韓国総選挙、
与党の「猛攻」と野党の「堅い守備」…勝者は?
国民の力、標的・帰順・移動公認
「少数与党国会」覆すため総動員令
民主党、指導部を犠牲にせず守勢
現役を押しのけた「親ミョン候補」の成績に注目
4月10日の第22代国会議員総選挙まで1カ月を切りました。3月21日と22日に候補登録が行われ、6日後の3月28日から投票日の前日の4月9日まで公式の選挙運動が展開されます。4月10日の午後6時には出口調査の結果が発表され、夜遅くに各地方区で誰が当選したのか、与党が勝ったのか、野党が勝ったのか、輪郭が明らかになるでしょう。
今回の総選挙に臨む与党「国民の力」の基本戦術は「猛攻」です。野党第一党「共に民主党」の基本戦術は「堅い守備」です。普通は野党が攻めて与党は守るものなのに、攻守が逆転しています。圧倒的な少数与党国会であるからこそ起こっている現象です。
攻撃を引っ張るハン・ドンフンの口
4年前の第21代総選挙で、民主党は180議席(共に民主党163+共に市民党17)の圧倒的勝利を収めました。共に民主党の議席である163議席は、1987年の民主化以降の総選挙で、一つの政党が獲得したものとしては最も多い議席でした。国民の力は103議席(未来統合党84+未来韓国党19)にとどまりました。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領はこの2年間、国政の失敗を「巨大野党のせい」にしてきました。民主党のイ・ジェミョン代表は、今回の総選挙の現実的な目標を「議会内最大勢力」としています。国民の力より1議席でも多ければ勝利だということです。「ちょっと欲張るなら151席の確保」とも語っています。民主党が守りを重視せざるを得ない状況であることを率直に認めているのです。
与党の「猛攻」戦術は、まずハン・ドンフン非常対策委員長の「口」から確認できます。ハン委員長は本当に生まれつきのけんか屋のようです。ボクシングでいえば休むことなく接近戦を挑むインファイタータイプです。口げんかなら誰にも負けないイ・ジェミョン代表が、ハン委員長には押されているようです。イ代表は選挙1カ月前の今月10日の記者懇談会で、国民の力の公認候補を「赦免公認」、「わいせつ公認」、「現金入り封筒公認」、「親日公認」、「弾劾蔑視公認」、「極右公認」、「楊平(ヤンピョン)道路ゲート公認」と非難しています。総合的に「破倫公認」と表現しています。民主党の公認問題の守勢局面から脱するために、久々に反撃に打って出たわけです。ところが翌朝、ハン委員長はイ・ジェミョン代表の発言の中の「破倫」という単語にかみつきました。記者団の問いにこう答えています。
「破倫公認だって? 破倫とは何か。兄嫁に対する悪態、俳優関連疑惑、検事詐称、大庄洞(テジャンドン)不正、飲酒運転、精神病院強制入院。多すぎて話し切れない。親日公認だって? 日本製シャンプー法人カード疑惑。極右公認だって? イルベ疑惑。すごいのは、このすべてをイ・ジェミョン代表一人がやったということだ。イ・ジェミョン代表がイ・ジェミョン代表を公認したことこそ、破倫公認だと国民は考えるだろう」
いかがですか。ハン委員長の発言と瞬発力は、既存の政治家たちが到底追いつけないほどのもののようです。イ代表としては元金も取り戻せなかったわけです。一を食らわして十を食らったわけです。ハン委員長は民主党と進歩党の比例代表連合をイデオロギー的レッテル貼りで攻撃しています。進歩党は2014年に憲法裁判所によって解散させられた統合進歩党の後身だ、というのです。従北政党だというのです。進歩党は民主的基本秩序の中に存在する大韓民国の政党です。国会に議席も持っています。したがってハン委員長の攻勢は卑劣なイデオロギー的レッテル貼りです。しかも、最近まで法務部長官だった人物が言うべきことではありません。選挙で与党にとってどれほど役立つかも疑問です。
人材不足の与党の苦肉の策
