緊急声明
日本政府は戦時の朝鮮人強制労働を否定するのではなく認知すべきである
- 佐渡鉱山(「佐渡島の金山」)世界遺産登録問題によせて -
2022年1月25日
強制動員真相究明ネットワーク
共同代表 庵逧由香 飛田雄一
佐渡鉱山(「佐渡島の金山」)のユネスコ世界遺産登録に関し、日本政府は2022年1月21日の記者会見で、「佐渡の金山に関する韓国側の独自の主張につきましては日本側として全く受け入れられない」(木原官房副長官)と述べ、昨年末、韓国外交部に抗議したことを明らかにしました。日本政府は公式に韓国側の戦時の朝鮮人強制労働に関する主張を否定したのです。
2021年、日本政府は明治産業革命遺産での産業遺産情報センターの展示に関し、ユネスコから歴史全体を示し、強制労働についても解説するように求められましたが、改めてはいません。また、菅内閣は朝鮮人の強制連行や強制労働の用語を「適切ではない」と閣議決定し、今後使用する教科書から「強制連行」の用語を削除させました。
しかし、日本による総力戦体制の下、戦時の労務動員政策によって朝鮮半島から日本へと約80万人が強制的に動員されたことは歴史の事実です。佐渡鉱山が強制労働の現場だったという韓国側の主張は事実です。それを「独自の主張」として「受け入れられない」とする姿勢は、強制労働の歴史を否定するものです。日本政府は歴史を否定せず、この機会に強制労働の事実を認めるべきです。韓国側の批判を問題とするような対応は、間違いです。
『新潟県史 通史編8近代3』(1988年)には、「強制連行された朝鮮人」の項があり、「昭和14年(1939年)に始まった労務動員計画は、名称こそ「募集」、「官斡旋」、「徴用」と変化するものの、朝鮮人を強制的に連行した事実においては同質であった」と指摘しています。この新潟県史の記述を受け、新潟県相川町(現、佐渡市)の『佐渡相川の歴史 通史編近・現代』(1995年)は、朝鮮人動員の具体的な状況をあげ、「佐渡鉱山の異常な朝鮮人連行」について記しています。佐渡鉱山への朝鮮人強制連行は自治体も認知してきた歴史事実です。佐渡では1992年に強制連行被害者を招請した証言集会も開催されています。
動員された朝鮮人は相愛寮に収容されましたが、その「煙草配給台帳」や他の動員関係資料から強制動員された500人以上の朝鮮人名簿を作成できます。佐渡鉱山への朝鮮人動員数は1500人を超えるものとみられます。1945年になって佐渡鉱山に徴用で動員された慶尚北道蔚珍郡100人の名簿も残っています。現場から逃亡すれば、労務調整令違反で検挙され、犯罪とされました。8・15解放後の朝鮮人1140人分の未払金231,059円の供託史料も残っています。三菱鉱業佐渡鉱業所の史料や特高警察の史料などからも、強制連行・強制労働は歴史の事実です。
戦後、80年を迎えようとするのに、自治体史にも明記されている朝鮮人強制労働の事実を日本政府は認定しないのです。その姿勢に問題の根源があります。韓国が悪いのではなく、歴史事実を否定して恥じない日本政府に問題があるのです。
ユネスコの「人類の知的・精神的連帯に寄与し、平和と人権を尊重する普遍的な精神をつくる」という理念の下に、ユネスコの世界遺産があります。その産業遺産は「ニジニータギル憲章」(国際産業遺産保全委員会TICCIH、2003年)、「産業遺産を継承する場所、構造物、地域および景観の保全に関するICOMOS-TICCIH共同原則」(2010年)をふまえたものでなければなりません。その遺産の解説では、「文化遺産の解説とプレゼンテーションは、より広い社会的、文化的、歴史的、自然的な文脈と背景に関連させなければならない」(「文化遺産の解説及び展示に関するイコモス憲章」2008年)という原則に依らなければならないのです。世界遺産とは、特定の時期を取り上げて国家主義的に宣揚する、あるいは観光利益を求めるものではなく、強制労働などの負の歴史を含めた歴史全体を示し、人類の教訓とするものなのです。
ユネスコやイコモスが掲げる原則や憲章に依るならば、世界遺産登録にあたっては「歴史全体」が示されなければならないのです。日本政府が強制動員の歴史を否定したまま登録を推進するならば、これまで鉱山の歴史的価値を広めようと登録を推進してきた関係者や強制連行の歴史の事実に向き合って取り組んできた人々と連行被害者の尊厳を踏みにじることにもなります。
当ネットワークは、佐渡鉱山(「佐渡島の金山」)の世界遺産登録問題に際し、日本政府が戦時の朝鮮人強制労働を否定するのではなく、認知することを求めます。
兵庫県神戸市灘区八幡町4-9-22(公財)神戸学生青年センター気付
強制動員真相究明ネットワーク
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