が広く使用されている。
ファーレンハイト度の支持者は、これがファーレンハイト度が利用者によって親しみやすいからだと主張している。世界における大部分の居住可能地域の気温は、おおむね0°Fから100°Fの範囲に含まれており、ファーレンハイト度は生活感覚に直結した温度目盛であると主張している。
10度代 -- 厚い霜が降りる。
20度代 -- 薄く霜が降りる。
30度代 -- 寒い。氷点に近い。
40度代 -- 寒い。厚い衣服が必要。
50度代 -- 涼しい。適度な厚さの衣服で十分。
60度代 -- 暖かい。薄手の衣服が必要。
70度代 -- 適度に暑い。夏服が必要。
80度代 -- 暑いが耐えられる。少なめの衣服
90度代 -- とても暑い。過熱に対する予防措置が必要。
100度代 -- 危険なほど暑い。
しかし、そのような温度と生活感覚の相互関係は、単に習慣から生まれるものである。日常摂氏を使用している人であれば、マイナスの温度では霜が降り、0~10℃は寒い、10~20℃は適温、20~30℃は暖かい、30~40℃は暑いということを知っている。
アメリカ合衆国とジャマイカでは、メートル法への置き換えが生産者側・消費者側の両方で大きな抵抗に遭っているため、ファーレンハイト度は様々な分野で広く使われ続けている。同様に、イギリスの一部では、低い温度はセルシウス度で表されるが、日常的に使われる温度はファーレンハイト度で測定されている。カナダでは、メディアではセルシウス度で温度が報じられているが、年配のカナダ人は今でもファーレンハイト度で温度を表す。
また、ファーレンハイト度での人間の平熱が98.6度であることはよく知られていて、体温が華氏100度以上になると治療が必要とされる。
すっと子供時代から、「華氏」を未だに使っているのは何故だろうと思っていた。「華氏」の成り立ちが分かって、すっきりした、今日は。
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