それでも、ひとまず精神戦ではハン委員長が民主党より優位に立っています。民主党がたじたじになっているのを見れば分かります。国民の力の「猛攻」戦術は候補の公認にもそのまま反映されています。
1つ目は「標的公認」です。イ代表の対立候補としてウォン・ヒリョン前国土交通部長官を仁川桂陽乙(インチョン・ケヤン・ウル)の公認候補に立てました。チョン・チョンレ首席最高委員の対立候補として、運動圏出身のハム・ウンギョン氏をソウル麻浦乙(マポ・ウル)の公認候補としました。メディア界から迎え入れたホ・ジュンソク氏をイ・イニョン議員の九老甲(クロ・カプ)の公認候補としました。国民の力は4年前、京畿道水原(スウォン)の5つの選挙区を民主党にすべて明け渡しました。今回は大物を水原の諸選挙区の公認候補としました。キム・ヒョンジュン元国税庁長を水原甲(スウォン・カプ、民主党候補はキム・スンウォン議員)に立てました。パン・ムンギュ前産業通商資源部長官を水原丙(スウォン・ピョン、民主党候補はキム・ヨンジン議員)に立てました。パン・ムンギュ候補は、尹錫悦大統領が彼を総選挙に出馬させるために、長官はたった3カ月務めただけで辞任しています。水原丁(スウォン・チョン)にはパク・クァンオン議員の対抗馬として京畿大学のイ・スジョン教授を公認しました。しかし、民主党の予備選挙で韓信大学のキム・ジュンヒョク教授がパク・クァンオン議員を破ったため、キム・ジュンヒョク教授との対決となりました。
2つ目は「帰順公認」です。民主党を離党して国民の力に転じた人々を、すぐさまその選挙区の国民の力の候補として立てたケースです。民主党の国会副議長を務めたキム・ヨンジュ議員は、ソウル永登浦甲(ヨンドゥンポ・カプ)でチェ・ヒョニル前永登浦区長と対決します。民主党の非イ・ジェミョン系の重鎮だったイ・サンミン議員は大田儒城乙(テジョン・ユソン・ウル)で、民主党が科学技術界から迎え入れたファン・ジョンア博士と競います。民主党検証委員会で不適格と判定されたキム・ユンシク前始興(シフン)市長は、京畿道始興乙(シフン・ウル)の国民の力の候補として出馬し、民主党のチョ・ジョンシク事務総長と運命の対決を繰り広げます。民主党所属で南楊州(ナミャンジュ)市長を務めたチョ・グァンハン氏は、京畿道南陽州丙(ナミャンジュ・ピョン)でキム・ヨンミン議員と争います。民主党から国民の力へと直に転じた人々の得票力がどれほどのものなのか、とても気になります。
3つ目は「移動公認」です。国民の力は洛東江(ナクトンガン)ベルト奪還のために、「票田」の選挙区の議員を民主党の現役議員がいる選挙区の候補に立てました。釜山(プサン)の釜山鎮甲(プサンジン・カプ)のソ・ビョンス議員をチョン・ジェス議員のいる釜山北甲(プサン・プク・カプ)に移動させました。慶尚南道山清(サンチョン)・咸陽(ハミャン)・居昌(コチャン)・陜川(ハプチョン)のキム・テホ議員をキム・ドゥグァン議員の梁山乙(ヤンサン・ウル)に移しました。慶尚南道密陽(ミリャン)・宜寧(ウィリョン)・咸安(ハマン)・昌寧(チャンニョン)のチョ・ヘジン議員をキム・ジョンホ議員のいる金海乙(キムヘ・ウル)に移しました。作戦が成功すれば民主党の議席を奪い、「票田」には新たな人物を起用するという「一石二鳥」となりますが、失敗すれば党と選ばれた議員がともに恥をかくことになります。国民の力はまた、ソウル江南乙(カンナム・ウル)のパク・チン議員を西大門乙(ソデムン・ウル、民主党候補はキム・ヨンホ議員)に、江南甲(カンナム・カプ)のテ・ヨンホ議員を九老乙(クロ・ウル、民主党候補はユン・ゴニョン議員)に移動させました。ソウル永登浦乙(ヨンドゥンポ・ウル)からの出馬を探っていたパク・ミンシク元議員を江西乙(カンソ・ウル、民主党候補はチン・ソンジュン議員)に、ソウル陽川乙(ヤンチョン・ウル)出身のキム・ヨンテ前議員を京畿道高陽丁(コヤン・チョン、民主党候補はキム・ヨンファン氏)の公認候補としました。すべて選挙区を移した事例です。国民の力に「帰順公認」と「移動公認」が多いのは、それだけ人的資源が不足しているからでもあります。
尹錫悦の国民の力vsイ・ジェミョンの民主党
民主党の候補公認は国民の力とは非常に対照的です。議席を奪われないように「堅い守備」戦術を無理に用いたため、2つの大きなミスを犯しました。
1つ目は「指導部の犠牲なき公認」です。国民の力は、親尹錫悦派の重鎮議員と主な党役員のほとんどが慶尚道や江原道などのいわゆる「票田」に布陣しています。しかし、民主党の最高委員と主な党役員のほとんどは首都圏の選挙区の議員です。当選は断言できません。指導部と主な党役員の公認をまず確定せざるを得ませんでした。そのため結果的に「指導部の犠牲なき公認」となってしまいました。
2つ目は「硬直したシステム運用による公認問題」です。政党が候補を公認するのは選挙で勝つためです。最終的に政務的な判断がなしうる装置をあらかじめ用意しておかなければなりません。しかし、イ・ジェミョン代表の経験不足と欲のせいで公認問題が起きました。イム・ヒョクぺク氏の公認管理委員会とアン・ギュベク氏の戦略公認管理委員会の偏向性、現役議員評価団の偏向性、下位の被評価者に対する無理な減点、民主党現役議員に対する党員と支持者の拒否感、親イ・ジェミョン派の党員と熱烈支持層の集中力などが複合的に作用した結果、誰が見ても「親イ・ジェミョン派が得して非イ・ジェミョン派が損する」と批判せざるを得ない候補公認が行われました。選挙区の民主党現役議員が追い出され、親イ・ジェミョン派の人物が公認された例はあまりにも多く、数え切れないほどです。ソウル恩平乙(ウンピョン・ウル)のキム・ウヨン元江原道党委員長、仁川富平乙(インチョン・プピョン・ウル)のパク・ソンウォン元国家情報院次長、仁川西丙(インチョン・ソ・ピョン)のモ・ギョンジョン党代表秘書室次長、京幾道水原丁(スウォン・チョン)のキム・ジュンヒョク韓信大学教授、京幾道城南中院(ソンナム・チュンウォン)のイ・スジン議員(比例)、京幾道安山甲(アンサン・カプ)のヤン・ムンソク元放送通信委員、京幾道南楊州乙(ナミャンジュ・ウル)のキム・ビョンジュ議員などが代表的な例です。キム・ヘヨン前議員は民主党の公認結果について、14日に「ついにイ・ジェミョンの私党化が完成した」と評しています。
問題は、彼らの選挙本番での競争力です。全羅道は民主党に公認されれば誰であっても当選の可能性が高いけれど、首都圏や忠清圏などのその他の地域ではそうではありません。現役議員を押しのけて公認された親イ・ジェミョン候補が本番で落選すれば、すぐに「誤った公認のせいだ」という非難が殺到するでしょう。「公認革命」と言って興奮している場合ではないのです。
まとめます。国民の力はチョン・ジンソク(忠清南道公州(コンジュ)・扶余(プヨ)・青陽(チョンヤン))、クォン・ソンドン(江原道江陵(カンヌン))、ユン・ハンホン(慶尚南道昌原(チャンウォン)・馬山(マサン)・会原(フェウォン))、イ・チョルギュ(江原東海(トンヘ)・太白(テベク)・三陟(サムチョク)・旌善(チョンソン))、パク・ソンミン(蔚山中(ウルサン・チュン))議員ら「尹核関(尹大統領の核心関係者)」たちを、改めて当選の容易な自身の選挙区の公認候補に立てました。チュ・ジヌ元大統領室法律秘書官を釜山海雲台甲(プサン・ヘウンデ・カプ)、イ・ウォンモ元大統領室人事秘書官を京畿道龍仁甲(ヨンイン・カプ)で公認しました。キム・ウンヘ元広報首席を京畿道城南盆唐乙(ソンナム・プンダン・ウル)で、カン・スンギュ元市民社会首席を忠清南道洪城(ホンソン)・礼山(イェサン)で公認しました。どう考えても「元の尹錫悦党」を作るための公認です。
結局、今回の総選挙は「尹錫悦の国民の力」と「イ・ジェミョンの民主党」の正面衝突です。2022年3月9日の大統領選挙の延長戦というわけです。果たしてどうなるのでしょうか。どちらが勝つのでしょうか。みなさんはどうお考えですか。
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